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もう一度、基礎からおさらい「ナレッジマネジメント」の今IT導入完全ガイド(3/3 ページ)

» 2016年04月18日 10時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]
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さまざまなジャンルのITツールで課題に挑む

 このようにナレッジマネジメント自体はあくまでも経営手法の1つであり、必ずしも「ITありき」の取り組みではない。しかし実際には、効率的に暗黙知を集めたり、形式知を広く組織内で共有したりするための仕組み作りにはITが欠かせない。

 一方、先述のSECIモデルからも分かる通り、ナレッジマネジメントや情報共有、ナレッジ継承の取り組みは極めて広範な活動を含んでいる。そのため、具体的な施策をシステムのレベルに落とし込んでいくと以下のようなさまざまな種類のITツールを適材適所で活用することになる。

ナレッジベース、ヘルプデスク(FAQシステム)など

 従業員が保有している知識(暗黙知)をシステムに登録し、データベース化することによって、他の従業員が参照したり、再利用したりできるようにするシステム。かつてナレッジマネジメントが大きく取り沙汰されたときには、このタイプのITツールが数多く登場し、また現在でも広く活用されている。業務や製品に関するFAQなど、ある特定のジャンルに関する情報を整理し、公開する目的で使われることが多い。

文書管理システム

 グループのメンバー間で同じドキュメントを共有しながら業務を進めていく場合、文書ファイルのアクセス権限やバージョン、更新履歴をきちんと管理する必要がある。そのために使われるのが文書管理システムだ。極めて古くからあるソリューションで、ナレッジマネジメントや情報共有の目的以外にもペーパーレスや情報漏えい対策、コンプライアンス対応などの目的で広く使われている。

グループウェア、EIP(企業ポータル)

 情報共有の文脈で最も広く使われており、また確実に成果を挙げているのがグループウェアだろう。多くの企業が全社レベルのグループウェア基盤を導入しており、スケジュール帳や掲示板の機能を通じた情報共有はもちろん、近年ではSNSの要素を取り込んだ製品も増えてきている。また、社内に存在するほかの業務アプリケーションのインタフェースを統合し、社内の情報活用をさらに促進することを狙ったEIP(企業ポータル)も注目を集めている。

EIP型グループウェア EIP型グループウェア(出典:アリエル・ネットワーク)

エンタープライズサーチ、検索アプライアンス

 こうしたさまざまな種類のITツールを導入してきた結果、社内のナレッジが複数のシステムに分散してしまい、いざ必要になったときになかなか見つけられないという問題が顕在化してきた。そこで提唱されたのが、社内のさまざまなシステムやファイルサーバ、データベースに散在している情報を横断的に検索できるエンタープライズサーチだ。

 バラバラに存在するデータを1カ所に集めたり、正規化したりする必要がなく、そのままの形で再利用できる。また近年では、インターネット検索の技術をそのままエンタープライズサーチに応用した「Google検索アプライアンス(GSA)」のような製品も注目を集めている。

Google検索アプライアンス Google検索アプライアンス(出典:電算システム)

社内SNS、LINE

 FacebookやTwitterをはじめとするSNSサービスがコンシューマー分野で爆発的に普及したことを受けて、企業内のコミュニケーションや情報共有にもSNSの要素を取り入れる動きが加速している。主だったグループウェア製品がこぞってSNS機能を取り入れているほか、LINEのビジネス利用もしくは法人向けのチャットツールの導入を考える企業も出てきた。

 こうしたツールは元来、知識の蓄積や再利用は前提としない「揮発性」のメディアであるため、ナレッジマネジメントのような目的で利用する際には発信された情報の中からいかに価値の高いものを抽出し、それをデータベース化するかが今後の課題となるだろう

 この他にもさまざまなジャンルのITツールがナレッジマネジメントや情報共有の名の下に利用されているが、あまりに多くのツールをバラバラに導入してきた結果、それぞれの本来の目的が今となってはあやふやになっている企業も少なくない。

 企業における情報共有・ナレッジ継承の取り組みは、ITツールを導入したからといってすぐ実現するわけではない。「経営課題としての情報共有・ナレッジ継承」という問題意識を忘れることなく、自社の具体的な課題や戦略に即した製品を選定・導入するべきだろう。

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