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» 2018年01月31日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:キャッシュレス推進の起爆剤「QRコード決済」の可能性 (1/4)

モバイル決済において存在感を強めるQRコード決済。国内対応状況やその導入意欲など、アンケート結果をアナリストが徹底分析。

[上田綾乃,トーマツ]

アナリストプロフィール

上田綾乃(Ueda Ayano):トーマツ ビジネスアナリティクス

外資系金融機関を経て監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社。金融機関への規制対応、コンプライアンス、ガバナンスに関するアドバイザリー実績を持つ。現在FinTech関連アドバイザリーとして、新規事業開発支援に従事。決済領域やブロックチェーン、仮想通貨を含む先端領域を専門とし、金融機関や事業会社、ベンチャー企業向けに法規制面を含めたビジネスモデル設計アドバイザリーを手掛ける。翻訳・監修本に『ビジネスブロックチェーン』。


 最近では、スマートフォンを利用したモバイル決済が世界的に普及しつつあり、中国などでは急速なキャッスレス化が進んでいることが大きな話題となっている。そんなモバイル決済だが、これまでモバイル決済を利用するユーザーの視点に立ったニーズ調査はあまり行われておらず、なかでも中国をはじめ海外で広く普及している「QRコード」を利用した決済に関する日本国内の動向調査はほとんど行われていなかった。

 回は、地方も含めた日本全体にモバイル決済を普及させるための起爆剤として期待されている、読み取り装置が不要で決済が容易な「QRコード決済」についてアンケート調査を実施した。そのアンケート結果から、QRコード決済の実態と今後について考えてみたい。

スマートフォンで決済可能な仕組み「モバイル決済」

 今回調査を行った「モバイル決済」だが、まずはこのモバイル決済について定義しておきたい。モバイル決済とは、スマートフォンで決済を行うことができる仕組み全体を指しており、クレジットカード決済の機能をスマートフォンに取り込んで利用できるものも含めて、広義のモバイル決済としている。

 モバイル決済を行う上では、銀行口座やクレジットカード、プリペイドカード、通信会社のケータイ利用料など、さまざまな資金元が用いられている。支払方法は、SONYの非接触型ICカードの通信技術である「Felica」をはじめ、世界的に広く利用されている「NFC(Near Field radio Communication) Type A/B」や割り勘アプリなどで利用される「アドレス・PW」、そして今回調査のメインとなる「QRコード」などがモバイル決済の範囲に含まれる。まずは、この関係性をしっかり理解しておきたい。

モバイル決済の位置付け 図1 モバイル決済の位置付け

モバイル決済におけるQRコード決済の位置付け

 今回モバイル決済に注目した背景には、モバイル決済におけるユーザーの認知度や利用意向、満足度などについて知りたいという声が、カード会社や小売業から寄せされていたことが1つの要因だ。

 現在キャッシュレス化に関する話題は、電子マネーやクレジットカード、ビットコインなどの資金元に関する議論が中心となっており、支払方法としてプラスチックカードかモバイルか、といった支払い場面における議論は見えてこない。

 もっとも、ビットコインは少額決済の仕組みとしてよりも投機目的での話題も少なくない。現実的なキャッシュレスの手段として、どの程度モバイル決済を取り入れるべきなのか知りたいという声が多く寄せられている状況にある。

 中でもQRコード決済については、まだキャッシュレス化が未整備の店舗などにも導入しやすい決済手段であることが注目した理由の1つだ。キャッシュレス化の1つであるモバイル決済にはさまざまな手法があり、Apple payがSuicaに対応したことで鉄道料金などの支払いやチェーン展開している大規模店舗などには広く普及している決済手段であるのは間違いない。

 しかし、これらを利用するためにはカードやスマートフォンをかざして読み取るための決済端末が必要になってくる。電子マネーやクレジットカードが使えないような小規模店舗や地方店舗などにキャッスレスの仕組みを拡大させるためには、できるだけ端末設置負担の少ない、できるだけ簡便なキャッシュレスの手法が求められてくるのは当然だろう。そこで注目したのが、QRコードをスマートフォンのカメラで読み取ることで決済が行える「QRコード決済」だった。

 そもそもQRコード決済は、中国をはじめ世界で広く普及したキャッシュレス決済の1つの手法だが、日本ではまだそれほど普及していない。2020年に日本で開催される世界的なイベントにあわせて、世界中から観光客が日本全国に押し寄せることが予想されるが、キャッシュレスに対応できていない地方などでは利便性を高めるための何らかの対策が今後必要になってくるだろう。その一助として期待できるのがQRコード決済だと仮説を立てたわけだ。

 なお、日本で利用できるQRコード決済は、通話スマホアプリとしてシェアを持つLINEが提供する「LINE Pay」やオンラインモールを運営する楽天が提供する「楽天ペイ」、2013年創業のベンチャーであるOrigamiが提供する「Origami Pay」などが中心だ。中国では「WeChat Pay」や「支付宝(ALIPAYアリペイ)」などが大きなシェアを持っており、日本のスマホ決済サービス各社と業務提携しているケースも少なくない。ただし、日本ではこれからのサービスとなるため、各ベンダー動向については今後注目していきたい。

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