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企業におけるIT予算の使い道(2018年)/前編IT担当者300人に聞きました(2/2 ページ)

» 2018年06月07日 10時00分 公開
[キーマンズネット]
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4割の企業で「ユーザー部門独自のIT予算が存在する」と回答、その理由とは?

 続いてユーザー部門独自のIT予算(IT部門が関与しないIT製品やサービスの導入予算)について調査した。ユーザー部門独自のIT予算の有無については、39.1%と全体で4割の企業が「存在する」と回答しており、2017年2月に行った同調査「企業におけるIT投資状況(2017年)」より7.3ポイント増加する結果となった(図3)。顧客に近い営業やマーケティングなどのユーザー部門で、迅速に顧客ニーズに対応できるよう独自のIT予算を設けている企業は増加傾向にあるようだ。

ユーザー部門独自のIT予算は存在するか 図3 ユーザー部門独自のIT予算は存在するか

 そもそも、ユーザー部門にIT予算が存在するのはなぜだろうか。理由を尋ねたところ「現場のIT化ニーズやシステム化要件に対応するため」72.7%、「IT部門のマンパワー不足でユーザー部門のニーズにタイムリーに応えられないため」24.2%、「IT部門がユーザー部門の業務を理解できていないため」18.2%と、より現場のニーズに柔軟かつ迅速に応えるために、現場主導でIT活用を推進する企業において、ユーザー部門独自の予算が組まれているようだ(図4)。

ユーザー部門にIT予算が存在する理由 図4 ユーザー部門にIT予算が存在する理由

「予算の根拠はなに?」「予算があっても手が回らない…」IT予算への課題を聞く

 それでは企業はどのような課題を解決するためにIT予算を確保するのだろうか。「企業で課題に感じる点」について聞いたところ、最も多く寄せられた回答が「社員間の情報・ナレッジ共有、コミュニケーション」49.7%、次いで「IT人材の不足」43.2%、「営業、顧客管理、マーケティング力の強化」34.3%、「社内インフラの見直し(ex.仮想化、無線LAN、サーバ、ネットワークなど)」「セキュリティ対策(ex.情報漏えい対策、サイバー攻撃対策)」33.1%と続いた(図5)。中小企業から大企業まで従業員規模を問わず約5割の企業で課題と考えられているのが「社員間の情報・ナレッジ共有、コミュニケーション」で、「IT人材の不足」については採用力などの問題からか、中小・中堅企業で課題に挙げる割合が高かった。

勤務先における課題 図5 勤務先における課題

 関連して、自社の「IT予算」や「ユーザー部門独自のIT予算」に関して、課題に感じる点や会社への要望について、寄せられたフリーコメントを紹介しよう。

上層部の理解がない(コストを重視される)/投資の必要性を理解してくれない

  • リプレースが必要だと感じても、上層部は「今問題なく使えているから大丈夫」と言う・「費用がかかる」の一点張りで、現場の要望や不満の解消について上層部が理解を示さない
  • システム部門が予算の確保の必要性を訴えても、上層部はコストにしか関心がない

要望や企画に対して理解が得られない

  • 現場から改善要望の声が上がっている分野にも予算が取られず、会社が応えようとしない
  • 上層部がITに疎いため、予算取りの際の企画段階から苦労する

IT予算や決め方への不満

  • 現場には何の説明もないため、予算配分の根拠が分からない
  • 本当に改善が必要な分野に対しても十分な予算が確保されない
  • 経営層で勝手に予算を決めるのではなく、情報システム部門とも連携してほしい

人材投資がされない/業務以外のことに手が回らない

  • 予算があったとしても、人手不足のため日々の業務以外に手が回らない
  • 自社で開発した基幹システムの老朽化が進み限界状態であるにもかかわらず、人材に対する投資が十分でなく社内に有識者がいないため、フルスクラッチで再構築するべきか、ERPパッケージを導入するべきか判断ができない
  • 比較的予算は取りやすいが、システムやソリューションを新たに導入するにしても、業務が忙しくベンダーの選定まで追い付かないため、予算消化ができない

 IT予算または投資対象についてはまだまだIT部門と経営層、ユーザー部門の間で認識のズレが生じているケースが多そうだ。IT部門では、AIなど最新技術を生かした業務改善や新サービスの開発など、今後を見据えたIT予算の活用を提案するも、会社からは「コストがかかる」と言われ稟議が下りないケースも少なくない。ユーザー部門でも上層部の理解が足りず提案しても通らないなどの問題があるようだ。経営層や上層部はこれら現場の課題をよく理解しなければならないだろう。

 企業活動にとって、IT活用は必要不可欠だからこそIT予算が振り分けられている。それにもかかわらず、経営層を含めた各部門でのコミュニケーション不足や認識のズレによって思うように理解が得られず、IT投資が進まないケースもあるようだ。企業の課題として「社員間の情報・ナレッジ共有、コミュニケーション」が挙げられていたが、現場のリーダーを中心に経営層を巻き込み、IT投資が促進される企業の在り方を考える必要があるだろう。

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