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» 2015年11月04日 10時00分 公開

5分で分かる最新キーワード解説:空中に浮かぶボタンをポチリ、「空中超音波触覚インタフェース」とは? (1/4)

何もない空間から接触感が得られる新たな触覚インタフェースが登場した。遠隔地でも「触れる」体験が実現可能な驚きの技術とは。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 今回のテーマは「空中超音波触覚インタフェース」だ。箱の中の何もない空間にぽっかり浮かぶボタンの映像を指で触ると「ポチリ」と接触感が伝わる空中触感タッチパネル、手のひらに投射した映像中の小動物が移動すると、さわさわと動き回る感触を覚える触覚プロジェクタ、光学的に再現した3次元クローン物体を押すと実物が傾く触覚クローン。これらを実現したのは超音波技術だ。一体どんな原理なのか。

「空中超音波触覚インタフェース」って何?

 超音波振動子を格子状に多数並べた超音波振動子アレイから、空中の任意の位置に焦点を結ぶように超音波を発生させると、そこには音響放射圧と呼ばれる圧力が生じる。その位置に人間の手指などがあれば、表面に押されるような触覚刺激が生まれる。この現象を利用して、バーチャルリアリティの世界に触覚を追加するのが「空中超音波触覚インタフェース」だ。

 映像や音響で実際にはそこにはないものを臨場感、現実感豊かに表現する技術はもうおなじみかもしれない。VR(Virtual Reality、仮想現実)やAR(Augmented Reality、拡張現実)技術による表現を誰もが一度は目にしたことがあるだろう。その仮想物体に触りたいという衝動に駆られることもしばしばだ。しかしそれはこれまで叶わなかった。

 その想いを実現しそうな技術が空中超音波触覚インタフェースだ。と言ってもそれほどしっかりした固体形状を感じさせてくれるわけではない。しかし、本当はそこにはない空中に浮かぶアイコン映像を押すと、指に押した感覚が伝わる程度には触感を生み出せる。

 その技術を開発したのは東京大学大学院新領域創成科学研究科の篠田裕之教授のグループだ。篠田教授らはこれまでに超音波を利用した触覚表現技術を幾つも形にしてきた。例えば、2014年にデモを披露した「空中触覚タッチパネル」(図1)。これは中空のボックスの中に浮かぶアイコンをタッチすると、指にパネルを押した感触を生むシステムだ。

空中触覚タッチパネル 図1 空中触覚タッチパネル(出典:東京大学 篠田・牧野研究室)

 例えば、手術室や食品加工現場などで、汚れた手で何かに触れることを避けたい場合に応用することができそうだ。また、キー入力を使って開閉するドアロックに使えば、指紋を残さずにセキュリティを高めることもできる。

 空中に光学的な仕組みで立体映像を作り出す技術は既にあり、映像センサーを用いて指の動きなどを感知して同様に入力インタフェースとして使う試みもあるが、指や手は何の感触もなく立体映像をすり抜けてしまい、操作性に課題がある。そこに触感をプラスすることで、確かに操作を行った感覚を得ることができる。またアイコンのあるところとないところで触感を変えれば、正確な操作をガイドすることも可能だ。

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