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名刺は誰のもの? 破棄のルールは? 名刺管理の見落としがちな事実IT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2018年04月23日 10時00分 公開
[二瓶 朗グラムワークス]

名刺の廃棄には十分な注意を

 個人情報保護法を守るためには何をすべきかという詳細について本稿で全てを語ることはできないが、名刺に関してはその「廃棄の仕方」が1つのポイントとなる。情報を吸い上げた後の、不要になった名刺を捨ててしまうのは簡単だが、捨て方もまた個人情報保護法に影響するのだ。

 企業は、名刺を廃棄するに当たって、廃棄物が第三者の手に渡っても情報を復元できないよう配慮しなければならない。そのため、単純にごみ箱に捨てるというような行為は厳禁だ。不要な名刺を廃棄するときはシュレッダーなどで粉砕するか、オフィスに備えられた廃棄ボックスを経由して、業者に焼却または溶解処理を依頼することが必要だ。

 また同時に「名刺をすぐに廃棄して構わないのか」「従業員が自分で捨ててもいいのか」という疑問も生じるだろう。これに関しては法的な決まりはなく、企業において自社のポリシーに従ったルールを作り、運用する必要がある。

名刺は誰のもの?

 個人情報の保護という観点からは少しずれるが、「名刺は誰のものか?」という問題も重要なポイントだ。名刺が企業と個人のいずれに帰属するかということは、法的にも一概にいえることではなく裁判によって判断が異なることが多い。だからこそ、名刺管理ツールを導入し企業としてそのデータを活用するならば、名刺を企業の資産として守れるようなルール作りや運用を徹底すべきだ。

 例えば、従業員が退職時に名刺データを持ち出してしまうという問題はよく耳にする。実際に、名刺管理ツールベンダーのサンブリッジが就業者400人を対象に行った「会社で獲得した名刺の管理についての実態調査」(17年3月17日〜20日実施)では、「個人での名刺管理の目的は何か」という質問に対し、全体の11%が「会社が変わっても会った人とコンタクトをとれるようにするため」と回答しており、名刺は個人の所有物という意識があることが伺える。対策として、退職する従業員が名刺データを持ち出さないよう、誓約書を書かせるなどのルールを作りたい。

個人での名刺管理の目的 図1 個人での名刺管理の目的(出典:サンブリッジ)

 また、名刺管理ツールの機能を利用するという手段もある。各種の名刺管理ツールでは、退職した従業員のアカウントを止めてデータを抜き出せないようにした上で、そのデータを引き継ぎの従業員に振り分けてしまう機能が用意されている。他にも、従業員によるデータの持ち出しを防止するための機能として、USBメモリといった外部デバイスへのコピーを制限できる機能や、データの移動やコピーに際してログを残す機能を持ったツールもあるため積極的に利用したい。

 後半では、名刺管理ツールを円滑に利用、運用するためのノウハウについて説明する。

導入の意義を説明する

 名刺管理ツールを導入したものの、従業員の間でなかなか定着しないケースも多い。名刺管理ツールの利用を促進させるためには、まず「なぜ導入するか」「どんなメリットがあるか」という意義を広く社員に啓蒙する必要がある。特に営業部門では「名刺は自分のもの」という意識を持つ社員も多く、進んで名刺のスキャンや共有を行わないケースも散見されるため、このプロセスは無視できない。

 社内で啓蒙活動を行うことは容易ではないが、名刺管理ツールの提供事業者によっては管理者やエンドユーザーに向けてセミナーを定期的に開催している場合もあるので利用したい。セミナーの中には、具体的な使い方についてのレクチャーも盛り込まれているため、社員研修にもなるだろう。

運用にはルール作りが重要

 啓蒙活動だけでなく、ツールの利用を義務付けるという強硬手段も効果的だ。企業によっては、社員に対し、自席に戻ったら交換した名刺を即時スキャンしてデータ化するというルールを課しているという。多忙を理由に自身での処理ができない場合は、アシスタント職員に依頼するなどして、即日データ化させるという選択肢もあるだろう。より進んで、名刺の共有枚数を人事評価の指標に設定し、ツールの定着を促進する事例も見られる。

 このように、名刺管理ツールを社内に定着させるためには、トップダウンのルール作りが大きく影響する。毎日の日課として名刺のデータ化を「当たり前のこと」にすることで、名刺の共有を確実にする。これによって名刺の個人所有という意識が薄れ、部署内もしくは社内での共有が進んでいく。また前述した個人情報保護法の観点から見ても、名刺管理ツールで名刺情報を一元的に管理し、一定のルールの下で運用することは、個人で管理するよりも安全を確保できるといえる。

 ちなみに、導入に当たっては、全社一斉という手法もあるだろうが、社内で名刺管理ツールの効果やメリットを徐々に波及させていく方法も有効だ。具体的には「営業部門で導入し、効果が出た後にマーケティング部門に範囲を広げる」といったプロセスが考えられる。導入を円滑に進めるため、各部署の代表からなる立ち上げチームを組み、プロジェクトをけん引させるのもよいだろう。

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