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» 2015年08月19日 10時00分 公開

IPネットワークではもう限界、「情報指向ネットワーク」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]
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実証実験の結果と今後

 DCNの実証実験は、NICTが持つ研究開発用の大規模なネットワークテストベッド「JGN-X」上で行われた。DCNノードは東京2カ所(大手町・白山)、仙台、大阪、福岡、北陸、名古屋の7カ所に置かれ、ノード間を移動する端末6000台、データID 3000個(センサーデータ1KB)、移動頻度は1分ごととして、プル型通信とプッシュ型通信を同時に実行した。

 その結果、大手町に設置したルートノードへのトラフィックは激減し、従来の名前解決型に比べて90%の削減を達成、全ノードの合計でも34%削減が実現したという。この実験を通して、経路最適化によるルートノードへの負荷集中を防ぎながら、全体トラフィックを削減していけることが証明できた。日立製作所では、2015年度中には端末数を8000台に増やし、10Gbps以上のデータをネットワークに流すことを予定する。

 この技術は、2020年の東京オリンピックなどのビッグイベントでの人の流れや交通の把握などへの応用、あるいは災害時の対応状況の把握など、自動車情報の利用以外の応用用途が数々考えられよう。無線通信インフラのキャパシティーも問題になるが、無線LANや携帯網以外の無線通信インフラを利用することも想定して研究開発が進められている。なお、現在のところは一般的なIPネットワークにオーバレイする形の実証が行われているが、いずれは新しいプロトコルで広域に広がるネットワークが形づくられることになろう。

関連するキーワード

データID

 複数のデータの中から特定のデータを一意に識別するための識別符号。例えばセンサーのデータや映像のコンテンツなどに個別に付与される「名前」のこと。上述の図中のように「a/b1/c1」のようにプレフィックスを付けて階層化したデータIDと、プレフィックスがない「フラットID」を用いる方式がある。

 経路情報の集約のためにはプレフィックスによって分別して分散管理するのが効率的だ。ただしいずれにしろデータIDが重複しないようにしなければならならないため、IDの付け方は課題として議論されている。

「情報指向ネットワーク」との関連は?

 IPネットワークでのURLのように場所に依存して場所を指定するのではなく、データそのものにデータIDを付けることにより、データそのものを指定してリクエストできるのが情報指向ネットワークの特徴だ。経路情報を中継ノードで保持する方法や、コンテンツのキャッシングの仕方が従来のIPネットワークと違い、デバイスがダイナミックに移動する環境でも高速にデータアクセスできるところが大きな違いの1つだ。

CCN、NetInf

  CCNは、Content-centric Networkingの略で、米パロアルト研究所で提唱された情報指向ネットワークの一形態。名前ルーティング型の代表例だ。上述のデータIDと同じものをコンテンツIDと呼び、コンテンツIDでコンテンツを入手できるというコンセプトで作られている。

 NetInf(Network Information)は、欧州で開発された情報指向ネットワークの1つ。こちらは名前解決型の代表例だ。

「情報指向ネットワーク」との関連は?

 どちらもデータに直接アクセスするための手法であり、本文で解説したような違いがある。DCNは、この両方式の良さを取り入れながら、それぞれのスケーラビリティ上の課題を解決する技術として研究開発された。それぞれが目指すところは既存ネットワークの帯域逼迫(ひっぱく)や遅延の増加の解決という点では一致しており、全てが情報指向ネットワーク(ICN)という枠組みに収まる。

プル型、プッシュ型、パブリッシュサブスクライブ型

 情報の送受信の仕方の類型。プル型は、サーバなど情報を持つ機器に対して欲しい情報をリクエストして「取ってくる」形の送受信。プッシュ型は特定情報が欲しいと登録した端末に対してサーバなどが情報を「送りつける」形。パブリッシュサブスクライブ型は、情報を発信する機器(Publisher)が、情報が欲しいと登録している機器(Subscriber)に対して情報を送る形だ。

「情報指向ネットワーク」との関連は?

 モバイルデバイス、移動体通信を前提にすると、情報リソースが固定される場合のプル型はよいが、端末が広範囲に移動する場合のプッシュ型やパブリッシュサブスクライブ型は従来のネットワークでは難しい。本文で紹介しているDCNでは、経路情報の中継ノードへの集約や、最適化経路の利用、データのキャッシングなどにより、その課題を解消する。

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