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» 2015年04月15日 10時00分 公開

5分で分かる最新キーワード解説:タンパク質でデジタル信号を処理する「タンパク質光スイッチ」とは? (1/4)

遠赤色光を利用して光変換と蛍発生を行うタンパク質を応用し、研究が進む「タンパク質光スイッチ」の全貌を解説する。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 今回のテーマは「タンパク質光スイッチ」だ。光によって状態を変える有機高分子材料が次世代超高速ネットワーク実現への1つのカギと注目される中、生化学分野の先端研究では新しく遠赤色光を利用して光変換と蛍光発生を行うタンパク質が見つかった。生体内の細胞状態の可視化はもちろん、エタノールや油脂の生産にも応用可能というタンパク質の新機能を紹介しよう。

「タンパク質光スイッチ」って何?

 「光スイッチング」は、光を電気信号に変換せずに行き先(経路)を変える次世代超高速ネットワーク実現のカギとなる注目技術だ。光スイッチングを行うためのデバイスに必要なのが、光に応答してある状態から別の状態に変化し、また光によって元の状態に戻る(可逆反応)物質だ。

 このような特性を持つものが「光スイッチング材料」と呼ばれる。物質に関する研究が各方面で進められているが、同じ特性に生物科学の領域からの目的が異なるアプローチがなされている。光による可逆的な状態変化(=光スイッチング)を、バクテリアなど生物の特性研究から実現するのが「タンパク質光スイッチ」だ。

 まずはタンパク質が「光スイッチング=光変換」するというのはどういうことか、写真で見てみよう。図1の左上は今回新発見されたタンパク質を液体に混ぜて小さなカプセルに封入したものだ。緑色に見えるのが分かるだろう。

 それに赤い光を中央のように当ててみる。すると、カプセル内は右上のようにピンク色に変化する。そしてこの変化はそれ以上に進まず、戻ることもない。ここに今度は左下のように緑色の光を当ててみる。すると左上と同じ緑色に戻る。

タンパク質の光スイッチングの例 図1 タンパク質の光スイッチングの例(出典:静岡大学 成川 礼氏)

 光の作用でタンパク質は緑色からピンク色にスイッチし、また別の波長の光を当てることでピンク色から緑色に戻る。可逆的な反応をしているわけだ。目で見て分かるこの変化は当然機械的にも検知できる。それぞれの状態を「0」「1」に対応させれば情報処理への応用がもちろん可能だ。ただし、反応速度はミリ秒単位なので高速ルーティングに応用するにはさらなる研究が必要だろう。

 また、タンパク質であるため、常温で長時間放置すると変質することが避けられない。数時間程度なら常温で放置したり持ち歩いたりすることもできるが、長期間変質させないためにはマイナス20度での保管が必要だという。

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