人事評価の仕組みは、所属メンバーの給与や職級を決定するうえで重要な制度であり、大手企業を中心にその仕組みが確立されてきた。しかし、中小企業などではいまだに経営者の独断で給与査定が行われているケースも多く、まだ広く浸透しているとは言い難い。それでも、人材不足が叫ばれる中で会社と社員とのエンゲージメントを高めるためにも、納得感のある評価の仕組みは必要な時代だ。具体的に人事評価ソリューションが持つ機能について詳しく見ていきたい。
■多くのプレイヤーが参入している人事評価の世界
前編では、人事評価の目的やその変遷をたどったが、後編では人事評価システムが持つ具体的な機能について見ていきたい。
一般的に人事評価とは、まずは自社に適した人事評価の在り方を検討し、そこから評価制度の基盤構築、社員への周知、研修を通じての教育、そして定期的な評価面談という流れで運用されていく。
人事評価の仕組みを整備するための具体的なフローを見ると、例えば初期の段階では人事評価に関するコンサルティングが必要になるため、コンサルティングファームなどのプレイヤーが登場する。次に構築に関しては、いわゆる社内に設置する人事評価システムからクラウドを利用したサービスまで幅広いソリューションが存在しており、ベンダーやインテグレーターなど顔ぶれもさまざまだ。そして、社員に対して評価の重要性や啓蒙活動などの教育を行う場面では、研修サービスを提供するベンダーなどがその役割を担うことになる。最終的な運用については社内の人事部内で行なうのが一般的だ。
もちろん、初期のコンサルティングから運用まで一括で手掛けることで人事評価全体をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとして提供するものもある。いずれにせよ、人事評価については多くのプレイヤーが存在していることは理解しておきたい。
■人事評価システムの区分け
その中でも今回は、実際に人事評価を行うための器となるシステムに着目してみよう。一般的な人事評価システムには、主には年次での目標を定めるための評価指標の作成機能から、査定を行う機能、そして査定結果を含めた評価やスキルを管理する人事評価データベースなどの機能が備わっている。
また、査定結果に基づいて人材配置を検討する機能や、その結果をもとに支払われる給与のシミュレーションを行う機能など、査定情報を生かすための機能も備わっている。前述したプロセスの中では「構築」の場面にあたるが、ここでのサービスや商品もいくつかの選択肢が考えられる。
その大きなものの1つが、ERPをはじめとした基幹システムの一部として提供されている人事給与パッケージだ。いわゆるタレントマネジメントシステムとして提供されているもので、人事DBはもちろん、給与計算や勤怠・工数管理、研修管理、後継者管理、採用管理といった人事部門の業務に必要な機能が網羅されており、その中に人事評価の機能も内包されている。主に大企業向けの仕組みだといえるだろう。
豊富な機能を持つ基幹システム系の仕組みに対して、人事管理や労務管理の一部として、あるいは評価システムに特化して提供されている仕組みもあり、最近ではクラウド環境にて利用できるものが増えている。こういったサービスや商品には、目標管理制度、コンピテンシー評価、360度評価など、よく利用される評価制度の機能が備わっており、企業の考え方に応じた評価の仕組みが実装できるようになっている。給与などの仕組みとはAPI連携やCSVなどでデータを取り込むなど、何らかの方法で外部システムとの連携が行えるようになっている。
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