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客単価が36%アップ、顧客の情報を吸い上げる「バーコード」の使い方(1/2 ページ)

バーコードをスキャンすることで、商品の情報を多言語で表示させ、顧客に商品の魅力を伝えるサービスがある。バーコードを介して「伝える」とは一体どういうことか。

» 2017年10月25日 10時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]

 買い物の際、バーコードの付いた商品を目にする機会は多い。バーコードとは本来、在庫管理などを目的としてに商品ごとに付けられたナンバーを、POSレジがデジタル情報として読み込めるようコード化したもの。数字意外の情報は特に含まれておらず、日本では1978年から導入されている古典的な技術だ。

 この、認知度は高いがクラシックな技術であるバーコードをスキャンすることで、商品の情報を多言語で表示させ、顧客に商品の魅力を伝えるサービスがある。沖縄発のベンチャー企業であるPaykeの開発したスマホアプリの「Payke」だ。

 活用シーンの一例を取り上げよう。例えば、海外から来た観光客が目薬を買う際、パッケージが日本語で書かれているために、用途が目の疲れなのか、充血なのかといったことが分からないことがある。そうした情報が分からなければ購買にもブレーキがかかり、売り手の機会損失につながるだろう。

 Paykeは、このように商品の情報や魅力が伝わらないをなくすサービスだ。また、「伝わらない」を解決するだけでなく、バーコードのスキャン情報から、顧客が商品にどのくらい興味を持っているかというデータを収集できるという。

図1 商品の情報を多言語化する「Payke」 図1 商品の情報を多言語化する「Payke」

 同社の取締役CCOを務める山田圭介氏は、「CEATECH JAPAN2017」(幕張メッセ、10月3〜6日)企業講演ブースにおいて、Paykeのサービスとその活用例を紹介した。本稿では、その内容を取り上げる。

アプリでバーコードをスキャン、商品内容が多言語に変換

 Paykeは公式アプリストアにおいて、無料でダウンロードできるスマホアプリだ。アプリで商品のバーコードをスキャンすれば、加盟しているメーカーや小売店が登録した商品情報が、スマホの設定言語に翻訳され、表示される。もしも、参照したい商品の登録情報が無い場合には、自動的にインターネット上から該当する商品のデータを集め、情報を表示する仕組みだ。訪日観光客を中心にユーザーの関心を集め、累計ダウンロード数が230万を数えるという。現在対応する言語は、英語、簡体字、繁体字、韓国語、タイ語、ベトナム語、日本語の7カ国語。直近でインドネシア語、フランス語、スぺイン語にも対応する予定だ。

 Paykeを活用することで、メーカーや小売店は訪日旅行者に対して商品をPRできると山田氏は説明する。企業が法人向けに発行される管理画面上でバーコードのナンバーと商品の説明文を登録すれば、その文章が機械翻訳や人力による翻訳によって多言語化され、データベース上に蓄積される。管理画面で入力した文章を編集し、画像や動画を用いて情報を充実させることもできる。また、バーコードにひも付けた情報とSNSとを連動させて、商品に「いいね!」を付ける機能を活用すれば、バーコードを介して顧客とつながる機会が増える。目下の登録メーカーは800社を超え、その中には資生堂やライオン、エバラなど大手メーカーも名を連ねているという。

 今後は訪日旅行者向けのサービス以外に、日本人が海外に行く際や、世界中のユーザーが日本を介さない旅行でも利用できるようサービスの幅を広げる予定だ。また、旅行時以外の用途も想定しており、日本国内における普段の買い物でバーコードを使って情報を発信するサービスも構想している。

 「例えば、漫画のバーコードをスキャンすれば、モバイル端末で最初の20項が試し読みできるといった活用方法も構想している」と山田氏は説明する。

図2 商品が「いつ、どこで、誰にスキャンされたか」を可視化 図2 商品が「いつ、どこで、誰にスキャンされたか」を可視化

 図2は、渋谷駅周辺とドン・キホーテ渋谷店の周辺で、顧客によって行われた特定の商品のスキャン状況を表示している。地図上の丸印は、商品のバーコードがスキャンされた場所を示し、使用された言語ごとに色分けがされている。この地図を見れば「ドン・キホーテ渋谷店では、韓国語を使う人に商品がスキャンされることが多い」ことが分かる(オレンジが韓国語)。

 また、地図上の任意の丸印をクリックすれば、より詳細なデータ、すなわち商品がスキャンされた場所や日時、スキャンした顧客の国籍や性別を表示することが可能だ。

 「例えば、ドン・キホーテ渋谷店の周辺に分布している丸印を1つ選んでクリックすると、『2017年2月11日の11時32分に、繁体字を使う20代の女性がマスカラ商品をスキャンした』というデータが得られる」と山田氏は説明する。また、1人の人物に限定したデータを抽出することも可能で、任意の人物が自社の商品に関して「どこで何をスキャンしたのか」その行動履歴をたどるという用途もある。

 こうしたデータは、全て管理画面上でグラフ化され、データ分析に生かせられると山田氏は話す。

 「例えばメーカーは、自社商品が東京と大阪のどちらでより顧客の関心を引いているのかといったデータを抽出すれば、マーケティング戦略を立てやすくなる」(山田氏)

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