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過剰な期待は禁物、来るべきAI戦争に向けて知力を備えよすご腕アナリスト市場予測(3/4 ページ)

» 2016年09月14日 10時00分 公開
[亦賀忠明ガートナー ジャパン]

人工知能関連の技術は今、ハイプサイクルの頂点。遠からず幻滅期に突入

 日本では1980年代に、当時の通産省が第5世代コンピュータプロジェクトを主導し、ベンダーも巻き込んでさまざまな研究開発を行ったが、結局描いていたゴールは達成できず、試みは頓挫した。その当時のテクノロジの状況を踏まえれば、これは難易度の極めて高いチャレンジであったといえる。

 その後、人工知能やAIという言葉は業界からほぼ消えた。ところが30年の時をへた2011年、IBMのWatsonがクイズ番組で人間に勝利したことをきっかけにメディアが大々的に取り上げ、一躍脚光をあびることになった。その後も2015年のGoogle DeepMindによる「Alpha Go」(囲碁プログラム)が人間のプロ囲碁棋士を破ったことでも話題を呼んだ。どちらかといえば技術や応用の側面よりも、SF的な夢がメディアによって繰り返し語られることで、話題だけが盛り上がっているきらいがある。

 実際にコンピュータがクイズ番組で人間に勝った、囲碁に勝ったといっても、実はその背後には膨大なデータで学習させることが不可欠で、そのために相当な手間とコストをかけていることを忘れてはいけない。よく、人工知能が自分で全て学習すると思っている人もいるが、それは誤解である。赤ちゃんと同じで、まずは人間が手間をかけて教えていかなければならない。

 ある程度育つとそこから独り立ちできるというのが囲碁で見られたケースであるが、実際は、全てがそうなるわけではない。どこまで教えてもまともな答えがでないときもある。そうすると、赤ちゃんが悪いのか、それとも教える方が悪いのか悩むことが起こる。

 これは、機械学習をやっている人は、必ず経験することである。そうしたことの理解のないまま、「入れたらすぐにもうかる」と考えることは、あまりにも現実を理解していない人に見られる誤解であり、まずはそうした安易な考えを避ける必要がある。

 ガートナーが発表した「先進テクノロジーのハイプサイクル:2016年」を見ても機械学習やコグニティブエキスパートアドバイザー、スマートロボットなど人工知能関連の技術は、ハイプサイクルの頂点の近くにある(図3)。つまり、過度な期待が今最も高まっている時期である。

先進テクノロジーのハイプサイクル:2016年 図3 先進テクノロジーのハイプサイクル:2016年(出典:ガートナー)

 ハイプサイクルは、新技術が過度な期待を持たれて熱狂的にもてはやされる時期を経て、やがて過度な期待への幻滅期を迎え、その後着実に市場を確立していく経過を表すものだ。人工知能関連技術はもうすぐ幻滅期に入る。その後が本当のビジネス上の勝負となるだろう。

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