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ハイパーコンバージドシステム急成長の鍵は「運用管理」すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2017年11月01日 10時00分 公開
[宝出幸久IDC Japan]
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導入のポイント

 最後に、ハイパーコンバージドシステムの導入に当たって考慮すべきポイントを挙げる。

運用管理コストの削減効果を評価する

 ハイパーコンバージドシステムは、スモールスタートが可能とはいっても必ずしも初期コストは安くない。ハイパーコンバージドシステムの導入による運用管理コストの削減効果がメリットになる。初期コストだけでなく運用管理の削減効果も加味したTCO(総所有コスト)をきちんと評価し、ハイパーコンバージドシステムを導入することで運用を変革することが重要となる。初期コストだけで判断する場合や、運用管理の方法を現状のまま変えたくない場合には、ハイパーコンバージドシステムの導入メリットは評価されづらいだろう。

安定性や機能、性能をどこまで求めるか

 これまで数十年にわたって利用してきたエンタープライズ向けストレージの安定性や機能を前提に考えると、ハイパーコンバージドシステムで安定性が同レベルで確保されるところまではきておらず、機能面でも不足することが多いのが実態だとみている。性能についても、オールフラッシュアレイのような高いIOPS性能を期待できるわけではない。

 このため安定性や機能、そして性能に対して高い要件がある場合にはハイパーコンバージドシステムが必ずしも最適ではないといえる。しかし、こうした点に厳密にこだわる必要がない用途では運用管理を効率化するソリューションとして普及する余地は大きいであろう。ハイパーコンバージドシステムの導入に当たっては、安定性や機能、性能をどの程度まで重視するか、運用管理の効率性を重視する場合はこうした点をそれほど重視しなくてもよいのかを明確にして検討を進めることが重要である。

パブリッククラウドサービスとの使い分けをどう考えるか

 運用管理工数やコストの削減を目的にパブリッククラウドサービスを利用するケースは一般化している。しかし、開発やテスト用途には適していても、本番環境でのシステム要件が固まりコスト試算をすると、オンプレミスでの構築よりもパブリッククラウドが割高になるケースも少なくない。またサービスレベルもオンプレミスと比較して高いとはいえず、本番運用には安定性が不足する場合もある。こうしたケースではオンプレミスでのシステム構築も十分に選択肢に入る。

 とはいえ逆に全てをオンプレミスで構築することも現実的ではなく、パブリッククラウドが適する用途もあることから、両者を適材適所で使い分けることを前提にする必要がある。その際、オンプレミスを従来型のシステムで構築していては、両者の運用レベルや柔軟性、俊敏性に大きな差が生じてしまう。オンプレミスにおいてハイパーコンバージドシステムを活用することで、こうした差を縮小し、オンプレミスにおいてもインフラの柔軟性や俊敏性を高めていくことが重要となる。

 以上、ハイパーコンバージドシステムの現状と今後、導入のポイントなどを概観した。ハイパーコンバージドシステムは、直近では仮想化環境の運用管理を効率化するソリューションとして普及が進んでいる。将来的にはパブリッククラウドとの連携も進み、ネットワークやアプリケーションレイヤーも含めたより広い範囲で統合的な管理を実現するソリューションへと発展することが期待される。

 企業のデジタルトランスフォーメーションが進み、インフラに対してより高い柔軟性や俊敏性が求められてきている。ハイパーコンバージドシステムは、中長期的にはこうしたニーズに対応するソリューションとして、ITインフラの変革の実現に当たって重要な役割を果たすであろう。

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