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» 2016年10月26日 10時00分 公開

KeyConductors:あなたの会社のIT投資は「適正」か? 国内IT投資動向のいま

2016年度にIT投資を増額した企業は28.5%と4分の1を超え、IT予算は拡大する中、自社の投資が適正か見極めが必要。アナリストが2017年のIT投資動向を指南する。

[宮田健,キーマンズネット]

 2016年10月19日、アイ・ティ・アール(以下、ITR)は「国内IT投資動向調査2017」を発表し、その要点を解説した。今回で16回目を数えた本調査は、2016年8月にIT戦略の決定に関与する国内企業、2685件の回答から、ITに関する投資動向をまとめたものだ。この結果は報告書として2016年11月中旬に販売される予定であるが、そのトピックスを紹介しよう。

「思った以上にIT予算は拡大中」そして「新規分野への投資」も

シニア・アナリスト 舘野真人氏 シニア・アナリスト 舘野真人氏

 今回の調査において特徴的だったのは、IT予算の「拡大傾向が顕著”であることだ。アイ・ティ・アール シニア・アナリストの舘野真人氏によると、2016年度にIT投資を増額した企業の割合は28.5%で、4分の1を超えている。一方、減額とした企業は10%を割り込む結果となった。多くの企業は横ばい以上のIT投資を考えているということになる。


IT予算増減傾向の経年変化(2001〜2007年度予想) IT予算増減傾向の経年変化(2001〜2007年度予想) IT予算の増減傾向を2001年からの経年変化で見ると、2013年以来の高い水準をあげている。出典 ITR「IT投資動向調査2017」

 業種別では、「情報通信」が最上位にあるものの、他の業種もおしなべて積極的だとのことだ。2017年度に向けた投資予想においては、インバウンド需要が見込める「娯楽/レジャー」や「宿泊業」だけでなく、これまで堅実な投資傾向のあった「化学工業製造業」なども指数が上昇しており、IT投資についてはやや明るい光が差しているように見える。

 増えた投資額はどこに向かうのだろうか。今回の調査では、新規システム構築や大規模なリプレースなどの「新規投資」と、既存システムの維持やちいさな機能拡張などの「定常費用」との支出割合を聞いている。その結果は新規投資が約30%と、過去最低を更新したという。

ITの新規投資比率 ITの新規投資比率

 そして、IT投資予算で「増加傾向”にあるのはやはり「セキュリティ」だ。IT予算額に対するリスク対策の費用割合は増加基調が継続されており、情報セキュリティ、災害対策は過去最高、IT内部統制向け費用はJ-SOX対応が一段落したものの、前年に引き続き高い数値を示している。

 これらの予算は、IT戦略のテーマに沿って投資が行われているが、その中でも企業は「情報の活用度の向上」「サイバー攻撃への対策強化」などに注目が集まっており、重視するIT戦略のランキングが上昇しているという。ただし、これらの投資予算はIT投資額からではなく、「経営リスク」として別の予算を組む必要があるとする考え方も多いことにも注目したい。

IT予算額に対するリスク対策の費用割合 IT予算額に対するリスク対策の費用割合 出典 ITR「IT投資動向調査2017」

 新規分野への投資で注目されるのは、「IoT」や「ビッグデータ」といった新たな技術だ。この投資に関しては近年「実施済み」または「実施予定」とする企業が増加しており、既に次のステージに目が向いていることが明らかになった。

注目されるIT動向の実施状況 注目されるIT動向の実施状況 出典 ITR「IT投資動向調査2017」

 ITRによると、IoTなどは製造業だけでなく、他の分野も注目を集めているという。2017年に向け、新規投資が期待されるテクノロジーとして業種別にピックアップをした結果を見ると、IoTやAI、機械学習は多くのエリアで注目がされており、この分野における投資が見込まれるだろう。

2017年度に新規投資が期待されるテクノロジー(業種別) 2017年度に新規投資が期待されるテクノロジー(業種別)

「IT支出の決定権」をIT部門が持てているか?

 この調査結果の中で注目したいのは、IT部門における「決定権」の状況だ。IT支出に対するIT部門の決定権は2016年で若干上昇したという結果が出たが、それでも50%を下回る水準だという。IT部門が関与しきれないIT支出が増えているという傾向があるようだ。

IT支出に対するIT部門の決定権 IT支出に対するIT部門の決定権
内山悟志氏 代表取締役 内山悟志氏

 アイ・ティ・アール代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏によると、「この数値は0でも、100でもだめで、恐らく50%前後の企業が戦略的かと考える」。この決定権の数字そのものよりも、経年変化を見るべきだとも述べる。

 内山氏はこの点について、この数値が関係する課題が2つあると述べる。「1つは本来IT部門が管轄すべきものが、現場で判断されているといういわゆる“シャドーIT”の課題。もう1つは最前線である現場が使うべきものに対するIT支出で、これはIT部門ではなく現場に主導権があるべき」とする。これが複雑化しているのが現在のITであり、ビジネスITとエンタープライズITがしっかりつながっていないといけないということになる。そのコントロールとガバナンスを効かせるべきだという企業が増えている。

 これは情報システム部が、全社インフラだけでなく「ビジネスIT」に踏み込まなくてはならないということになる。そうしなければ情報システム部の立ち位置があやふやになってしまう。内山氏は「会計システムや人事システムを現場任せにしてしまっている情報システム部もあり、システムのお守りはしているものの、投資としてどのような効果が上がっているのかをIT部門が関与できていない事例もある。IT部門はそういう部分に踏み込むべきではないか」と述べた。

 全体を通してみると、日本企業はこれまで思われていたような「保守的」な側面はデータとしてあまり出ておらず、IoTやAIなど、新しい技術にも積極的に関与しようと努力している姿が見える。次の課題は、この意欲に「ベンダーが応えていけるか」ということかもしれない。

 これらの調査結果は、「国内IT投資動向調査報告書2017」として2016年11月中旬にレポートとして発売予定だ。他の企業の投資動向を確認し、自社の意欲や投資方向性が業界でどのような位置にあるかを見定める、振り返るためのデータとして活用したい。

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