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» 2017年06月07日 10時00分 公開

5分で分かる最新キーワード解説:ドローン映像をリアルタイムに暗号化する「動画データ完全秘匿中継」とは? (1/4)

ドローンの操縦制御と映像通信を乗っ取りや盗聴から防ぐ動画データ完全秘匿中継技術が登場した。ワンタイムパッド暗号とは何か?

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 今回のテーマは、ドローン(無人航空機)の操縦制御と映像通信を乗っ取りや盗聴から防ぐための「動画データ完全秘匿中継」技術だ。映像撮影用ドローンとデータ中継用ドローンを使い、撮影場所と直接無線通信できない地上拠点から映像のリアルタイム監視やドローン制御を安全に行える技術では、通信の秘匿には理論上絶対に破れない暗号方式「ワンタイムパッド」を利用する。一体どういうものなのか?

「動画データ完全秘匿中継」って何?

 映像撮影用ドローンと直接無線通信ができない環境下でも、中継ドローンを使って動画データを安全に地上拠点にリアルタイムに送るための技術。情報通信研究機構(NICT)の佐々木雅英主管研究員を中心とする量子ICT先端開発センターとプロドローンが共同で開発し、2017年3月に実証実験の成果を公表した。

 まずは実証実験の様子を見てみよう。野外での実証実験は、この2月に愛知県豊田市郊外のテストフィールドで行われた。この実験では不審者が走って逃げるのを追跡するシーンを想定した。地上局を何かの重要施設と見立て、そこで不審者に気づいた監視担当者がドローンを飛ばし、不審者の行動を追跡させながら、ドローンが撮影した映像をリアルタイムにモニターするシチュエーションである(図1〜3)。

撮影ドローン 図1 撮影ドローン(最上空)と中継ドローン、地上局(出典:NICT)
野外実験の現場イメージ 図2 野外実験の現場イメージ(出典:NICT)
実験に使用した撮影ドローン 図3 (左)実験に使用した撮影ドローン(中)中継ドローン(右)地上局(出典:NICT)

 不審者は地上局から直接見えない森の向こう側にいて、地上局と反対方向に逃げていく。その様子を、自律航行する撮影ドローンで追尾し、地上局でリアルタイムに監視する。撮影ドローンと地上局は直接通信できなくなることが予想されるため、地上局から約10メートルの地点上空に中継ドローンを飛ばしておき、不審者を追って自律航行する撮影ドローンとの通信を中継するわけだ。実験敷地の制約から中継ドローンは1台、撮影ドローンから中継ドローン間の距離は最大200メートルである。通信には無線局免許が不要で運用しやすい無線LAN(2.5GHz帯用のWi-Fi機器を使用)を用いた。

 地上局〜中継ドローン〜撮影ドローン間の通信内容は、「ドローン操縦のための制御信号」と「撮影ドローンが撮影した動画データ」の2種類だ。それぞれは「ワンタイムパッド」暗号方式によって暗号化され、決して外部に映像が流出せず、操作を乗っ取られることもない。ここが「完全秘匿通信」と呼ばれるゆえんであり、この技術の最大注目ポイントだ。

屋内実験では被災施設での探索活動を想定

 実験は同月、屋内でも行われた。こちらは災害で倒壊可能性がある施設内での探索活動を想定し、野外実験よりも近距離(各ドローンと地上局相互間が約10メートル)の通信ではあるが、地上局は撮影ドローンからの電波が直接届かないように遮蔽物を設置し、「中継ドローンは見えて直接通信できるが、撮影ドローンは見えずに直接通信もできない」状況を作りだした(図4)。

屋内実験の現場 図4 屋内実験の現場。右側奥に撮影ドローン、手前の机が中継ドローン、左側扉の外に地上局がある(出典:NICT)

 野外・屋内の2つの実験で、地上局では通信速度12Mbps、毎秒15フレーム、320×240ピクセルのMPEG-4映像を、十分な品質で再生できた。撮影データは逐一暗号化した上、UDPパケットに包み込んで送信するため、ほぼリアルタイムの映像がモニターできる。通信経路上で仮になりすましや乗っ取り、横取り、盗聴が企てられたとしても、強固な認証と暗号化により、操縦への影響や映像の流出は原理的に「起きない」。たとえドローンが悪意を持つ者に空中で捕獲されても、ドローン内に映像を記録していないため情報流出は起こらない。

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