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» 2016年07月20日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:SCM改革は財務経理を救う? 「ヒト」「モノ」と「カネ」で将来を見る「S&OP」 (1/2)

「この金額の根拠は?」という問い合わせに、すぐ回答できる次世代SCMはどういう仕組みか。戦略的な「ヒト」「モノ」「カネ」の計画方法のトレンドを紹介する。

[原田美穂,キーマンズネット]

 過去、サプライチェーン管理(SCM)はプロセス実行系の運用効率向上を目指して導入されてきたが、現在はさらに発展して将来の事業運営上のリスクを判断する材料として活用しようという動きが活発だ。そこには、従来のSCMの手法が、確かに運用の効率化や在庫圧縮に一定の効果はあったものの、最終的な収益にどのように貢献しているのかが見えにくかったという反省もある。

SCMだけでは見えなかった収益性を可視化するニーズ 図1 SCMだけでは見えなかった収益性を可視化するニーズ。注文に応えても、もうけがでなければ意味がない(出典:クニエ)

経営会議が紛糾するのは「モノ」と「カネ」の通訳がいないから

 「従来のSCMの手法は確かに運用の効率化や在庫圧縮に一定の効果はあったものの、最終的な収益にどのように貢献しているのかが見えにくかった」という問題に、いま最も頭を悩ませているのは、本社経営企画や財務・経理部門だ。

 例えば経営会議があったとして、各事業部門の予実を報告した際、「数字が合わない」「財務リスクが見えない」ことが最も深刻な課題となっているのは、期末になるたびに「なぜ数字が見込みから乖離(かいり)するのか」といった問い合わせを受けて困惑する財務経理部門だ。

 事業部門の中にいない財務経理部門にとって、SCMのモノの数の世界はブラックボックスになりやすく、すぐには要因を分析できない。製造部門や販売部門の担当者は部門のリスクヘッジのために在庫や販売見込みを多く見積もりやすく、それぞれの部門が正確でない数字を申告していれば、当然、実績が確定した段階で、計画との乖離が発覚することになる。

SCMだけでは実績と計画は見えても、計画から財務情報が見渡せず経営判断が難しい 図2 SCMだけでは実績と計画は見えても、計画から財務情報が見渡せず経営判断が難しい(出典:クニエ)

 これは、最終的に中長期的な経営計画に影響を与えるインパクトの大きな問題なのだが、実は製造、販売、在庫の各管理部門の責任範囲ではないため、当事者意識を作りにくい。

 また、問題の可視化には比較的短期間の数量調整をスコープとしてきたSCMだけでは対応が難しく、SCMに何らかの方法で原価などの金額情報を掛け合わせて見ていく必要がある。

中長期の事業計画と直近のSCMを接続する翻訳機能を持つのがS&OPプロセス 図3 中長期の事業計画と直近のSCMを接続する翻訳機能を持つのがS&OPプロセス(出典:クニエ)

 図4は、ある企業でのS&OPプロセスの運用を図にしたものだ。中期計画や月次計画とのギャップを報告し、将来リスクについて判断する場が設けられているのが分かる。ぱっと見では、生産、販売、在庫の調整会議と変わらないように見えるが、ギャップの要因分析や予算の視点から計画変更の検討を行った上で経営層に報告するプロセスがある。通常の生産、販売、在庫の調整会議の判断を超えるギャップが発生した際にどのようにアクションを起こすかが明確になっているため、突発的な問題に対処しやすい。

ある企業におけるS&OPプロセス導入後の業務フロー 図4 ある企業におけるS&OPプロセス導入後の業務フロー(出典:クニエ)

 こうした会議で、ギャップに対する打ち手の検討を行う際は、既存のPSI(製造、販売、在庫)管理システムをベースにExcelなどで金額情報を組み合わせて見ていくことでも簡易な検討は可能だ。しかし、専用のツールやERPパッケージのS&OP機能モジュールを利用すれば、より効率よく検討できる。SCMの情報を深くドリルダウンして要因分析を行いたい場合はPSI系のシステムと連携できるものを選択したいところだ。

 一方で、とにかくおおまかな実績情報から複数シナリオを生成してリスク判断に役立てたい、というニーズが強いようであれば、単独のS&OP向けソリューションのうち、計画シナリオのシミュレーションを強みとする製品の導入を検討するとよいだろう。

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