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» 2016年05月25日 10時00分 公開

5分で分かる最新キーワード解説:シュッと現れパッと消える「海水アンテナ」とは? (1/3)

海水を噴き上げてアンテナにするという画期的な技術「海水アンテナ」が登場した。応用に期待が持てる新たなアンテナの形に注目だ。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 今回のテーマは、海水を吹き上げてアンテナを作る「海水アンテナ」だ。導電性のある塩水とポンプがあれば、どこでも電波の送受信ができるようになるので、ビーチでTV放送を受信したり、洋上プラントで必要な時だけ無線通信をしたり、災害時に被災地にポンプ車を派遣して臨時の通信システムを構築したりと、さまざまな用途に応用できそうだ。一体どんな仕組みなのか。

「海水アンテナ」とは?

 海水アンテナは、海水をポンプでくみ上げ、水柱のように空中に噴出し、電波を捉えるアンテナとして活用する技術だ。2016年1月、三菱電機が海水アンテナで地上デジタルテレビ放送の受信実験を行い、十分な映像受信ができることを確認した(世界初)。

 まず、実験システム(三菱電機研究施設屋内)を見てみよう。図1の右側の水槽が海水アンテナのデモ装置、左側が一般的なテレビだ。水槽の下には小型のポンプ(一般的な市販製品)があり、ボタンを押すと水槽の液体(海水と同じ電導率に調整された水。以下「海水」と呼ぶ)をノズルから噴出する仕掛けだ。

 写真はテレビをつけた状態で水槽下のポンプを起動した直後の状態だ。テレビ画面には地デジの番組が映し出され、チャンネルを変えても同様に映像が見られた。装置構造のイメージは図2に見る通りだ。

「海水アンテナ」のデモ装置 図1 「海水アンテナ」のデモ装置
海水アンテナの構造イメージ 図2 (左)海水アンテナの構造イメージ(出典:三菱電機)、(右)開発を指揮した宮下裕章部長とデモ装置

 水槽内部のノズル機構からテレビまでは高周波ケーブル(アンテナケーブル)でつながるのみで、ブースターなどの機器類は介在しない。水槽下の黒い台の中には、ポンプ装置と制御用の電気回路が入っているだけだ。

 ポンプを駆動すると、海水がノズルから噴出し、放物線を描いて水槽内に落下する。ポンプの出力が安定すると、吹き上げた海水の高さも安定し、テレビに地デジフルセグメントの鮮明な番組映像が映し出された。

 ほんの一瞬映像が乱れる場面もあったが、長時間連続して良好な受信ができた。ポンプ起動ボタンで「シュッ」と現れた海水アンテナは、ポンプOFFで「パッ」と消える。何度もポンプのON/OFFを確かめたが、全てほぼ数秒で映像が復旧した。

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