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» 2017年06月28日 10時00分 公開

ユーザーインタフェースとしてのAI進化論すご腕アナリスト市場予測(3/4 ページ)

[樋口陽介,アクセンチュア]

ビジネスにAIをどう生かすのか

 具体的な役割について整理したところで、AIにはどんな強みがあるのか見ていきながら、その強みにマッチしたビジネスケースについて考えてみたい。

 AIの強みの1つは、人間と違って「疲れない」ことだ。画像認識においては膨大な数の画像を読み込んだ上でマッチング精度を高めていくことになるが、人間にとって非常に大変な作業であっても、AIであれば難なく作業できる。

 例えば保険業界では、蓄積された膨大な事故の写真から損害状況を学習し、過失割合をはじき出すといったことは既に行われている。疲れを知らないAIならではの強みだ。

 永遠に成長し続けることができるのもAIの強みだ。市場の動向と移り行く顧客のニーズを収集したうえで学習を継続していくことで、永遠にバージョンアップが可能であり、数十年と言わず一生付き合う関係を「ひと」とAIであれば築くことができる。

 また、AIであれば、同時に複数の相手とコミュニケーションできる。例えばチャットボットのようなエージェントアプリが顧客対応を行えば、コールセンターで利用者を待たせることなく、同時に多くの問い合わせにも柔軟に対応できる。1対多のやりとりが可能なAIの強みが生かせる場面だ。

 さらに、機械同士で対話できることも強みの1つだ。例えば、自動車に搭載されたAIが、他車両のAIや健康を管理するAIと会話するといった具合だ。

AIの強みとマッチするビジネスケース 図1 AIの強みとマッチするビジネスケース(出典:アクセンチュア)

AI導入によって求められる役割の変化

 AIが顧客対応の最前線に出てくるようになり、まさに「新しいUI(ユーザーインタフェース)」となれば、企業の顔である広報担当者のように企業ブランド形成に大きくかかわっていくことになる。

 ささいなことのように思えるかもしれないが、例えば音声対応の声色はどうするのか、どこまでフランクなトーンで対応させるのかといった、細かなチューニングが必要になる。これはチャットボットなどのインタフェースを活用する場合も同様だ。

 企業のブランドイメージを毀損(きそん)しないこともあるが、もっと大事なのは、どのような顧客体験を実現したいのかという視点だ。AIを用いた新しい顧客体験作りには、「ひと」のことを熟知したUX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーとエンジニアの協業が必要になってくるだろう。

チューニングと組み合わせがAIには不可欠

 AIを顧客との対話エージェントとして活用するには、まだ越えなければならない技術的なハードルも多い。特に音声による対話を考えた場合は、幾つものテクノロジーの組み合わせが必要になる。

 問い合わせ内容を的確にテキスト変換する音声認識、その内容を理解する言語解析、そして適切な内容を返答するための音声合成などのテクノロジーだ。まだ大幅な進化が期待されるAIだからこそ、最適なテクノロジーを見極めながらきちんと対話の設計を行うことが重要になる。

 また、B to Bの領域でAIを活用する場合は、必要なリソースが基幹システム内に存在しているケースも多いため、基幹システム連携などの仕組みも実装しなければならない。多くのITソリューション同様、パッケージを購入して終わりというものではなく、組み合わせや外部連携など、しっかりとした設計が求められる。

 単に対話エージェントを導入するだけで劇的な業務改善につながるわけでないのはもちろんで、「ひと」が主役であるという前提で、どういう内容を聞き出したいのか、どんな説明を行いたいのか、事細かにチューニングしていくことが必要になる。

 目的によっては、音声での問い合わせを音声で返すのではなく、テキストや画像で応答するチャットボットなどを利用して応答した方が最適な場合もあれば、その逆もしかりだ。また、AIと「ひと」の組み合わせも重要になる。最初の対応はAIが行い、しかるべきタイミングで人間にスイッチするという、人間との組み合わせも考慮が必要だ。

 それ故、先に述べたようなデザイナーとエンジニア、業務プロセスの設計者といったさまざまな“ひと”の協業などが重要になる。

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