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ウェアラブルデバイスのビジネス活用に未来はあるのか?すご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)

» 2015年06月18日 10時00分 公開
[亀津敦野村総合研究所]
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ウェアラブルデバイスの制約と進化の方向性

 ウェアラブルデバイスはさまざまな領域での応用が期待されているが、登場して間もないこともあり、技術的な発展段階や製品としての成熟段階はまだ黎明期の段階だ。とりわけ、非常に小型であるが故の制約(バッテリーの持続時間やCPU性能の制約、限られた入出力インタフェースなど)が存在する。

 技術的進化の大きな要素はインタフェースの改善である。特に、音声認識、画像認識の技術の発展が、ウェアラブルデバイスのUI改善に大きく貢献すると期待されている。ウェアラブルデバイスの多くは従来の端末に比べて非常に小さく、ほとんど最小限の入出力の手段しか持たず、端末を操作するためのコマンドを伝えたり、ユーザーがおかれた状況を伝えたりするための入力手段には大きな制約がある。

 スマートフォンのようなサイズの液晶画面を通じて文字を入力したり、情報を大きく表示したりする、ということは望めない。そのため、ボタン操作やキータッチに変わってユーザーの意図を端末に理解させるための新たな手段が必要になる。そこで重要になるのが音声認識技術である。

 ウェアラブルデバイスと音声認識技術の組み合わせの典型例は、Google Glassの音声認識機能だ。「Ok、Glass」と声に出してGlassにコマンドを話しかけると、アプリケーションを動かしたり、インターネットでしゃべった言葉を検索したり、さらにはユーザーの会話を聞き取って翻訳したりすることができる。

 ユーザーインタフェースの進化のもう1つの方向性は画像認識である。スマートグラスはカメラを搭載している製品が多く、ユーザーが見ている物体や周囲の環境を認識するためにカメラの画像を利用することが可能である。現状では、スマートフォンと同様、カメラでQRコードなどのマーカを読み取って情報を表示したりコマンドを実行する、という段階にとどまっているが、将来的にはクラウドと連動してマーカではなく形や色などから物体そのものが何なのか、周囲がどのような状況なのかを識別する画像認識が利用できるようになるだろう。

スマートフォンの“おまけ”から踏み出せるか

 現状では、ウェラブルデバイスは単体ではインターネットにつながらない製品がほとんどであり、Bluetoothで接続されたスマートフォンのネットワーク経由でクラウドとの連動をせざるを得ないため、どうしてもスマートフォンとセットで使うという制約がある。

 スマートフォンに加えて高価なウェアラブルデバイスを購入するユーザーは初期段階では限られており、普及するまでには時間がかかると見た方がいいだろう。コンシューマ向けには、現状ではどうしてもアーリーアダプターに限られており、「スマートフォンの便利なおまけ」という位置付けから抜け切れていない感がある。業務用途での利用に際しても、ウェアラブルデバイスに加えてスマートフォンを持たなくてはならないことがコスト上の制約になることがある。

 しかし、ウェアラブルデバイスが単独で活躍する方向への進化の萌芽も見え始めている。2014年末から、Samsungや米国のベンチャー企業がSIMカードを入れて単体で通信が可能なスマートウォッチの発売を始めており、スマートフォンなしでいつでもどこでもスマートウォッチだけで情報を取得したり通話したりすることができる製品が登場している。日本ではBiglobeがSIMカードを搭載可能なスマートウォッチの開発を発表している。

 さらに、2015年の4月に入り、GoogleのAndroid Wearが単体でのWi-Fi接続機能の追加を発表し、9月にはApple WatchがiPhoneなしでWi-Fiに接続可能になるとの発表があった。これらの機能が実現すれば、例えば業務用途では工場構内に張り巡らされたWi-Fiからダイレクトに業務指示を送ったり、家庭においては家電や照明をホームネットワーク経由でをスマートウォッチからコントロールしたりということが可能になる。

 つまり、スマホのおまけから、IoTのエコシステムの一員へと立ち位置が変わることになる。そうなれば、ウェアラブルデバイスが活躍するシーンがより拡大することになろう。

 まだ始まったばかりともいえるウェアラブルデバイス市場だが、フィットネスデバイスから業務用途での利用を越えて、さらにその先までの発展段階が見えている分野である。デバイスとしての比較や目先の業務用途を考えるだけでなく、IoTとの連動も踏まえて広い視野で今後の利用事例の広がりや技術の発展を見極めたいものである。

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