まず、当然のことながらフラッシュストレージを導入する目的を確認したい。フラッシュストレージを導入することで、大量のデータを扱う企業においてはシステムの速度向上が見込まれる。
また、販売業などでも社内で閲覧する商品DBをフラッシュストレージにして高速化することで、ビジネスのスピードが向上することがある。
開発の現場において、DBのレスポンスが良好になることでエンジニアにとって開発環境が良好になり、生産性が向上するということもある。映像編集の現場などでも、大きなデータのやりとりが快適になることで、作業時間の短縮が期待できる。
これらのように、必ずしも外部サービスにDBを活用している企業でなくても、フラッシュストレージ導入のメリットがあることは少なくない。まずは自社において、ストレージの移行が今後の業務改善に結び付くかどうかを検討したい。
HDDがボトルネックとなり、DBの処理向上のためサーバを増強したりHDDを増設したりして分散処理に励んだためにシステムの運用コストがかさんでいるケースは少なくない。運用を見直すことで、コストを大幅に減少させることが可能だ。
もちろんフラッシュストレージの初期導入費用は必要だし、ストレージアレイだけではなくシステム全体の見直しにも費用はかかる。それでもコスト削減の効果が大きい場合は、導入に踏み切るべきだろう。
なお、ベンダーやSIerによっては、現在のシステムとフラッシュストレージ導入後のシステムとをシミュレーションまたは実機検討システムで比較し、システムの性能向上やコスト削減を提示するので、まずは相談することをお薦めする。
フラッシュストレージの導入を決めたら、製品形態を選択する。Webサービスや単一DBのトランザクション処理の速度を改善したいなら、サーバに内蔵するサーバサイドフラッシュの導入が適している。
基幹システム、ビッグデータの処理のようにDBのIOPSを十分に確保したい場合や、仮想化の共有ストレージとしてフラッシュストレージを利用する場合などには、外部ストレージとして「オールフラッシュアレイ」を選択しよう。「ハイブリッドアレイ」の場合はオールフラッシュアレイよりも低価格でフラッシュストレージのメリットを享受できる特徴もある。
フラッシュストレージは、HDDと比較すればスペック差は明らかだが、フラッシュストレージ製品同士で性能差を比較するのは、製品形態の違いもあり難しいところだ。単純にストレージの容量を価格で割っただけでは判断しにくい。
1つの指針となるのがIOPSの数値だ。数値が高いほどストレージアレイのランダムアクセスが高速であることを示す。ただ、あくまでストレージの性能評価であって、サーバやスイッチのデータ転送性能の違いによってストレージの性能に差異が出るので注意が必要だ。
また、フラッシュストレージの利用目的として、データ読み出しが多い場合は(WebサービスのDB、オンラインゲームのDBとして利用など)、リード機能に優れた製品を、書き込みが多い場合は(オンラインメディアや動画配信サイトのストレージなど)、ライト機能に優れた製品を選ぶというような選択方法も可能だ。
フラッシュメモリには「write-cliff(ライトクリフ)」と呼ばれる現象が生じることがある。前述した通り、フラッシュメモリではデータの上書きはできず、消去→書き込みという書き換え処理が必要となる。
フラッシュストレージの導入直後は、フラッシュメモリがまっさらな状態なので、書き込みのみの操作のためIOPS性能が高い。ところが、フラッシュストレージにデータがたまると、いずれ書き換え処理が行われるようになる。このとき、製品によっては大きくIOPS性能を落とすことがある。
この現象は、グラフで見るとその落ち込みがガケのようであることから「ライトクリフ」と呼ばれる。フラッシュストレージを導入して長期間運用するのであれば、このガケ後のIOPS性能が本来の性能ということになる。コントローラーの性能によってライトクリフがほとんど起きない製品もある。導入時にはカタログスペックとともにこの部分も確認しておきたい。
運用や管理は、一般的なストレージアレイと大きく違いはない。信頼性や堅牢性は、SSDを採用したフラッシュストレージよりも独自設計のフラッシュモジュールを内蔵した製品の方に軍配が上がる。
障害発生時にはHDDと同様に処理しなければならないSSDに対して、独自設計のフラッシュモジュールでは、障害が発生したモジュールのみを切り分けたり、チップレベルでのRAIDが実現されていたりして、より信頼性と堅牢性が確保している。それらを確認して製品を選択したい。
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