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2018年に100万ユーザー突破を目指すマネーフォワードの3方針KeyConductors

中小企業がITを活用できない最大の理由は人材不足だ。今後、生産年齢人口の減少が進み、バックオフィス業務の人材確保はさらに困難になる。

» 2016年06月28日 10時00分 公開
[丸山隆平キーマンズネット]

 マネーフォワード(東京都港区、社長CEO 辻庸介氏)は6月20日、中小企業・個人事業主向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」の戦略発表会を開き、3方針を打ち出した。

  1. 会計・確定申告、請求書、給与、経費、マイナンバーの5業務処理をまとめ、月額3900円で提供する「バリューパック」を発売
  2. 地方自治体や商工会議所と提携した「MFクラウド地方創生プロジェクト」開始
  3. 病院、飲食、理美容、不動産などの業種特化サービスの提供

 また、辻社長はこれまでのバックオフィス処理から、近く中小企業・個人向け融資事業を開始する計画で準備を進めていることを明らかにした。

個人向けフィンテックサービスから、中小企業と個人事業主を対象にビジネスを展開

辻 庸介氏 マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻 庸介氏

 マネーフォワードの法人向けビジネスは、2014年1月に会計ソフト「MFクラウド会計・確定申告」を発売したところから始まる。その後、クラウド版の給与、消込、マイナンバー、経費精算の他、これらのスマホ対応版も相次いで市場投入してきた。現在、従業員は180人で、「センシティブなデータを扱うため、開発は全て社内で行っている。そのため、エンジニアは約半数を占める」(辻社長)という。

 マネーフォワードが今後の戦略で重視しているのが、日本の中小企業の経営課題だ。辻社長は「少子高齢化の中で若年層の労働力は東京でも3割減。地方では半減近くとなっている。また、日本の中小企業の労働生産性は米国に比較して6割弱。特に小規模事業者の生産性の格差が大きい。これを解消するにはITの活用が求められるが、中小企業では4社に1社以上が経理業務の一部をアウトソースしており、自社の経営状況を適切に把握できていない企業も一定数存在する。中小企業がITを活用できないのは人材不足が最大の理由」と解説する。

 これらの問題に対して同社は今回、「テクノロジーの力で、中小企業の経営をもっと前へ」という「MFクラウドシリーズ」のコンセプトを打ち出した。

 個人向けの家計簿アプリでユーザーを抱え、日本の代表的フィンテック・ベンチャーとして業界をリードする同社が、中小企業をターゲットにした法人ビジネスへ本格的に舵を切るという宣言だ。「テクノロジーを活用することで経営に関する「お金」の課題を解決し、本業にもっと注力していただく」(辻社長)。主なターゲット層は日本企業の99.7%を占める中小企業や創業間もないスタートアップ企業、個人事業主だ。

3つの柱からなる「MFクラウドシリーズ」の中期戦略

 今回発表された「MFクラウドシリーズ」の中期戦略は3つ。

  1. 「バリューパック」の開始
  2. 地方創生プロジェクト
  3. 業種特化戦略

 1.の「バリューパック」は会計・確定申告、請求書、給与、経費、マイナンバーの5つのサービスを月額3900円という低価格で提供するいわば中小企業向けERPパッケージ。「価格もさることながら、従来のソフトでは業務の一部だけをクラウド化してもそれぞれの連携がとれていないと非効率。データ入力の二度手間をなくそうというのが狙い」(辻社長)だ。実際に「バリューパック」では、作業時間が2分の1に、売り上げは20%アップしたなどの導入事例があるという。

「ローカルベンチマーク」との連携も

 2.の「地方創生プロジェクト」は、地方自治体や商工会議所と連携して、「MFクラウドシリーズ」の普及を図るもの。「中小企業ではITを導入しようとしても、実際にどのようにすればよいか分からないというケースが多い」(辻社長)ことに対応する。

 自治体や商工会議および導入支援企業を募集し、これらを通じて中小零細企業への導入や導入後の運用を指導していく。既に第1弾として長崎県松浦商工会議所と北九州市からスタートしており、今後1年間で、全国20の自治体との提携を目指すという目標を掲げた。

 また、経済産業省が制定した企業経営評価指標「ローカルベンチマーク」を「MFクラウド会計」内に実装し、会計処理した経営データを基に、ベンチマーク指標が自動的に得られるようにした。中小企業経営者や銀行などのコンサルタントが当該企業の経営診断を機動的に行うことができる。

歯科経営、飲食、不動産から業種特化戦略を拡大

 3.の「業種特化戦略」は、企業会計の業務フローは業種ごとに異なるため、まず、歯科医院向け、飲食店、不動産など業種に特化したクラウドシリーズを提供していく。また、各業界で普及している既存の業務ソフトと連携してデータの一元化など、使いやすい仕組みを構築していく。さらに、各業界に強い会計事務所とも連携していく方針だ。

 既に5月末に、歯科経営管理システムのストランザとは業務提携しており、レセプトデータを自動取得する「MFクラウド会計forデンタルクリニック」を発売しており、飲食ではクラウド型POSレジ、タブレット型POSレジと連携し売り上げデータを自動取得する「MFクラウド会計for飲食」を開発中。さらに理美容業界では同業界設備機器でシェアナンバーワンのタカラベルモントと業務提携し「MFクラウド会計for理美容」を開発する。不動産ではインベスターズクラウドが提供するアパート経営アプリ「TATERU確定申告」を開発している。

2018年中に法人ビジネスで100万ユーザー突破を目指す

 これらの方策により、辻社長は「2018年中に法人・100万ユーザー突破を目指す」と目標を掲げた。

 また、今夏に「クラウドファイナンス」を投入予定で、従来のバックオフィス処理から、中小企業向け融資業務に進出することを明らかにした。「従来、決算書でしか融資審査を行えなかったケースでも『MFクラウド会計』などのデータを使うと、キャッシュフロー、各銀行口座残高など全てのデータが把握できるため、そのデータを基に融資を行うことができる」(辻社長)としている。実際の融資は提携している地銀9行から行われる見通しだ。

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