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「シンクライアントの運用」はもう限界? ヤマトシステム開発の答え(4/4 ページ)

» 2017年08月14日 10時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]
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コストは減らない、集中化の負荷もあった、シンクライアントの落とし穴

 シンクライアントの仕組みによって多くのメリットを享受したかのように見えるヤマトシステム開発だが、幾つかのデメリットも打ち明けた。特に、導入前に期待感を持っていたコスト削減については見当が外れたという。以下では、現在同社が抱えている課題と、その対応策を紹介する(図7)。

図7 期待していたコスト削減はかなわず 図7 期待していたコスト削減はかなわず

 1つ目の課題はコストだ。あくまで画面を受信する端末として、最小限の能力しか持たないシンクライアント端末は価格を抑えられることが特徴のはずだが、近年安価になりつつあるファット端末と比べて大幅に安いわけではないと千田氏は話す。その他にも、メモリやストレージ、ネットワークの投資にかかる金額も大きいようだ。この問題を解決するために、同社では「これまで採用していた仮想化の方式であるフルクローン型をリンククローン型に移行することでコストを抑えられるのではないか」としている。

 2つ目の課題は、シンクライアント端末におけるWebカメラの使用が難しいということだ。デスクトップを転送する方式では、サーバ側で処理した結果を暗号化してからネットワーク経由で送信するため、高速な画像処理を必要とすることはハードルが高い。また外部端末の接続ができないので、USBでカメラやマイクを接続することも難しいと千田氏は話す。同社では対応策として、シンクライアント端末ではWebカメラに非対応とし、ファット端末を併用で貸し出しているという。

 また、千田氏は、運用負荷が上がったことを3つ目の課題に挙げた。ファット端末を利用していた時期は端末の管理を各部署に任せていたため、問題の対応も部署内で完結していた。一方、シンクライアントの仕組み導入後は、新たに設けたシンクライアント窓口に問い合わせが殺到するようになり、運用負荷が重くなったという。例えば、端末の省電力設定の不具合が多く、対応に追われたことを挙げている。この問題について同氏は、問い合わせ窓口にAIを活用するなどの対応策を打っていきたいと話す。

 4つ目の課題は、サーバ側で集中管理することによるインフラの負荷増大だ。仮想PC型のシンクライアント環境では、ストレージやネットワークなどさまざまなものが集約される。そのため、複数の端末で一斉に同じ操作を行えば、インフラの負荷が増大すると千田氏は話す。対応策として同社は「負荷のかかるタイミングを調整することで回避している」としている(図8)。具体的には、ウイルススキャンやパッチの適用など負荷の大きい作業は夜間に回し、幾つかのグループに分けた仮想PCで順次適用することで、運用を安定させているという。

図8 深夜の時間帯を有効活用することで、負荷を分散 図8 深夜の時間帯を有効活用することで、負荷を分散

ヤマトシステム開発のシンクライアント活用Tips

 千田氏は、シンクライアントの仕組み活用におけるポイントを3点挙げた。例えば、仮想PCとクライアントPCをつなぐネットワークは無線LANが便利だという。同社では、無線LANに接続する端末をシンクライアント端末のみに設定している。「これによって仮想PCとシンクライアント端末が1つのプロトコルで接続されるため、無線LANのポリシー設定が非常にシンプルになる。」と千田氏は話す。

 2つ目のポイントでは、シンクライアント環境においてもファット端末の併用が必要であるとしている。前述したWebカメラの使用時や、CD・DVDなどの外部媒体にアクセスする場合にはファット端末を使う場合があるとして、シンクライアント端末とファット端末の併用が便利だという。また、3つ目のポイントとして、同社の中ではテンキー付きのシンクライアント端末が人気だという話もあった。

 千田氏は、こうした創意工夫を重ねながら、今後もテレワーク推進をはじめとする働く環境の整備を行っていくと語った。

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