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アーカイブ需要に復権をかけるテープストレージの今すご腕アナリスト市場予測(1/3 ページ)

テープ運用の経験がない、そんな世代も珍しくないテープストレージが活路を見いだすアーカイブ需要。テープの復権はあるのか?

» 2017年09月27日 10時00分 公開
[森山正秋IDC Japan]

アナリストプロフィール

森山正秋(Masaaki Moriyama):IDC Japan リサーチ第1ユニット グループディレクター

ストレージ、サーバを含む複数のリサーチグループを統括。アナリストとしては、国内ストレージ調査の責任者として、年間情報サービス「Japan Storage Systems」「Japan Storage Solutions」「Japan Quarterly Disk Storage Tracker」「国内企業のストレージ利用実態調査」などを担当。また、多くのマルチクライアント調査やカスタム調査を手掛けている。IDC Japan主催のJapan Storage Vision、DirectionsTokyo、Japan Predictionsの講演メンバー。ストレージ業界の各種カンファレンスでもベンダーやユーザーを対象にした多くの講演を行っているほか、その発言は各種メディアで取り上げられている。


 バックアップやアーカイブなどのニーズに長年応えてきたテープメディア。可搬性のあるメディアとしてデータ保護やBCP対策などに活用されてきたが、NASなどのディスクストレージが広く普及し、サーバそのものがデータセンターに移管されてきたことで、その需要は以前に比べて低迷している状況にあるのは間違いない。既に若い世代のなかにはテープそのものの運用が未経験な人も出てきているのが実態だ。そんな状況のなかでも、業務上不可欠なメディアとしてテープストレージ需要が再燃する兆しも見せている。そんなテープメディアの現状について、あらためて概観してみたい。

テープストレージの市場規模

 まずは、テープストレージにおける市場規模について見ていこう。IDCではテープストレージ市場を、テープメディアやバックアップアーカイブソフトを除いた、テープドライブとテープオートメーションを中心に捉えている。

 国内テープストレージの売上額は、2016年には74億7900万円で前年比11.7%減という結果だった。この背景には、エントリーとして用いられてきたDDSテープドライブが生産中止になったこと、そして、バックアップ需要がディスクベースに移行した上、クラウドサービスへの移行も進んでいることが大きな要因とみている。

 この減少傾向は2021年までも続いていくと予測している。国内テープストレージ売上額については、2016年〜2021年のCAGR(Compound Annual Growth Rate:年間平均成長率)をマイナス2.6%とみており、テープドライブでみればマイナス4.4%、テープオートメーションでみればマイナス2.1%のCAGRと予測している。

国内テープストレージ売上額予測 図1 国内テープストレージ売上額予測 2016年〜2021年(出典:IDC Japan)

 以前は、バックアップ用のテープドライブが内蔵されたサーバも多く、そのサーバも社内のサーバルームなどに設置されていたため、目の前のサーバに対してテープメディアを用いたバックアップが業務のなかで行われてきた。

 しかし、今ではデータセンター内のラックにサーバが設置されることも多く、業務アプリケーションのクラウドサービス化によって、サーバ自体を社内で運用しないケースも増えている。テープドライブのサーバへの装着率は低下していく流れは変わらず、マイナス成長が持続すると予測している。

 オートローダーやテープライブラリなどのテープオートメーション全体についても減少傾向が続くが、テープカードリッジが500巻以上搭載可能な大型のライブラリー装置の出荷台数は2014年によりプラス傾向が続いており、今後も堅調な形で推移すると予測している。

 国内テープストレージ市場において、現在でも大型テープライブラリの出荷台数がプラス傾向にあるのは、大量のデータやコンテンツをアーカイブする際に活用しているためだ。日本の場合、SOX法に類似した法規制で強い罰則規定がある欧米と比較して、コンプライアンス対応のためのアーカイブは期待ほど大きなトレンドになっていない。

 しかし、新たな用途でのアーカイブについては、日本でも大きな潮流になる可能性を秘めている。それが、IoTやビッグデータ、AIといった新たなトレンドのなかで、大量のデータを取得し活用する動きだ。ビッグデータ分析やAIによる機械学習のためのデータなど、以前とは比べものにならないほど大きなデータ量を企業が取り扱うようになってきたことで、アーカイブの必要性が高まっているのが背景にある。

 特に大きなデータとしては、創薬関係の膨大な情報や製造業が持つ設計データ、映像などのコンテンツ素材などが挙げられる。なかでも監視カメラの映像などは、現在長期保存の対象データとして扱われるケースはまだ少ないが、機械学習のための基礎データとして活用するような用途が出てくれば、さらなる大量データのアーカイブ需要につながっていくことだろう。

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