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» 2016年06月20日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:重要ファイルの消失や破損に“最後の切り札”となるか? 「データ復旧ソリューション」の実力 (4/4)

[吉村哲樹,オフィスティーワイ]
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データが復元できるケースと、できないケース

 既に述べたように、ファイル復旧ソリューションはデータ復元を100%保証するものではない。従って、製品やサービスの利用前にある程度「復元できるケース」「復元できないケース」について知っておいた方がいいだろう。

 物理破損の場合には、データ復元の可否は破損の状況に依存する。そのため、一般的なデータ復元サービスでは復元作業を始める前に破損状況を初期診断し、復元の可否についてあらかじめ通知してくれる。一方、論理破損に関しては「データを誤って削除した直後」なのか、あるいは「削除後に上書きをかけてしまった後」なのかによって、復元できる確率が大幅に違ってくる。また製品によって復元できるファイルの種別にも若干の違いがある。

図7 無料体験版での復元作業イメージ 図7 無料体験版での復元作業イメージ(出典:ジャングル)

 ちなみに多くのソフトウェア製品は、購入前に無償の体験版を試すことで、復元の可否を知ることができる。例えば「完全データ復元PRO」は無料の体験版を使って、復元可能なファイルの一覧を表示できるようになっている。復元処理をそのまま行うことはできないが、その場で製品版のライセンスをオンライン購入し、ライセンスキーを入力すれば、データ復元処理に進めるようになっている。こうした仕組みを有効活用することで、復元したいファイルに対して復元できる可能性が高い製品を選定することができる。

 また近年では、PC内のデータを勝手に暗号化してしまい「復号してデータを復旧してほしければ、金を払え」と脅す「ランサムウェア」の被害が各所で拡大している。この被害からの復旧目的でデータ復元ソフトウェアを試すユーザーもいるようだが、ランサムウェアは暗号化したデータで元のデータ領域を上書きしてしまうため、暗号化前のデータを復元できる可能性は極めて低いと考えられている。

データ復旧ソリューションの活用例

 それでは実際にどのようなビジネスシーンにおいて、データ復旧ソリューションは効力を発揮するのだろうか。またそうしたシーンにおいて、実際にはどこまでデータの復元が期待できるのだろうか。ここでは、典型的なユースケースを挙げてみよう。

バックアップ運用の仕組みを持たない中小企業

 従業員数が数人足らずの中小企業では、たとえ業務にPCを導入していても、その中に保存されている業務データのバックアップを日々きちんと行っているところは少ない。またITに対する知識が乏しいユーザーも少なくないため、誤操作によって突然ファイルが参照できなくなるようなトラブルも多い。

 こうした中小企業に対してITサービスを提供するSIサービス企業の中には、あらかじめPCにデータ復旧ソフトウェア製品を導入・セットアップした状態でユーザーに提供するところもある。これにより、もし万が一ユーザーがファイルを誤って消してしまっても、その場ですぐ連絡を受ければかなりの確率でデータを復元できる。

多くの顧客データを預かる士業事務所

 弁護士や税理士、会計士の事務所では、たとえ従業員数が少なくても、クライアントから多くの書類データを預かることが多く、中にはNASストレージ装置を導入して大量のファイルデータのバックアップ運用を行っているところも少なくない。しかし、NASに搭載されたHDDはPCのそれと同じくやはり消耗品であり、また安価なNAS製品の場合はRAIDコントローラーの不具合によりデータが読み出せなくなるようなトラブルもまれに起こる。

 こうしたケースでは、下手に自身でトラブル解決を試みるより、トラブルを起こした機器を即座にデータ復元サービス業者に持ち込むのが無難だ。こうしたケースに対応するために、多くの業者はPCだけでなくRAIDコントローラーを搭載したNASストレージ内のデータを復元するサービスも提供している。

 士業事務所が顧客から預かるデータは、経理や法務に関する機密データが多いため、その消失は即座に深刻な信用問題に発展する。従って普段から“最後の切り札”としてデータ復旧サービスの利用も想定したデータ管理体制を敷いておくことが重要になってくる。

学校教育用のPCにプリインストール

 近年では多くの小中学校でPC教室が設けられ、生徒、児童が直接PCを触りながら学ぶことができるIT教育環境が普及しつつある。この場合、まだITリテラシーがさほど高くない生徒、児童たちに自由にPCを操作させると、一般的な用途と比べ誤操作によるファイル消失のリスクは格段に高まる。

 こうしたトラブルへの対応や、環境のセットアップに余計な時間が取られてしまうと、PCを使った授業をなかなかスムーズに運べなくなる。こうしたケースを想定し、あらかじめ生徒、児童が使用するPCにデータ復元ソフトウェアを導入しておき、もし生徒、児童が誤ってデータを消してしまっても、その場ですぐ教員がデータを復元することで授業を中断することなくスムーズに運営できるようになる。

 これらのユースケースはあくまでも一例であり、実際にはありとあらゆる企業や組織において、いざというときにデータ復旧ソリューションが役立つ場面は数多くあるはずだ。また「バックアップや災害対策には万全を期している」と自負する企業であっても、いざ不測の事態が起きたとき、普段の備えが想定通りに機能するとは限らない。そのためデータ復元の「最後の砦」として、データ復旧ソリューションについても押さえておくことをお勧めしたい。

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