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TOKAIグループが目ざすロボットを活用した経営へのシナジー効果とは

» 2018年04月04日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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東海・関東エリアを基盤にLPガスやケーブルテレビ、電力小売などの生活インフラサービスを展開するTOKAIグループ。その各社から管理業務を受託している株式会社TOKAIマネジメントサービス(静岡市葵区)は2017年7月、定型業務をソフトウエアで代替するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のツール「WinActor」*を導入し、受託業務の効率化を着実に進めている。グループ経営のシナジー増大に貢献する道筋も見えてきたという同社のRPA活用戦略を取材した。

株式会社TOKAIマネジメントサービス 小澤 博之 代表取締役社長

「導入前とは全然違う」毎朝1時間のルーチンワークがロボット化

TOKAIグループの19社から受託した経理・人事・総務などの管理業務を一括処理しているTOKAIマネジメントサービスは、2013年10月の設立から間もなく5周年を迎える。17年3月からRPAの検討を始め、同7月にWinActor導入を決めたことについて、同社の小澤博之社長は「受託した業務処理をどう効率化するかという設立以来の懸案が踊り場にさしかかり、当社は新しいアプローチを模索していました。そんなとき、親会社である株式会社TOKAIホールディングスが新しいIT技術の活用をテーマに開いた検討会で有識者の方からRPAの活用のアドバイスをいただいたことがRPA導入に向けたきっかけになりました」と語る。

仮想的な労働者(デジタルレイバー)であるロボットの管理業務も担う人事業務部の沼野哲也部長は「私自身、グループ各社から電子申請されてくる稟議書・報告書を部内回覧するため、大量の添付ファイルとともに専用フォルダへ振り分けながら保管、それらをプリントアウトしてもらうよう依頼する業務に毎朝1時間を充てていました。現在はプリントアウトするところまでのルーチンワークをロボットに任せています。おかげでいちばん頭が働く時間帯に、次年度以降の構想を練る余裕が生まれましたし、担当者がプリントアウトする時間も削減されました。導入前とは能率が全然違いますね」と、率直な喜びを語る。

株式会社TOKAIマネジメントサービス 人事業務部 部長 沼野 哲也氏

同社では現在、WinActorで作成された12体が人事・経理・総務の3部門で稼働しており、近く10体の追加も予定している。ロボットの作成を担うのは、各部門から1人ずつ選抜されWinActorの社外講習を受けた若手社員だ。講習を受けた社員の中で、もっとも適性があると分かったのは「表計算ソフトのマクロ機能」が得意な3人。小澤社長は「マクロとRPAに似通った部分があるからでしょう。ロボット化のキーマンを選ぶ目安になるかもしれません」と分析する。

人事部門での活用が進む理由とは

現場の知識とITスキルを併せ持つ社員が主役となり、順調に滑り出したかに見えるロボット化だが、ロボット化が有効な業務を探すことには当初苦労もあったという。ロボットを作成できる社員も部門内の作業をすべて把握しているわけではなく、業務の中でロボットが活用されるイメージを他の社員と共有することが難しかったためだ。

現在同社で、もっともロボットが活用されているのは人事部門だ。グループ企業から届いた申請の添付ファイルを抽出してサーバー上の指定フォルダに整理する作業や、グループ従業員の勤怠管理システムでの承認漏れなどのチェック作業では、それぞれ年間300時間近い時短効果が得られている。

しかし実はRPAの導入当初、社内の期待がもっとも大きかったのは経理業務の自動化だったという。当時の事情について、小澤社長は「まず経理を狙った理由は、TOKAIグループ全体で経理業務を行う事業所が多いことから、将来的に横展開できる余地が大きいと考えたからです。経理部門としては、会計伝票の入力処理の効率化ができれば大きな効果があり、さらに会計伝票のペーパーレス化にもつなげたい期待がありました」と振り返る。すぐペーパーレス化するのが難しくても、RPAの導入に併せて各拠点で行われている入力作業を一部統合するといった業務フローの見直しを進めておけばその下地ができ、グループ全体の効率化が図れると考えてのことだった。

ただ、そうした多方面にわたる経理関連の業務に比べると、人事関連の業務は既にシステムの中にあるデータを出力して加工配布する処理が多く、基幹システムへのログインとアクセスを自動実行できるRPAで直ちに効率化の成果を挙げることができた。グループから寄せられるRPAへの関心に応え、また従業員の理解が得られるようにするには、早期に目に見える実績を残す必要がある。そのため、できるところから始める柔軟なスタンスで導入が進められていったという。

パートナー選定の決め手は「業務知識」「ユーザー視点」「早い対応」

わが国で流通するものだけでも十指に余るRPAツールが存在する中、株式会社TOKAIマネジメントサービスが今回導入したWinActorは“純国産”をアピールし、国内の広範な業種で活用されている。取り扱うベンダーも数多いが、同社がパートナーとして選んだのは、シェアードサービスの同業者でもある 株式会社エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ西日本(大阪市都島区)だった。

それらの選定理由を問うと、小澤社長は「著名なRPAツールのうち、日本語で十分な情報が入手でき、なおかつ当社の企業規模で投資に見合った効果を得るにはWinActorがベストの製品と判断しました。また、パートナーには『ユーザーのわれわれと同じ立場からのアドバイス』を期待していたので、業種の特性を知り尽くしている同業者からの提案を受け入れることとしました」と回答。自社がRPAによって当面実現したい効率化はWinActorでほぼ実現可能な感触を持っているといい「ツールに関する突っ込んだ質問に営業担当者レベルで即答いただけていることも心強い」と信頼を寄せる。

システム部門との連携でノウハウを全社展開へ

RPAツールの導入を無事に終えた同社は今年以降、獲得したノウハウをもとにグループへの展開を進めたい考えだ。

足がかりは万全だ。同社が保有するWinActorのアカウントには、操作する社員とは別の社員IDと、基幹システムへのアクセス権限が既に付与されている。これはつまり、デジタルレイバーに対して人間同様のマネジメントを行うという基本原則が、TOKAIグループ全体に適用可能な状態にあることを意味する。

「自社内だけの導入であれば、ノウハウのある社員で推進できますが、グループ展開ではIT部門と一緒になって展開していかなければできません。当社グループのITサービスを担っている株式会社TOKAIコミュニケーションズもRPAには大きな関心を持っていますので、連携して進めていきたいと考えています。特にOCR(工学文字認識)とRPAを連携させた紙ベースのデータ処理の自動化の実現には大いに期待していますが、これにはIT部門の力が不可欠です」と小澤社長。沼野部長は「OCRとRPAのソリューションが完成したとき当社でぜひ取り組みたいのは、全国100以上の医療機関からバラバラの様式で届く、社員の健康診断結果の自動データベース化。静岡県より表彰も受けている『健康経営』を、さらに推進できると思います」と意欲をみせる。

自社の枠を超えたグループ経営とロボットが築く「win-win」への期待は高まる一方のようだ。

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