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» 2017年11月22日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:チャットボットが企業に与えるインパクト (1/5)

ビジネスでも注目されつつあるチャットボット。歴史やトレンドを解説しつつ、ユースケースを含めた活用の可能性について概観する。

[長谷佳明,野村総合研究所]

アナリストプロフィール

長谷佳明(Yhosiaki Nagaya):野村総合研究所 IT基盤イノベーション本部 上級研究員

2003年同志社大学大学院 工学研究科修士課程修了後、外資系ソフトウェアベンダーのコンサルタントを経て、2014年4月 野村総合研究所入社。現在は、ITアナリストとして先進的なIT技術や萌芽事例の調査、コンサルティングを中心に活動中。専門分野は人工知能、ロボティクス、開発技術、開発方法論など。共著に『AIまるわかり』(日本経済新聞出版社)、『ITロードマップ』(東洋経済新報社刊)。


 最近ではチャット機能を自動化するボット、いわゆるチャットボットがさまざまなサービスに導入され、顧客向けのサービスや社内の業務システムとして組み込まれる動きも出始めている。そんなチャットボットについて、その歴史や現状のトレンドについて見ていきながら、実際のユースケースを含めたチャットボットのビジネス活用の今について概観していく。

チャットボットとは?

 チャットボットとは、LINEなどのチャットサービスで用いられているような日常会話をインタフェースとしたプログラムである。人とプログラムとが平易な表現を用いてやりとりが可能で、人の作業を代行したり、人のように振る舞ったりできる。アスクルの運営するECサイト「LOHACO」では、チャットボット「マナミさん」の導入により問合せ対応を24時間化し効果を挙げるなど、人手不足に悩むコールセンター業界で注目を集める技術の1つだ。

 また、Facebookから「Messenger Platform」、LINEから「Messaging API」とチャットボットに対応したサービスが登場し、チャットを新たな接点として顧客獲得を狙う小売業や金融機関などでの活用事例が相次いでいる。例えば、2017年5月よりSMBC日興証券がはじめた「AIチャットボットサービス」は、LINE上で手軽に口座開設の案内などができるチャットボットであり、ダイレクトメールなどこれまでの方法ではリーチしにくい20代や30代を狙ったものだ。

 しかし、チャットボットは決して新しい技術ではない。チャットボットに用いられる技術は、主にAI(人工知能)の中でも、人の使う言葉に関する「自然言語処理技術」を応用したものである。

 第一次AIブームのさなかだった1960年代にはMIT(マサチューセッツ工科大学)でコンピュータ科学科の教授を務めていたジョセフ・ワイゼンバウムがチャットボットの原型といえる「ELIZA(イライザ)」を開発している。ELIZAは、精神療法における会話の手法を模倣したものであり、テキストのやりとりにより、コンピュータであるELIZAと患者が会話を進める仕組みである。ELIZAは、ユーザーからの入力文の一部を引用するなどして、会話を続けるように設計されている。簡易な仕組みではあったものの、まるで人間と会話しているかのように感じられる場合もあったとのことだ。

 また、インターネットの黎明(れいめい)期に広がったメッセージングサービスの「IRC(インターネットリレーチャット)」でも、コンピュータと疑似的な会話を楽しむことを目的としてチャットボットが開発された。しかし、当時は自然言語処理技術が未成熟であったため、人間にとって違和感のないやりとりを続けることが難しく、一般のビジネス向けに活用するまでには至らなかった。

 チャットボットが現在、あらためて注目されている理由は大きく2つある。1つは、自然言語処理技術の進化である。第三次AIブームを迎え、チャットボットも最新のAI技術を取り込み、以前と比べ、格段に自然な会話ができるようになった。

 もう1つは、われわれのコミュニケーション手段の変化である。2010年ごろからチャットサービスが広まり始め、その代表ともいえるLINEは既に日本人の2人に1人がアカウントを所有するまでになった。これがB2Cのチャネルとしてビジネスに大いに活用されていることを知る読者も多いだろう。

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