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「Microsoft 365(M365)」はOffice 365と何が違うか、WaaSとは何かイベントレポートアーカイブ

「Microsoft 365(M365)」は「テレワーク推進」の切り札になるという。「Office 365」などと何が違うのか。日本マイクロソフトの発表を整理する。

» 2018年01月26日 10時00分 公開
[原田美穂キーマンズネット]

お知らせ

 2020年4月22日、Microsoftは「Office 365」を「Microsoft 365」と統合しました。Microsoft 365のライセンス体系は下記記事をご確認ください。

新Microsoft 365は何がどうなった? 図解で分かるライセンス選び方ガイド

 本稿は2018年に当初のMicrosoft 365というコンセプトが発表された当時の情報を紹介しています。最新の情報と異なる可能性がありますのでご注意ください。

 2018年1月23日、日本マイクロソフトは「ITモダナイゼーションに関するプレスカンファレンス」を開催、日本企業のIT環境を現代化する取り組みと働き方改革の実践を支援する体制の強化について説明を行った。いずれも、2017年11月に国内で提供を開始したばかりの「Microsoft 365(M365)」普及を促進する施策だ。

 M365は、2017年7月に米国で開催されたMicrosoftパートナー向けのイベント「Microsoft Inspire 2017」でMicrosoft CEOサティア・ナディラ氏が発表していた。M365は「Office 365」「Windows 10 Enterprise」「Enterprise Mobility + Security」を統合したもので、現在、中堅・中小企業向けの「Microsoft 365 Business」、大企業向けの「Microsoft 365 Enterprise(E3、E5)」などを展開している。

 今回説明があったM365普及促進の施策は2つ。1つは、テレワークを推進する企業に向けて、「Windows 10」に情報漏えいなどのリスクを保証する保険商品を組み合わせた働き方改革支援で、自社ユーザー企業と協業して展開する。もう1つは、2年後にサポート終了を控えた「Windows 7」や「Office 2010」を利用する中堅・中小企業向けの移行支援に関するパートナーとの協業強化策だ。

Windows 7とOffice 2010サポート終了時期は?

Windows 7は2020年1月14日、Office 2010は2020年10月13日にMicrosoftのサポートが終了する。この日を過ぎると、セキュリティアップデートの対象外となる。万が一、何らかの脆弱(ぜいじゃく)性が見つかった場合も、修正パッチ配布の対象外となるため、対処が難しく、セキュリティリスクが大きくなる。

2017年7月に米国で開催された同社パートナー向けイベント「Microsoft Inspire 2017」でMicrosoft 365を発表した際のMicrosoft CEO サティア・ナデラ氏のプレゼンテーション資料

「テレワーク保険」を開発、保険会社の実践ノウハウも提供

 1つ目の施策は、異業種と協業して導入企業の課題を解決する取り組みだ。ユーザー企業でもある東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)が、働き方改革の推進で日本マイクロソフトと協業する。

 東京海上日動では、自社で実践した働き方改革の経験を基にした企業サポートを推進する。その第一弾として、日本マイクロソフトと共同で「テレワーク保険」を開発、2月1日から提供する(正式名称は「特定危険担保特約付帯サイバーリスク保険」)。「Windows Defender」などのセキュリティ機能を備えた「Windows 10」を搭載したモバイルPCを前提にした保険だ。

 同保険では、損害賠償金、原因調査費用や各種対応費用を保証する。例えば、モバイルPCのウイルス感染が原因の場合にはその調査費用を、情報漏えい被害に対しては損害賠償金の保証を行うとしている。 今後、ディストリビュータやPCメーカーから同保険を付帯したモバイルPCが販売される予定だ(保証内容詳細は各自で約款を確認してほしい)。

 Microsoft製品のユーザー企業としての東京海上日動では、この発表に先立つ2017年10月、自社のテレワークの対象を全社員に拡大、働き方改革と生産性向上に取り組んでおり、この一環でグループ内約4万3000人がM365の導入を決定している。

 「働き方改革を実践してみると、ツールを導入すれば済む問題ではなく、就業規則や安全衛生をどうするかなど、さまざまな課題が見えてきた。中でもセキュリティの確保や万一の対策をどうするかは大きな問題であった。IT整備だけでは企業の不安を払拭できない。これこそがテレワーク保険開発の動機」(東京海上日動火災保険 常務執行役員 大塚祐介氏)

