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» 2017年12月11日 10時00分 公開

LPWA徹底比較 NB-IoT、LTE-M、LoRaWAN、Sigfox……本命は?IT導入完全ガイド(3/3 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]
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【ポイント3】下り通信が盲点? ファームウェア更新のし易さで選ぶ

 3つ目のポイントは、下り方向通信によってメンテナンスやファームウェアの更新ができるかという点だ。基本的にはIoTデバイスが収集したデータをゲートウェイや基地局に送信する上り方向の通信が重要になるが、アプリケーションの不具合修正や機能追加といった設定変更の際には下り方向通信も必要になる。従って、下り方向通信のスループットにも注目すべきだろう。

 例えば、デバイスのファームウェア更新では下り方向通信で送るデータが大きい場合が多いので、LTE Cat.1やLTE-Mなどが適切な選択になる(なお、2017年の7月に3GPPが策定したリリース14では、NB-IoTの伝送速度が上がり、ファームウェア更新の機能が強化されているためNB-IoTも有力な選択肢となった)。一方、設定変更や再起動、送信成功通知などのようなシンプルな通信ならどの規格でも機能するだろう。

 ちなみに、上述の規格の中では唯一、Sigfoxにおける下り方向の通信が日本の法制上の問題から認められていなかったが、2017年10月に施行された920MHz帯無線システムの制度改正ではこれが可能になり、11月から下り通信のサービスの提供が始まった。

【ポイント4】センサーは移動が必要? モビリティの有無で選ぶ

 LTE Cat.1やLTE-Mは、デバイスが基地局間を移動しても通信が正常に行えるハンドオーバー(ローミング)が行えるのが特徴の1つである。すなわち、自転車や自動車などの移動体にデバイスを搭載して、移動しながら通信できるということだ。一方、NB-IoTは固定されたデバイスを対象にしており、ハンドオーバーはできない。この「移動性」の有無が4つ目のポイントだ。

 LoRaWANもハンドオーバー機能を持たないが、実証実験では数キロ範囲で一定ルートのバス運行管理に適用可能であることが実証されている。従って、同一ゲートウェイで通信をカバーできる範囲であれば高速移動中でも利用できると考えられる。

 Sigfoxは基本的には固定されたデバイスが対象だが、そもそもハンドオーバーという概念をもたず、どの基地局が電波を捉えても、そのデバイスからのデータをクラウドに伝えることができる。従ってハンドオーバー機能はなくとも、基地間の移動に問題はない。ただし高速移動には対応できず、時速20キロ以下、すなわち自転車なみの速度でなければ難しいようだ。

【ポイント5】中国での大量生産が影響する? デバイスコストで選ぶ

 5つ目のポイントは、デバイスコストだ。まだセルラー系LPWAにおける商用サービスの提供が本格的に始動していない中、具体的に各規格のデバイスコストを精査することはできないが、一般論としてコストを左右する要因も覚えていてほしい。

 IoTデバイスは目的に応じて多様だが、通信能力を持つ部分だけに注目すると、各通信規格に最適化されたチップセットと、RF回路をともに組み込んだモジュールの価格がコストを左右する。通信機能をつかさどる部品のコストは、規格の複雑さに依存するため、仕様がシンプルであればあるほど低価格になると予想できる。

 参考までに、スマートフォン向けのチップセット(CPUとメモリ)の価格の下限は現在約10米ドルだが、IoTデバイスのチップセットはやがて2〜3米ドルになると見込まれている。

 価格低下のスピードは期待以上に速い。最近まで、LPWA普及段階での通信モジュール価格は約10米ドルが相場だと見込まれていたが、既に中国ではNB-IoTモジュールが約5米ドルで入札されている。背景には、中国がNB-IoTの展開を国策として進めているという実態があるが、今後モジュール量産が進展すれば、日本を含む世界にも影響が及ぶだろう。

 一方、モジュール価格を上げる要因としては、複数の規格に対応するモジュールの登場がある。各種規格を組み合わせて活用する用途では非常に便利だが、通常よりもコストは上がることを覚えておきたい。

コラム:世界に先駆ける、中国のNB-IoT事情

 中国では世界に先駆けてNB-IoT活用に向けた施策が活発だ。同国では、政府がNB-IoT推進政策を発表し、中国情報化部がそのガイドラインを作成。国を挙げてNB-IoT関連規格の標準化を推進しており、2017年末には40万の基地局をNB-IoTに対応させること、また2020年までに中国全土をカバーする150万基地局のNB-IoT対応を目指す。

 適用する分野はスマートパーキングやスマートホーム、スマート家電、資産トラッキングなど多岐にわたり、通信事業者のみならずベンダー、メーカー、流通業者などが協力して、NB-IoT活用の基盤となるエコシステムの確立を目指している。

図3 中国におけるNB-IoTのユースケースの例(実証試験中の例を含む) 図3 中国におけるNB-IoTのユースケースの例(実証試験中の例を含む)(出典:ファーウェイ・ジャパン)
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