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» 2014年12月17日 10時00分 公開

CO2排出ゼロの新エネルギー「アンモニア発電」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]
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これからのアンモニアの役割とは?

 アンモニア発電は、内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」が2014年に創設した「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」で重点課題とされた「エネルギーキャリア」研究開発計画の一部として推進されている研究分野だ。2013年から科学技術振興機構が実施していた「戦略的低炭素化技術開発(ALCA)」プロジェクトの同研究領域がSIPに引き継がれている。

 SIPの中でも、「エネルギーキャリア」は化石燃料や原子力に代わり、水素を活用する新しいエネルギーインフラを構築しようという遠大な未来図を掲げた野心的な試みだ。水素を利用する燃料電池や水素発電の低コストで高効率な実現を図っており、将来的には水素エネルギーを基盤にする「水素社会」の構築を見込み、東京オリンピックがある2020年までに一定の低コストな水素利用実証を図り、さらに2030年までに天然ガス発電と同等のコストでの水素発電を目指す。

 このプロジェクトのポイントは、扱いにくい水素をどのように貯蔵し、運搬するかと、水素利用をどう低コスト化するかだ。アンモニアは、このどちらの課題にも答えられる可能性を持つ。1つの窒素分子に3つの水素分子が結び付くアンモニアは、多くの水素を比較的安全に貯蔵し、運搬できるエネルギーキャリアでもある。

 アンモニアの他には、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサンなど)がエネルギーキャリアとして有力な選択肢だが、こちらはまだ製造や利用の基盤ができていない。また、水素を液化して貯蔵し、運搬する選択肢もあるが、こちらは爆発性に配慮した取り扱いやマイナス253度の超低温での貯蔵や運搬といった技術的困難および利用ガイドラインの未整備が問題だ。

 SIPではこれら課題をクリアする研究が行われるので、やがては解決すると思われるが、アンモニアはそれよりも早くエネルギーキャリアとしての働きをしてくれそうだ。アンモニアにも毒性があり、悪臭、可燃性などもある劇物ではあるが、既に合成、貯蔵、運搬のインフラがあり、取り扱いのノウハウも蓄積されていることが大きな長所だ。

 なお、アンモニアを直接燃料として使う発電技術には、冒頭に記したように熱触媒接触分解反応と燃料電池を組み合わせた発電技術「アンモニア燃料電池発電」もある。こちらもSIPの研究課題とされ、アンモニア分解オートサーマル反応器を利用したアンモニアSOFC(固体酸化物型燃料電池)の設計試作、運転実証、システム最適化を目指した研究が進む。こちらも比較的早期の実現が期待される。

 エネルギーキャリアとしても、直接的、間接的な発電のための燃料としても、ますます重要性を増すアンモニアのこれからに注目したい。

関連するキーワード

SIP

 内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議」が、府省・分野の枠を超えて予算を配分し、基礎研究から実用化、事業化までを見据え、制度改革を含めた取り組みを推進するプロジェクト。平成26年度の当初予算は500億円。「エネルギーキャリア」の他に「革新的燃焼技術」や「次世代パワーエレクトロニクス」など10の課題に20〜62億円の予算が割り振られた。

「アンモニア発電」との関連は?

 SIPの10の課題のうちの1つ「エネルギーキャリア」の中の研究開発計画の一部として「アンモニアを用いた高効率・低コストエネルギーキャリア製造・利用技術」が盛り込まれた。アンモニア発電はテーマの1つに挙げられた。エネルギーキャリア領域には当初予算約33億円が分配された。

アンモニア

 常温で加圧すると簡単に液体になる性質をもつ気体。動物の体内では有害なので尿として排出されるので、尿の臭いが「アンモニア臭」といわれることが多いが、高純度なアンモニアははるかに刺激臭が強く、吸引すると健康に害を及ぼす。

 可燃性があり、水溶液は塩基性。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質であり、毒物および劇物取締法においては「劇物」とされる。燃焼するとNOxを生じる。一方、肥料や工業用の材料として広く利用され、製造や貯蔵、運搬、取り扱いについては注意は必要なものの、安全性を確保できるインフラやノウハウが整っている。

「アンモニア発電」との関連は?

 アンモニアは化学組成に炭素を含まないので燃焼してもCO2を発生しない。そのかわりNOxを排出するが、触媒によって無害化することが可能だ。また燃料電池の燃料として利用する場合は、窒素を水しか排出しない。

エネルギーキャリア

 エネルギーを運ぶものという意味だが、特に水素を貯蔵し、運搬するための材料のことを指すことが多い。アンモニアは窒素と水素からできており、多くの水素を液化アンモニアの形でコンパクトに貯蔵し、運搬できる典型的なエネルギーキャリアだ。同じように、有機ハイドライドは水素と有機分子が容易に結合し、解離できる物質で、こちらもエネルギーキャリアとして重要視される。

「アンモニア発電」との関連は?

 SIPの課題の1つである「エネルギーキャリア」研究開発計画の中の一部として位置付けられる。アンモニアはエネルギーキャリアであると同時に、そのものを燃焼させたり、触媒と反応させることにより、直接的あるいは間接的に発電に役立てられる。

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