 なお東京海上日動では、この保険商品の提供を皮切りに、今後も働き方改革を目指す企業に対してのサポートを進めていくとしており、テレワーク時のセキュリティ対策や労務管理のノウハウを伝えるセミナーなどを、日本マイクロソフトと共同で実施する計画もあるという。

M365やWindows as a Serviceの認知

 日本マイクロソフトでは、「M365」を活用した働き方改革やITの「最新化」について、大企業と比較して中小企業の認知が進んでおらず、多くの中小企業ではクラウドなどを活用できていない状況があると分析している。

 「まずはWindows 10のサービスモデル(Windows as a Service)を認知いただけるようにしていかなければならない。Office 365は大手では浸透し始めているが、中小企業の皆さんへの認知普及はまだ不十分。今後パートナー各社と普及を本格化していきたい」(平野氏)

 Windows as a Serviceとは、「Windows 10」の新しいサービス提供モデルを指す。「Windows 10はWindowsの最後のバージョン」と語られるように、従来のWindows OSのような数年おきの大きなバージョンアップではなく、「Windows 10を利用していれば、利用するPCが壊れて使えなくなるまで無料で最新のWindowsを使い続けられる」というものだ。つまり、バージョンアップをする必要がなくなり、サービスとして最新のOSを使い続けられるようになる。

as a ServiceモデルのOffice 365ではAI機能も

 ちなみに、余談となるが、Office 365もWindows 10と同様にサービスとして利用し続けられる。Office 365では「Everyday AI」のコンセプトの元、AIの適用が進んでおり、Excelでは、表から自動的にデータの傾向を可視化したり、異常検知したりする機能が盛り込まれる予定があるが、これらも、Office 365ユーザーであれば機能が追加され次第、すぐに利用できる。

M365に含まれるOffice 365における「Everyday AI」適用のイメージ(出典:Microsoft)

 中小企業向けのM365移行支援では、過去の経験を生かした「早めの取り組み」を、期日まで2年を残す今の段階から進めていく計画だ。

 日本マイクロソフト パートナー事業本部の高橋美波氏は「Window XPのサポート切れの際、検証期間や予算化の時間が足りなかったという声が多かった。その反省を生かし、サポート切れに伴う移行施策についてはパートナーを巻き込んで、早い段階から切り替え計画を進めていきたい」と説明。2018年は全国各地でM365への移行/導入に関するセミナーをパートナーと共同で多数実施する計画だ。

 パートナーを巻き込んだアプローチとしては、リコーとは既に「リコー Microsoft 365 支援センター」を開設しているが、同様の取り組みをパートナー各社と実施する。

 例えばこの日(2018年1月23日)、富士ソフトは「Windows 10/Office 365移行支援センター」の開設を発表している。同社の場合は、東京と大阪にそれぞれ「検証ゾーン」を設置、併せて検証用にSurface貸し出しサービスもメニューとして提供する。

 また富士通では「Windows 10/Office 365移行支援窓口」を解説しており、移行簡易診断キャンペーンを実施、移行ガイド資料を提供している。また、ノートPC「dynabook」を展開する東芝では「Windows 10移行サービス」を提供。「Windows as a Serviceワークショップ」を実施し、検証パッケージも提供する。さらにダイワボウ情報システムでは「Microsoft 365販売支援相談窓口」を開設、販売パートナー向けの支援や導入アセスメントツールを提供する。さらに「Windows AutoPilot Deployment」を活用したサービス展開にも対応するという。

 日本マイクロソフトでは、これ以外にも同社パートナー企業の特性を生かした取り組みを進める計画があり、「2018年だけで全国各地で約1000件のパートナーとの共同セミナーを予定」している」(高橋氏)という。

 この他、中小企業向けの補助金・助成金取得支援サービスを運営する「Jマッチ」(ライトアップラボ)において、公的支援制度の情報提要と併せて「Office 365活用研修」メニューを提供するなど、中小企業の経営者へのアプローチも進める予定だ。

コラム:Windows AutoPilot Deployment

 Windows 10 Creators Updateで盛り込まれた機能で、あらかじめデバイスのプロファイル設定をクラウド(「ビジネス向け Microsoft Store」)に登録しておき、それをインターネット経由で任意の管理対象デバイスに適用する仕組みを指す。大量のデバイスをセットアップする際も効率よく展開できる。

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