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何ができる? これから始めるBeacon初級講座IT導入完全ガイド(2/5 ページ)

» 2015年07月06日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

Beaconが注目された背景

 もともと屋内の位置測位には、Wi-Fiを活用した複数の技術があるが、位置測位やプッシュ配信の精度の低さから実際の現場利用は難しいという課題があった。そこで、出力が調整可能なBluetoothを利用して位置測定する技術が注目された。しかし、Bluetoothでは電力消費が大きいこともあり、ビーコン信号を出す端末にAC供給が必要になるなど設置したまま長期間で運用するには厳しい状況だった。

 そんな中で、2010年7月にBluetooth 4.0規格の一部としてBluetooth Low Energy(BLE)が策定され、低電力で通信が可能なものが登場。このBLEによってボタン電池で長寿命なBeacon端末が市販され、このBeacon端末からのビーコン信号をスマートフォンで受信して、位置測位に使うという動きが大きな潮流となっていったのだ。

 また、Appleが「iBeacon」を新たに規格化したことも、普及に大きく弾みをつけた出来事として忘れてはならない。iBeaconはBeaconを活用するためのiOSに最適化されたフレームワークであり、日本ではiPhoneユーザーが非常に多いことがBeacon市場を大きく動かす一因となっている。ちなみに、iBeaconにおける通信部分はBLEを使っており、Beacon端末との通信は基本的にBLEが使われている。Appleのデバイスと通信するときにiBeaconのフレームワークが活躍することになるわけだ。

Wi-Fiを使った位置情報サービスの課題 図3 Wi-Fiを使った位置情報サービスの課題(出典:アルバネットワークス)

活用方法は「屋内位置測位」「プッシュ配信」

 Beaconの活用用途としては、主に2つのものが考えられる。1つが屋内における高精度な位置測位、そしてもう1つが情報のプッシュ配信だ。

 屋内での位置測位をビジネスに活用する例は、大規模なショッピングモールで位置を特定して道案内をするといった活用をはじめ、工場や倉庫など大きな施設内の各所にBeacon端末を設置し、スマートフォンのアプリでその情報を受信することで最適な動線を割り出す動態管理などに利用される。

 情報のプッシュ配信は、美術館や公共施設の展示物の前にBeacon端末を設置し、利用者が近づくと所持しているスマートフォンにその情報を通知するといった用途だ。もちろん、店舗でクーポンを発行したりなどOnline to Offline(O2O)の仕組みを補完する技術としても期待されている。

 他の使い方としては、オフィスでの活用例として、エントランスにBeacon端末を設置し、従業員が出社すると自動的に出勤時間を打刻するといった勤怠管理の仕組みに応用されている例がある。また、自治体が慢性的な交通渋滞を解消するため、若者のバス利用を促進するためにバス内に音波Beacon端末を設置して公共交通機関の利用を促すといった沖縄の実証試験も具体的な用途例になるだろう。

 最近では、いつも買い置きしてある特定の商品を発注する際に、自宅に設置されたBeacon端末のボタンを押すとスマートフォンのアプリを経由して自動的にショッピングサイトに発注情報が送られ、自動注文できるといった仕組みも登場し始めている。アイデア次第で活用用途はさらに広がるはずだ。

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