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» 2016年09月07日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:2016年度版改正電子帳簿保存法、何が変わった? (1/3)

電子帳簿保存法における施行規則の改正で企業会計に大きな変化が訪れる。スキャナー保存の要件が緩和された電子帳簿保存法のポイントについて徹底解説する。

[酒井洋和,キーマンズネット]

 財務会計の話題で今旬なのが、電子帳簿保存法における施行規則の改正だ(電子帳簿保存法そのものの改正ではない)。2015年に引き続き2016年も新たに法律施行規則の改正が行われ、従来よりも領収書など証憑の電子化に取り組みやすい環境が整備されつつある。財務会計システムを提供するベンダーも、積極的にセミナーを開催しており、参加者からも電子帳簿保存法の申請に前向きな企業が多いようだ。そこで今回は、新たに要件が緩和された電子帳簿保存法について分かりやすく紹介していく。

国税関係書類のスキャナー保存制度とは?

 財務会計システムを検討するうえで大きな話題となっているのが、2017年1月から運用が開始される電子帳簿保存法におけるスキャナー保存制度の要件緩和だろう。国税関係書類にかかわるスキャナー保存制度は、2005年に行われた電子帳簿保存法の改正時に適用された制度だ。

 電子帳簿保存法は、1998年に「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」として始まったもので、その後2004年には「民間事業者などが行う書面の保存などにおける情報通信の技術の利用に関する法律および関連する整備法」、いわゆるe文書法が制定され、帳簿や書類の保存義務が緩和されることになった。ただし、電子帳簿保存法に関連した税務関係の書類に関しては例外として設定され、2005年の電子帳簿保存法の改正時に初めて国税関係書類のスキャナー保存制度が導入された。

 そもそも国税庁の税務調査時に必要な帳簿や書類の中で税法上保存義務が発生するのは、仕訳帳や総勘定元帳などの「国税関係帳簿」をはじめ、損益計算書や貸借対照表、契約書請求書などの「国税関連書類」。この中で、電子帳簿保存法の適用を受けるための申請が可能なのが、決算に際して作成された損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類と、取引に関して作成された取引関係書類。

 この中でデータ保存の申請を行うのが、決算関係書類や自己が発行した取引関係書類であり、紙で受け取った領収書や取引先から受領した書類についてはスキャナー保存の申請を行うことになる。このスキャナー保存の要件が緩和されたことが今回のポイントになる。

国税関連書類をスキャナー保存するメリット

 紙で受け取った取引関係書類、具体的には見積書や発注書、請求書、契約書、領収書などがそれに該当するが、これをスキャンして電子化・保存するメリットはどんなところにあるのだろうか。大きくは、これら紙の証憑を保管するための場所が不要になり、ファイリングに必要な工数や棚、バインダーなどの費用が削減できることだろう。

 また、運用上では証憑をいつでも閲覧、検索することができるようになり、電子化されることで原本が失われるリスクも軽減できる。検索しやすくなるということは、税務調査を実施する国税庁としても調査業務の効率化につながるというメリットがある。

 2016年度の要件緩和では、スマートフォンやデジタルカメラにて領収書などの証憑をスキャンすることが認められたが、外出先でも経費精算が行えることでわざわざ経費精算のためだけに会社に立ち寄る必要がなくなる。多くの企業が取り組み始めているワークススタイル変革にも貢献し、業務の効率化や利便性が向上に寄与する仕組みとなるはずだ。

 つまり、証憑の保管を行っている経理部門をはじめ、税務調査を行う国税庁、そして証憑を経費として申請する現場それぞれにメリットが得られることになる。

電子帳簿保存法の施行規則が改正された背景

 そもそも2005年の電子帳簿保存法の改正時に初めて国税関係書類のスキャナー保存制度が導入されているが、実はこれまでスキャナー保存が承認されたのは、2014年までにわずか152件。データ保存の申請などを含めた電子帳簿保存法累計承認件数は16万5372件にも及んでいるのに、なぜスキャナー保存の承認件数が少ないのだろうか。

 端的に言えば、スキャナー保存の要件が厳しく、申請するメリットが得られない状況にあったためだ。以前は3万円未満の取引に限定されていたことで、その範囲が非常に限定されていた。また、書類に対して電子署名やタイムスタンプが必要となっており、電子帳簿保存法の事前承認も必要だった。他にも、全ての書類についてカラー保存が必要だったり書類のサイズ情報も保持しなければいけなかったりなど、運用するうえでも煩雑な作業が求められていた。

 これでは、経理部門が膨大な工数をかけて作業してもコスト削減のメリットが得られないため、わざわざ電子化を申請する企業が少なかったというわけだ。そこで2015年の施行規則改正では、従来あった規制を大幅に緩和し、スキャナー保存を一層促進させることが決められた。

スキャナー保存の要件緩和は中小企業にもメリットはあるのか?

 今回新たに改正された施行規則では、スキャナー保存要件の緩和が大きな関心ごととなっており、領収書などの証憑や請求書などが膨大に発生する大企業には確かに大きなメリットとなるはずだ。では、さほど伝票明細も多くない中小企業の場合、あまりメリットが出ないものなのだろうか。

 確かに紙の保管スペースがさほどなく、バインダーの数も1つの棚に収まっているようなレベルであれば、スキャナー保存の申請を行っても大きなメリットにはなりにくい。ただし、現状の申請承認プロセスの見直しや経費精算の方法など、周辺業務とセットで業務フローを見直すには絶好の機会だ。また、スキャナー保存の申請だけでなく、決算関係書類や自己が発行した取引関係書類などのデータ保存と合わせて申請することで紙の削減につながることになる。

 さほど領収書が発生しないので申請する意味がないと考えてしまう前に、その周辺業務を見直すきっかけとして捉えることで、中小企業にもメリットが得られるはずだ。実際にセミナーを開催しているベンダーの感触では、中小企業の担当者も数多く出席しており、電子帳簿保存法の申請には前向きな姿勢を見せているという。

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