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いよいよERPもクラウド移行が本格化か? 今どきの「クラウドERP」の最新事情と導入ポイントIT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2018年07月17日 10時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]

クラウドERPの導入検討時におさえておくべきポイント

 以上で見てきたように、現在市場にはさまざまな提供形態のクラウドERPが存在する。それらの導入を検討するに当たり、企業はどのような点に留意すべきなのだろうか?次に、クラウドERPを語る際によく取り上げられる論点を幾つか取り上げ、考察してみよう。

「クラウドでコスト削減」は本当かウソか?

 かつて、エンタープライズITの世界にクラウドサービスが導入され始めたころは、「パッケージよりクラウドサービスの方が低コスト」とさかんに言われた。しかし、買い切り型のパッケージと継続的にコストが発生するクラウドを比較すると、利用開始から数年間はクラウドの方が安く上がるものの、ある時期を境にパッケージよりもコストが高くつき、逆転することが分かった。そのため、ERPのような長期利用を前提としたシステムは、クラウドよりもむしろパッケージ型の方がコスト効率が高いという見方も多い。

 一方、クラウド(特にSaaS型サービス)の大きなメリットの1つに、システムの運用管理をクラウドベンダーにアウトソースできるという点がある。そのため、TCOの観点からコストを比較すると、やはりクラウドはコストメリットが大きいという見方もできる。またパッケージを一括購入した場合、財務上は固定資産を一定期間かけて償却することになるが、月額課金の場合は経費として計上される。こうした財務処理上の違いは、そのまま企業の決算内容に反映されるため、場合によっては財務や経営の観点からも判断が必要になってくる。

 ちなみに近年では、SaaS型のクラウドERP製品でもライセンス買い取り型の販売モデルを採用しているベンダーもある。その場合は、クラウドならではのメリットと、ライセンス一括買い取りのコストメリットの両方が得られる。実際にクラウドERPの導入を検討する場合には、ぜひ課金モデルや契約形態についても比較検討し、中長期に渡るコストをシミュレーションしたい。

リプレースか? それとも新規導入か?

 ERPパッケージ製品の保守期間は、一般的には5年間と設定されていることが多い。また、中堅・中小企業でERP利用が普及し始めてから、おおむね5年がたとうとしている。そのため、ERPパッケージ製品の保守切れが近づき、クラウドへの移行を検討し始める企業がここに来て増えている。

 この場合の判断は、複数の判断基準を考慮した上でバランスよく考える必要がある。既にオンプレミス環境で安定稼働しているERPを、あえてリスクを冒してまでクラウドに移行する必要があるのか。しかし見方を変えれば、オンプレミスのまま運用し続けるリスクもある。多く見られるのが、パッケージ導入時にカスタマイズを大幅に施したために、その後のバージョンアップがままならず、古いOSやミドルウェアの上で塩漬けを余儀なくされるケースだ。老朽化したシステムを運用し続けることには多くの弊害が伴うため、ある程度のリスクを負ってでもクラウドに移行する方が、トータルメリットとしては大きい場合もある。

 ちなみにクラウド型サービスのメリットとして、アプリケーションのバージョンアップが自動的に行われる点がある。ユーザー側がアプリケーションやOS、ハードウェアの保守切れに伴うバージョンアップ作業に煩わされることがないため、今までバージョンアップ作業に多大なコストと手間を強いられてきた企業にとって、このメリットは決して無視できないだろう。

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