メディア

急成長するエンタープライズ向け「フラッシュストレージ」最新動向IT導入完全ガイド(3/4 ページ)

» 2014年10月27日 10時00分 公開
[二瓶 朗グラムワークス]

フラッシュストレージの特徴

 次に、フラッシュストレージの特徴についてHDDと比較しながらまとめていこう。

高いパフォーマンス

 HDDのような駆動する機械的な構造を搭載しないストレージは、データを読み書きするときに機械が動作する待ち時間が発生しない。純粋に電子回路上のみでデータの読み書きが可能だ。

 これによって、データの転送から書き込み(書き換え)までの応答時間(レイテンシ)のパフォーマンスが劇的に高速になる。HDDで数ミリ秒かかっていた処理が、数100マイクロ秒まで縮小される。これによって、IOPS(ストレージが1秒当たりに処理できるI/Oアクセスの数値)も大幅に向上する。

消費電力の低さと発熱の小ささ

 HDDのような駆動部分を持たないため、フラッシュストレージの消費電力は低く、動作による発熱量も小さくなる。さらに、衝撃などによる故障がほとんど起きないことも特徴となる。

記憶容量当たりのコストは高い

 HDDと比較すると、記憶容量当たりの機器価格は高くなる傾向にある。しかし、ここ数年の急速な普及によってフラッシュストレージの価格は徐々に下がり、コスト差も縮小しつつある。後述するが、ストレージアレイのみの価格で比較すればHDDの方がコスト安とはなるが、システムトータルで見ると最終的にはコストを下げられることも多い。

表2 表2(出典:マクニカネットワークス)

フラッシュストレージ導入のメリット

 フラッシュストレージを導入するメリットはどこにあるのか、解説していこう。

データベースのパフォーマンス改善

 Webサービスを運営する企業や大量の顧客データを扱う企業、ビッグデータを分析している企業などでは、データベース(DB)上で扱うデータ量が増加すると、HDDを追加してDBのデータ保存容量を増やすのが一般的だった。

 ところがデータ量が増えることにより、HDDのI/O速度がボトルネックになることがある。サーバの性能は確実に向上しているのに、システム性能が向上しない原因が、HDDストレージアレイの性能にあることが少なくないのだ。

 DBのストレージアレイとしてフラッシュストレージを導入することによって、DBとのデータのやりとりに生じるボトルネックを解消することが可能となり、システムのパフォーマンス改善につながる。また、バックアップやバッチ処理を行うような場合でもデータの書き込み時間を短縮できる。

 なお、ソフトウェア開発企業やクリエイティブ系の企業(各種デザインや動画編集)も、社内システムにフラッシュストレージを導入することで、クライアントとのデータのやりとりにストレスが少なくなり、開発作業やクリエイティブ作業が進むというメリットもある。

システムの最適化とコスト削減

 DBのストレージアレイにHDDを採用した場合、I/O速度のレスポンスを確保するためにサーバの台数とHDDの台数をともに増やし、分散処理する必要があった。するとデータ処理の高速化と引き替えに、当然ながらハードウェアの導入コストがかさむこととなる。また、OSやDBのライセンス数も必然的に多くなる。

 フラッシュストレージを採用してDBのパフォーマンスが改善されると、サーバ台数を減らし、ハードウェアのコストを下げられる。同時に、各種ライセンス数も減らせるので大幅なコスト減につながる。

 また、システム運用のための電力消費や冷却コストなどの削減の他、データセンターの占有ラック数を減らせる。

 ストレージアレイ単体での価格は、HDDストレージよりもフラッシュストレージの方が高価格になるのが一般的だが、これらのことを考えればフラッシュストレージを導入することでトータルコストを大きく下げられる。

【導入事例】8000万件のデータ読み出しが数秒に

 高級ホテルや旅館専門予約サイト「一休.com」や、レストラン予約サービス「一休.comレストラン」など多くのネットサービスを展開する一休は、基幹システムの見直しに当たって、システム全体の更改を決めた。

 ストレージにはオールフラッシュアレイ「Violin Memory」を採用した結果、バックアップのI/O性能が理論値で約100倍向上した。また、ネットワーク帯域も有効に利用できるようになり、従来数時間かかっていた処理が数十分で完了するようになった。

 Webアプリケーションはキャッシュなしで8000万件のデータ読み出しを実行したが数秒で結果が返ってくるほどレスポンスが向上した。バッチ処理も約8倍の高速化に成功。新システムは、旧システムに対して導入コストは増加したものの、信頼性と安定性が確保されると同時に、運用にかかる工数とコストが大幅に削減された。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。