連載
» 2016年06月22日 10時00分 公開

強電気魚の電気器官をデバイス化した「シビレエイ発電」とは5分で分かる最新キーワード解説(1/4 ページ)

シビレエイの発電器官を発電デバイスに応用した「シビレエイ発電機」が登場した。近未来の発電手法がいよいよ実現なるか。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 今回のテーマは「シビレエイ発電機」だ。デンキウナギやデンキナマズと同様に、電気で外敵から身を守る特異な性質を持つシビレエイの発電器官を発電デバイスにする。マイクロ流体デバイス研究から派生したこの研究、強電気魚の持つ100%近いエネルギー変換効率を生体外に取り出して利用するという古くからの夢を実現するかもしれない。

「シビレエイ発電機」とは

 シビレエイ発電機とは、強電気魚シビレエイの発電器官を発電デバイス化した新原理の発電機だ。理化学研究所生命システム研究センター(QBiC)集積バイオデバイス研究ユニットの田中陽ユニットリーダーらの研究チームが2016年5月に発表した。

シビレエイ発電機 図1 (左)シビレエイ、(中央)シビレエイの電気器官の一部、(右)電気器官で作成したデバイス(出典:理化学研究所)

 水族館で、水槽の中のデンキウナギに放電させ、電飾を点灯させる実験展示を見たことがある人も多いだろう。あの発電能力を活用できないものかと、誰しも夢想したことがあるに違いない。

 発電原理はかねて解明されてはいたものの、現実に生体と切り離して発電デバイスが作られることはこれまでなかった。その個体の入手が困難なことと、発電を人為的に制御する技術がなかったことが主な理由だ。

 しかし、ありふれた魚の中にも、体内に強力な発電機構を持つものがいる。シビレエイもそんな強電気魚の一種だ。日本の中部以南の浅海に生息しており、例えば伊勢湾の漁師の網には大量にかかるという。しかし、食用に適さないため魚屋の店頭には並ばない。

 また、めったな刺激では放電しない上、体長約30センチと小型で、水族館のスーパスターの一員である体長2メートルのデンキウナギや1メートルのデンキナマズのような迫力に欠け、実験展示に向かないので水族館にいても話題になることがない。

 だが、放電電力はデンキウナギの最大電圧600ボルト、最大電流1アンペア、デンキナマズの同350ボルト、1アンペアに引けを取らない。最大電圧こそ30ボルトと低いが、最大電流は20アンペアが計測される。電力で見ればデンキウナギと同等の発電能力があるわけだ。

 デンキウナギなどに触ると最悪ショック死もあり得るが、シビレエイだと手でつかんでも、いつも放電するわけではなく、放電しても一瞬ビリッとするのが不快な程度だ。つまり、小さいわりに他の生物に比べれば強い電気を出しながら危険は少なく、おとなしくて取り扱いが容易だ。

 このような特徴に着目し、これまで獲れても捨てるしかなかったシビレエイの発電器官を、発電機として使えないかと考えたのが田中氏だ。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

ホワイトペーパーや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。