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パーソナル情報管理の新手法「分散PDS」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)

» 2015年10月21日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

分散PDSのメリットは?

 こうした仕組みによれば、次のようなメリットが期待できる。

他者に利用させるパーソナルデータの種類や範囲を自分で決められる

 パーソナルデータの管理主体がユーザー本人になるため、何を開示するかは自分の判断で行い、いつでも変更できることになる。事業者の恣意的な利用を防ぐのに効果がある。

自分のデータを自分で利用できる、自分に有益な情報の提供が期待できる

 本人自身は無論のこと、家族や医療関係者、親しいグループなどにパーソナルデータの一部を自発的に開示することで生活上の支援に役立てたり、交流を深めたりすることができる。

 また、例えば楽天やアマゾンなどの複数のショップでの買い物情報(まず事業者同士で共有されることはない)を自分でまとめて開示すれば、各ショップから「その商品はもっと安く売っています」とか「在庫切れの商品はウチならあります」などと有益な情報をもらえる可能性がある。

 医療機関を幾つも利用することはよくあるが、医療記録をまとめて各機関に開示すれば、ミスなく効率的な医療連携ができ、たとえ病院を変わっても、医療サービスを一貫性を持って継続することができる。

 事業者にとってもこれは有益な仕組みだ。言い換えれば「自社由来のデータ以外に他社由来のデータも利用可能になる」ということで、より幅広い個人関連の情報を利用することで、個人に密着したレコメンドやパーソナルマーケティングが提供しやすくなる。

情報の大量漏えいが防げる

 事業者側にとっては情報漏えいリスクが激減する。いったんは社内システムに持ってきたパーソナルデータも、サービス提供や分析のための処理が終わり次第に削除すればよい。そもそも情報がないのだから漏えいのしようもないというわけだ。

 なお、通信経路が盗聴されてデータが窃取される可能性はある。暗号化データを解読すれば情報が漏れるとはいえ、解読には相応の時間とコストがかかる。そこまでして攻撃者が得る情報はたった1人分。コスト効果に見合わない攻撃は、よほど特殊なケースでない限り行われないと考えることができる。

情報漏えい防止対策コストや情報保管コストが削減できる

 大規模データの保管や保護のためにこれまで利用されてきた専用システムが必要なくなる可能性がある。ユーザー側にはPLR対応アプリが動く端末があればよく、企業側にはクラウドストレージにアクセスしてデータを復号し、サービスに必要なデータを渡す機能があればよい。

 従来のように数百万〜数千万円といった構築費用がかかるシステムは必要なくなる。個人が管理するデータに責任を負う必要はないし、顧客の連絡先や契約書やその他法律等で定められたデータだけを保管すればよいので低コストかつ低リスクなシステムになる。

パーソナルデータの取得が容易になる

 特に医療データに関しては現在、医療機関が集中管理するため、他の医療機関やITベンダーがそこにアクセスすることができない。分散PDSの場合は個人が医療情報も管理することになり、他の医療機関やITベンダーが個人から情報を取得できる。このように、管理主体が個人になることにより、今まで事業者内部に埋もれていたパーソナルデータが活用できる可能性がある。

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