特集
» 2016年09月05日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:広がるクラウド財務会計の実力 (1/3)

クラウド化が進む財務会計システムだが、オンプレミスとの違いや注意すべきポイントがある。クラウド環境で利用できる財務会計システムを解説する。

[酒井洋和,てんとまる社]

 企業が決算処理を行うために必要となる財務会計システム。多くの企業で採用が進んでおり、一般的な税務処理だけでなく企業独自のセグメントで今の経営状況を把握し、経営判断に役立てるための重要な指標を導き出すための仕組みとしても大いに役立っている。

 最近では、システムのクラウド化も進み、多くのベンダーがクラウド対応した仕組みを提供し始めている。そんなクラウドの財務会計に興味を持っている方も少なくないが、通常のオンプレミス運用との違いや注意すべきポイントはあるのだろうか。そんな疑問に応えるべく、クラウド環境で利用できる仕組みの今を詳しく見ていこう。

財務会計システムの基礎知識

 財務会計システムは、売り上げや支払、経費など企業活動を行うことで発生する費用を仕訳の形で入力し、最終的に財務諸表を作成するなど決算業務を支援するための仕組みだ。ただし税務処理のための機能だけでなく、予算の予実管理や事業計画、資金繰り、管理会計など経理部門が行っている付帯業務を支援する機能も豊富に備わっており、経理部門における業務支援パッケージという位置付けといえる。

 また、財務会計システムはERPにおける中核的な仕組みとしても提供されており、生産管理や在庫管理、販売管理などERPが持っているそれぞれの仕組みから最終的なデータが集まる器として機能する。財務会計システム内のデータを見ることで、企業の活動が数字の面から可視化できるようになる。

 一般的には、財務会計や管理会計の機能を中心とした製品のみならず、周辺業務である支払管理や固定資産・リース資産管理、債権管理、手形管理、証憑管理などの機能が備わっているものもある。

財務会計システムにおけるトレンド

電子帳簿保存法施行規則の改正への対応

 財務会計における大きなトレンドとして挙げられるのは、電子帳簿保存法におけるスキャナー保存の要件改正に関連した証憑の電子化や、仕組みとしてのクラウド化などだろう。

 2015年3月に行われた電子帳簿保存法におけるスキャナー保存の要件改正では、3万円以上の領収書でもスキャナー保存が可能になるなど、スキャナー保存要件の大幅な緩和が行われた。そして2016年の改正では、従来はスキャナーの解像度や証憑書類の大きさ情報を保持しなければいけなかったものが、スキャナーの代わりにスマートフォンで領収書を撮影することが新たに認められ、それらの要件も緩和された。今回の改正にあわせて、証憑の電子化に向けた業務改善を計画している企業が増えており、多くの企業が証憑の電子化に関する申請を行うことが予想される。

 ちなみに、税制改正という意味で数年前に大きな話題となった国際会計基準(IFRS)だが、今は大きなトレンドとはなっておらず、企業によっては粛々と対応を進めている状況だ。また、消費税の税率改正対応などへの対応も既にパッケージ側では対応済みのところが多く、軽減税率導入を見据えた消費税10%増税などの際には大きな混乱なく対応が進められていくだろう。

財務会計システムのクラウド化

 財務会計システムに限ったことではないが、財務会計のクラウド化も大きなトレンドの1つだ。既存のパッケージベンダーがパブリックなクラウドサービスを提供するケースはもちろん、インテグレーターが既存パッケージを自社のクラウド環境に展開、パブリッククラウドとして提供するケースもある。また、最近では自社でAWSなどのIaaS基盤上にパッケージを展開するプライベートクラウドも実績が増えつつある。提供されているIaaS基盤が既存のオンプレミス環境のような使い勝手で利用できるのがその大きな理由だ。

 いずれにせよ、クラウドを利用することで自前でのインフラ手配が不要になり、万一の際でもすぐに拡張できる柔軟性は大きな魅力だろう。またパブリッククラウドの場合はインフラ運用そのものも外部に委託できるため、運用も一層楽になるはずだ。

 ただし、多くの企業と共通化されたマルチテナント環境で利用するパブリッククラウドは当然コスト的に安価だが、自社独自の管理項目を付け加えることは難しく、サーバのバックアップ運用なども自分たちで運用する必要がある。逆に従来のオンプレミスでの運用同様、プライベートクラウドは自社独自の項目で管理できるものの、パブリッククラウドに比べてコストがかかってくる。どちらを選択するのかは自社のスキルレベルや人的リソースを勘案した上で考えていくことになるだろう。

話題のFinTechと財務会計との関係

 最近は、従来のテクノロジーを活用して既存のビジネスを劇的に変革する流れが金融業界に起こっている。よくキーワードとして話題になるのがFinTech(Financial technology、フィンテック)だ。このFinTechによって、金融機関が独占的に提供してきたサービス領域に対してITを中心としたベンチャー企業が参入し、ユーザーにとってより便利で使いやすい形のサービスが提供され始めている。具体的には、手数料や金利が大幅に抑えられた融資・決済サービス、人工知能であるAIを活用した資産運用サービス、家計簿など個人のお金に関する情報を統合管理するPFM(Personal Financial Management)などが挙げられる。

 このFinTechが既存の財務会計システムとどう関係してくるのだろうか。具体的には、金融機関との連携によって従来よりも便利に、かつ迅速にサービス利用できるような仕掛け作りが進んでいる。一番分かりやすいのが、銀行が管理する銀行明細の情報をそのまま財務会計に取り込み、自動仕訳を行うような連携だろう。これは個人の会計簿ソフトでも同じような仕組みが展開されており、銀行が提供する残高照会のためのAPIを呼び出すことで、財務会計で明細を自動取り込みできるようになる。

 また、企業が銀行に対して融資を申し込む際の審査業務にもFinTechの技術が利用されている。APIを経由して企業側の財務会計データを銀行側に開示することで、従来は与信審査に2〜3週間かかっていたものが、わずか数日で審査を終えることができるようになるといった新しい与信モデルもFinTechならではの仕掛けだ。

図1 資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」によるFinTechを活用した与信モデル 図1 資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」によるFinTechを活用した与信モデル(出典:マネーフォワード)

 他にも、給与の仕組みと連動し、企業内の仕組みからボタン1つで従業員の口座に給与支払いを行うといった金融機関連携や、請求書に対してクレジットカードの決済機能を付けることで、安価な手数料でクレジットカードから支払いでき、中小企業の資金繰りを大幅に改善してくれる仕組みも提供されている。金融機関との連携を強めていくことで、利便性向上につながるさまざまなサービスが今後も登場してくることだろう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

ホワイトペーパーや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。