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最新LANスイッチ事情、枯れた技術と思うなかれIT導入完全ガイド(2/4 ページ)

» 2015年03月30日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

LANスイッチの提供形態

 LANスイッチは、10Mbpsの速度を提供する「10BASE-T」から100Mbpsに対応した「100BASE-TX」、1Gbpsに対応した「1000BASE-CX」や「1000BASE-T」、10Gbpsに対応した「10GBASE-T」など幅広いLANケーブルに対応する。光ファイバーを利用するためのトランシーバ「SFP(Small Form Factor Pluggable)」を接続することでさらに高速化した通信が実現できる。

 実際のLANスイッチは、BOX型のタイプからシャーシ型のタイプ、ブレードサーバ内に格納されるブレード型までその提供形態は多岐にわたり、用途に応じて選択することが可能だ。

 最近では、BOX型を多段接続(スタック接続)し、複数台のLANスイッチを巨大な仮想スイッチに見立てることが可能なものが増えた。スタック接続の際のデータプレーン処理は480Gbpsと高速で、シャーシ内のデータプレーン処理とそん色ないレベルにまで達した。なお、ラックに格納されるシャーシ型は企業のコアスイッチとして幅広く利用される。

Apresia13200Cisco Catalyst 3580 図1-1 BOX型「Apresia13200」(出典:日立金属)、図1-2 シャーシ型「Cisco Catalyst 3580」(出典:シスコシステムズ)

驚きの製品寿命90年スイッチのからくり

 最近では、MTBF(平均故障間隔)が79万3000時間という脅威の製品寿命を持つスイッチが登場した。なぜそこまで長寿命なのか。その秘密は電子機器の寿命に大きく影響する電解コンデンサにある。

 電解コンデンサは、静電容量を増すために電解液が用いられるのが一般的だが、年月を経ることで外部に漏れ出てしまう構造になっており、長く使うと十分に性能が発揮できなくなる。この電解コンデンサを液体のものからジェル状の高分子アルミ固体電解コンデンサに変更したことで、およそ90年という脅威の製品寿命を成し遂げたのだ。90年間という長寿命のスイッチ、市場にどう受け入れられていくのかは今後注目したい。

長寿命スイッチで利用されるコンデンサ 図2 長寿命スイッチで利用されるコンデンサ(出典:エレコム)

既存ケーブルでの高速化に挑む動き

 企業ネットワークの中でも、フロアスイッチから机の周辺に配置するエッジスイッチまでのケーブルは、恐らく扱いやすいUTPケーブルを用いた1000BASE-Tが一般的だろう。1000BASE-Tの伝送速度は1Gbpsで、有線ネットワークの伝送速度としては十分なものだ。

 最近では、PCとLANスイッチとの間の接続は無線LANを利用するケースが増えた。そこで必要になるのが、有線LANのさらなる高速化だ。無線LANは現在IEEE 802.11acが最新規格で、現在市販されるWave1で最大伝送速度が1.3Gbpsとなり、2015年登場予定のWave2では6.9Gbpsが無線空間でやりとりされることになる。

 アクセスポイントから先のLANスイッチまでが1Gbpsとなると、その部分がボトルネックになりかねない。しかし、10Gbps対応に配線し直そうとすると光ファイバーを利用することになる。配線工事にも高度な技術が必要になり、どうしても多額のコストがかかってしまう。

 そこで新たに登場したのが、既存のUTPケーブルのまま2.5Gbps、5Gbpsの伝送速度が実現できる「NBASE-T/mGig」と呼ばれる規格だ。mGigはMultiple Gigabit Ethernetの略で、NBASE-Tはスイッチベンダーやチップベンダーが集まって現在規格化が進められているもの。有線部分がボトルネックにならないような新たな規格策定が進められており、いずれは国際標準化へ向けた動きを活発化する予定だ。

NBASE-T/mGig 図3 NBASE-T/mGigの概要(出典:シスコシステムズ)

 ネットワークの高速化は、特にこれから4K動画などが広く普及することが予想され、1Gbpsだけではとても足りなくなることは間違いない。さらなる高速化技術が求められることだろう。なお、スイッチベンダーの中には、独自の符号化技術を用いて対向に置かれたLANスイッチ同士の通信を既存のものよりも高速化する技術を実装するところもある。

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