メディア

LPWA方式、選択のポイントは結局セルラー系が本命か?すご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)

» 2017年12月27日 10時00分 公開
[ガートナー ジャパン]
前のページへ 1|2|3       

LPWAの使い分け:ユースケースは?

 LPWAの主な用途は、「メータリング」「トラッキング」「モニタリング」の3種である。コンシューマー領域のウェアラブルデバイスに関連するサービスもあるが、生産性向上やコスト削減、新サービスの提供、公共サービスの高度化などを目的としたエンタープライズ領域での利用が主流になることは間違いない。

 もう少し詳しいユースケースについては、図2のような例がある。これはスウェーデンのエリクソンの資料であるが、目的をさらに分解して、具体的なユースケースをIoT向け通信規格やサービスに当てはめていて分かりやすい。

目的に応じた通信方式の選び分け 図2 目的に応じた通信方式の選び分け(出典:エリクソン)

 この図では、非3GPP系のLPWAがカバーするユースケースを、3GPP系のNB-IoTやLTE-MTC(LTE Cat.M1)もカバーしていることに注意したい。前述の通り、ガートナーは、既存セルラー通信事業者は3GPP系LPWAを優先すべきであることを2年前から提言しており、その見解は現在も変わっていない。非3GPP系LPWAは、3GPP系と差別化できない限り(例:スケジュール、コスト、カバレッジ)、よりニッチな領域におけるユースケースが中長期的には増えると予想している。

LPWA方式の選択のポイントは?

 現在のところ、LPWA導入実績としては、商用サービスの提供が始まっているLoRaWANとSigfoxの実証実験や導入事例が多い状況だ。LoRaWANの場合は、自治体など行政が主導するプロジェクトでアンライセンスバンドでのオープン規格の方が取り組みやすい事情もあり、事例が多いようだ。

 しかし、やがてLTE-MTC、NB-IoTの本格的なサービス提供が始まると状況は変わるだろう。また、まだ商用化が目に見えていない技術、例えばWi-Fi Halow、ソニーのオリジナルLPWA、ユービックのWeightless Pなども、製品が市場に出回り実績が出てくれば選択肢に入りそうだ。

 では、現実的にいま、IoT向けの通信サービスの選択肢を絞るとすれば、何に着目すべきなのだろうか。次のようなポイントで考えてみることをお勧めする。

既存通信事業者の観点でのポイント

 NB-IoTとLTE-MTCなど3GPP系の技術が主要な選択肢となる。非セルラー系技術は、3GPP系技術で対応できないニッチな領域で可能性があれば検討する。

新規通信事業者の観点でのポイント

 アンライセンスバンドを利用する技術を導入するのが主要な選択肢。ただし将来的には、NB-IoTがアンライセンスバンドで利用できる可能性もあり得る。

エンドユーザーの観点でのポイント

 通信事業者のネットワークサービスを用いるか、自社でネットワークを構築するかが分かれ道。これは個別のニーズに依存する。

 通信事業者のネットワークサービスとしては、現在日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大MNOとそのMVNO業者が提供するサービスになる。大手3社はIoT向けの安価な通信サービスプランを打ち出しており、今後はさらに利用しやすいLTE-MTCやNB-IoTのためのプランが登場するだろう。

 また例えばソラコムも、独自にコネクティビティを管理するプラットフォームを構築し、デバイス、LPWA、クラウド、ユーザーの業務システムを貫く通信サービスを安価に提供している。既存のセルラー系とLoRaWAN、Sigfoxの通信を同一コンソールで管理でき、デバイスからのデータをAWSやAzureなどのクラウド、あるいはユーザーの業務システムに自動伝送するなど、各種自動化処理をパッケージにしたソリューションが利用できる点を利点としている。

 IoT活用のためのプラットフォームは、コネクティビティに関するものだけでなく、デバイスマネジメントのためのプラットフォーム、業界や業種特化アプリケーションを開発、構築するためのプラットフォーム、ビッグデータ解析のためのプラットフォームの大きく分けて4種が存在する。

 こうしたプラットフォームベンダー(通信事業者も含む)は、IoTをエンドツーエンド、ワンストップで提供すると抱負を語ることが多いが、現時点では本当にカバーできているベンダーは少ないのではないか。LPWAについても、「テクノロジーアグノースティック=技術非依存」、つまり何でも柔軟に取り組むとビジョンは示されるものの、現時点で利用できる技術に制限があるのではないか。

 場合によっては、LPWA規格のどれが最適かという視点ではなく、自社のIoT推進にふさわしいプラットフォームはどれか、そのプラットフォームでサポートされているLPWAを選ぶ、という方法もあるかもしれない。

 以上、IoT導入、活用に当たって重要な検討事項の1つとなるLPWAについて、特徴と選択のポイントを整理した。カバーエリア、帯域幅、デバイスの価格、デバイスのバッテリー寿命、運用コスト、通信料金、スケーラビリティなど、さまざまな要件のバランスを考えなければならないが、まだ商用サービスがそろっていない現段階で最善のLPWAを特定するのは難しいかもしれない。

 しかし、IoTサービスを他社に先行して提供することも、ビジネスの競争力の面では望ましいはず。いち早いLPWA導入のために、参考にしていただければ幸いだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。