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» 2014年08月21日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:今、あらためて問う「BRMS」の真価 (1/5)

ビジネスロジック内のルールを体系的に管理することで開発工数削減を実現するBRMS。誕生から15年、あらためて脚光を浴びる理由とは?

[津島靖彦,イルミナード]

アナリストプロフィール

津島靖彦

津島靖彦(Yasuhiko Tsushima):経営・ITコンサルティング イルミナード 代表

BRMSコンサルタントとして、保険、金融、製造業などでのBRMSのコンサルティングおよびソリューション開発に従事。国内メーカーにおいて各種エキスパートシステムの開発に携わったのち、海外の大学でのエキスパートシステムの研究、教育活動、各種システム開発、コンサルティング活動を経て現職。BRMSを用いた実際のシステム開発、コンサルティングの他、日本国内でのBRMSの普及に向けて関連分野を含めた調査研究なども行っている。


 システム開発のスピードアップはIT部門の永遠の課題だ。アジャイル開発をはじめとする短期システム構築手法がもてはやされる一方、近ごろでは「超」の字がついた「超短期構築」を目指す開発手法を模索する動きも盛んだ。

 その1つのアプローチとしてあらためて注目されるのが「BRMS」(Business Rule Management System)。ビジネスロジックに内在する「ルール」を体系的、系統的に管理することにより、開発工程、保守工程ともに大幅な時間短縮とコスト削減を実現しようという考え方とツールが、誕生から約15年を経て、国内でもついに大きな花を咲かせ始めている。

 今日的なシステム環境の中で新たな意義を持つようになったBRMSのあらましを、今こそ再確認しておこう。

BRMSとは何か

 BRMSという概念および初めてのツールが登場したのは1990年代後半のこと。1980年代から1990年代初頭にかけて注目を集めたIT技術の1つに人工知能(AI)がある。当時その研究から派生した「エキスパートシステム」は、ビジネスへの応用に期待が膨らんでいた。

 エキスパートシステムは、熟練した職人や特定分野の専門家が何らかの事象を前にしたときにどのように行動するかといったルールを探り、蓄積されたルールをベースに事象へのより適切な対応を推論するシステムのことだ。

 推論の結果を基にして、経験や知識が浅い人でも熟練工や専門家と同等のレベルで正しい意思決定が行えるものと期待され、AI研究から生まれた言語「Prolog」やルールベース言語でシステムに実装する試みが盛んに行われた。

 しかし、一部のシステムには実装されて現在でも地道に使われているものの、現実的には当時のビジネスの世界で主流だったCOBOLを利用したシステムを書き換えていくほどには普及しなかった。

 その一方で生まれたのがBRMSだ。これは、システム開発ツールとしてエキスパートシステムの原理や考え方を取り込む一方で、90年代半ばにデータ分析の理論的研究から生まれたビジネスルールの概念と合わさり、既存プログラムを書き換えるのではなく、その中にハードコーディングされているビジネスロジックを「ルール」として抜き出し、管理可能にするユニークな手法をとるものだった。

ビジネスロジックに含まれる「ルール」とは

 ルールとは、「顧客の購買額が◯円以上であれば次の購入時の販売価格は◯%割り引く」というようなものだ。それは「IF〜THEN〜」という条件式で表せる。例えば、保険の査定を行うといった多くのプロセスのフローを必要とする業務では膨大な数となる。

 プロセスのフローの中で、ある条件に対して複数の選択肢があり、そのどれかに決める「決定」を行う部分を「デシジョンポイント」というが、デシジョンポイント1つずつに、数十から数百程度のルールがあるのだ。

 ルールの総体がビジネスロジックというわけだ。ビジネス環境変化などに業務を合致させるためにロジックを変更しようと思えば、この膨大なルールの中の関連部分を見つけ出して改変しなければならない。

 多くのアプリケーションは、ルールをプログラム内部にハードコーディングしているため、変更すべき場所の発見と改変の仕方、さらに影響範囲を知るために、プログラムを解析しなければならなくなる。

 ごく小規模なシステムならいざ知らず、大規模で複雑なプログラムではビジネスロジックの変更を反映するのは簡単な仕事ではない。特に開発時の技術者が既に現場にいない場合、ドキュメントも十分にはそろっていない場合には、恐ろしく時間と手間がかかることになる。「ビジネスロジックのブラックボックス化」が進んでいるのだ。

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