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» 2016年08月04日 10時00分 公開

KeyConductors:どん底からの大逆転を果たしたソフトバンクの人事組織戦略

急激な事業拡大するソフトバンク。30年ビジョンの策定やAI、IoT、ロボット、エネルギーなどを含めたアグレッシブな事業展開をサポートする3つの人事組織戦略を語る。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 2016年7月13日〜15日、東京ビッグサイトで開催された「総務・人事・経理ワールド2016 HR EXPO」の特別講演(13日)では、「ソフトバンク成長戦略と人事ビジョン〜進化し続ける人事組織戦略〜」と題し、ソフトバンク常務執行役員・人事総務統括の青野史寛氏が登壇した。

10年前、低迷していた携帯電話事業を数年でV字回復

 スプリント、ARMなどの巨額買収で現在も話題を振りまくソフトバンクだが、その急成長も2004年の日本テレコム、2006年のボーダフォンの巨額買収からスタートした。どちらも業績は下降する一方で、厳しい状況での買収だったが、両事業は短期間で著しいV字回復を見せた。特に携帯電話事業は数年のうちにこれまでにない売上を達成、番号ポータビリティ施行後の2007年には純増数でドコモやauを抑え初めて業界1位となり、現在では7000億円に迫る利益を上げるまでに成長した。V字回復は日本テレコムやWillcomの買収後にも同じように表れた。

「心技体」の一体改革が文化の違う3社を融合し、成長を導いた

 事業成長をもたらした背景には、「心技体」の一体改革があると青野氏は述べる。「心」とはビジネス、「技」とはスキルやナレッジ、「体」とは人事制度やオフィスのことだ。ボーダフォンが前身のソフトバンクモバイル、元をただせば旧国鉄傘下の通信会社だった日本テレコムが母体のソフトバンクテレコム、そしてベンチャーのソフトバンクBB。それぞれ文化も人事制度も違う組織を1つに統合するには「心技体」統合をスローガンにした改革が必要だった。

 まずはオフィスフロア。一般的な企業統合では、それぞれ旧組織別にフロアを分けることが多いが、ソフトバンクはボーダフォン買収後2週間で、汐留オフィスフロアに全員を機能別に配置した。例えば人事フロアには人事スタッフを3社から集め、技術フロアには技術者を集めるというやり方だ。しかしそれでも出身組織の人の間に距離があったという。そこでさらに機能を細分化し、例えば「教育」担当スタッフを出身組織ごとに1人ずつ、3人で仕事をするようにした。その中のリーダーは、10年後のビジョンをプレゼンさせてピンときた人を任命したのだという。これを名付けて「フルーツバスケット大作戦」というのだそうだ。

 また人事制度は買収した会社に合わせるのが一般的だが、それではうまくいかないと判断、全くゼロベースで新しく作り直したという。「全社員の再格付けを行ったのです。その結果、特定出身組織にポストが偏ることなく、公平な人事が行えました。それから10年、今では各社の出身者がそれぞれの部門の責任者となっています」と青野氏は述べる。

「心」を示した「30年ビジョン」

 「技」とされたスキルやナレッジについて青野氏は、「恥ずかしげもなく各社のいいところを頂きまくる、共有する」ことをやってきたという。そして最も肝心なのが「心」だとし、それが同社の「30年ビジョン」だと語る。

 ソフトバンクの創業30年を迎えた2010年、次の30年で同社がどこに向かうのかを示したビジョンだ。「それが『情報革命で人々を幸せに』という理念です。これを全社員が共有しています。そこで出てきた具体的な数字は2つだけ。それは『2040年にはグループは5000社になる』と『時価総額は200兆円になる』ということです」と青野氏は述べる。

 一方、数字はあまり意味がないとも言う。「過去の100年、30年を見ると、時価総額トップの企業の事業は全く変わっています。その時代、最も求められる事業を行う会社が時価総額でトップランクに入る。私たちは特定事業にとらわれるのではなくその時代に世界が最も求めるものを提供していきます」とのことだ。

 また今後の有望分野として「ロボット」と「エネルギー」を挙げた。Pepperは、2014年発売だが、実は30年ビジョンが語られた時点から事業はスタートしていた。社員がこれからの有望分野としてトップに挙げていたのがその理由だったという。またエネルギーに関しては太陽光発電など自然エネルギーに注力するという。

3つの人事施策

 さらに同社の人事施策として、「Academia」「InnoVenture」「University」の3つを紹介した。Academiaは孫正義社長の後継者育成プロジェクト。後継者選びはともあれ、他に波及する成果が出てきているという。InnoVentureは事業提案の募集だ。毎年1000件ほどの提案があり、10件ほどは事業化しているという。この施策から、社員の中から起業してグループ会社として協力し合うことも期待しているとのことだ。Universityは強制ではなく社員が自ら学べる教育サービスだ。自発的に上を目指す姿勢が「ソフトバンクのDNA」だと青野氏は述べる。

AI、IoT、シンギュラリティという大きな変化を先取りする人事部門を期待

 最後に青野氏はこれからの10年でやってくる社会の大きな変化について触れた。

 AIやIoTなどの進歩が生み出す、人間の能力を機械が超えるシンギュラリティ(技術的特異点)がやってきた時にどんな変化が現れるのか。失われる雇用もあるだろう。人事ポートフォリオも変化を迫られる。

 ソフトバンクでは人事部門に「未来探索室」を設け、そんな時代変化を敏感に感じ取り、革新的なバックオフィスを実現していくという。「シンギュラリティは進歩か破滅か」という議論もあるが、変化は否応なくやってくる。受け身に回るか、先取りして変化していくかが問われると青野氏は言う。「私たちがやってきたような事業に即した戦略的人事が鍵になります。これからは、未来を見据えて変革の起点となるような人事が必要になっていきます」と講演を締めくくった。

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