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» 2014年04月17日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:グローバルソーシング、4つの成功条件 (1/4)

日本でも広がりつつあるオフショア開発だが、本来の目的に達しないケースも。そんなグローバルソーシング成否の分かれ目とは?

[足立祐子,ガートナー ジャパン]

アナリストプロフィール

足立祐子(Yuko Adachi):ガートナー ジャパン リサーチ部門 ソーシング バイス プレジデント

ガートナー ジャパンにおいて、ソーシングとITサービス分野の分析を担当。主にグローバルソーシングとITサービス全般に関する動向の分析、提言を行っている。国内格付け会社にて国内電機、電子機器製品メーカーの財務分析、格付けを担当した後、メーカー財務企画室を経て現職。シカゴ大学大学院 哲学・人文科学修士課程修了。


 2000年代前半の全般的な技術者不足を機に、日本でも「オフショア開発」への取り組みが広がってきたが、必ずしも成功するケースばかりではなく、目的の効果が得られないままに撤退する企業も見られた。

 一方でコスト削減、短工期化に成功し、十分な効果を実感して投資比率を高める企業も少なくない。インドをはじめ中国、東南アジア諸国などが政府レベルで積極的に海外からの受託を奨励している現在では、技術力の高い若い人材が増加中で、開発ばかりでなくシステム運用の委託やBPOを行う下地もできており、上手なグローバルソーシングを図れば大きなメリットが得られる可能性も高くなっている。

 今回は、グローバルソーシングの成功/失敗の分かれ目が何なのか、そしてその成功の条件について考えてみる。

成功か撤退か、2極化するグローバルソーシング

 日本から海外へのITアウトソーシングはかつて脚光を浴び、近年ではソフトウェア開発にとどまらずヘルプデスクをはじめとするシステム運用業務の一部の委託も進んで、「オフショア開発」ではなく「グローバルソーシング」と呼ばれるようになった。

 しかし、当初最大の期待が寄せられていた「コスト削減」目的は必ずしも簡単に達成できておらず、海外へのソーシングを中止する企業も増えてきた。現在のところ図1に見るように、グローバルソーシングを推進する企業は数を減らしている。ところがその一方、支出額を見ると上昇傾向が見られることに注目したい。これが意味しているのは、グローバルソーシングを継続している企業は投資比率をむしろ上げているという事実だ。

大企業におけるオフショア開発の利用率の推移 図1 大企業におけるオフショア開発の利用率の推移。2013年10月 ※年商1000億円以上の企業のみ対象、2013年5月調査(有効回答数 105)(出典:ガートナー ジャパン)

 つまり、日本企業の中でもグローバルソーシングに成功している企業は積極的に投資を増加させながら継続している半面、思うような結果が得られなかった企業は撤退している2極化の傾向が見てとれる。成功している企業とそうでない企業では何が違うのだろうか。

グローバルソーシングが魅力的な3つの理由

 日本企業が国内のリソースよりも海外に魅力を感じるのには3つの理由がある。

(1)ビジネス環境変化でアプリケーション開発のスピード化が必要に

 その1つはビジネス上の環境変化に伴う開発手法の変化だ。より早いサービス投入が求められる現在、アプリケーション開発のスピードがかつてよりも厳しく求められるようになっている。

 特にゲームやスマートデバイス用の開発にその傾向が顕著で、従来のように100%完璧なアプリケーションを膨大な時間をかけて開発するより、完成度が8割程度のベータ版を早期に開発、提供し、評価の上、改善、改良していくスパイラル開発手法が主流になってきた。

 こうした開発にはベータ版作成までの労働集約型の工期短縮が求められる。しかし現実には、技術者市場の流動性や技術者個人のスキルと経験、単価水準の低さなどさまざまな要因が影響し、こうしたリソースを日本で調達するのは現状では困難なことが多い。

(2)アジア諸国のネットワークインフラが整備され障壁が低減

 もう1つは、主なソーシング先となるアジアの国々のネットワークバックボーンが整備され、通信面でのデメリットが大きく改善、低減してきたことが挙げられる。

 グローバルソーシングにおいては、知的財産保護の観点からソースコードであっても基本的には国内に保管し、作業の都度ネットワークを介してアクセスして開発業務を委託するケースが多い。この場合、通信速度や品質は開発効率に大きな影響を及ぼす。また運用管理業務などビジネスプロセスの一部を海外に移す場合でも、国内からのリクエストにタイムラグなく応えられる通信環境が必要になる。さらに、作業の進捗(しんちょく)や品質の管理において国内の委託元と現場との意思疎通は極めて重要で、メールやWeb会議などによる日常的なコミュニケーションが求められる。

 こうしたポイントがネットワーク環境の整備により次々に解消されてきており、業務委託への障壁はかつてよりもずっと低くなっている。

(3)オープンソース系の技術力、英語能力が日本よりも高い

 3つ目の理由は、海外リソースのある意味での先進性だ。特にオープン系システム、オープンソース系のOSやミドルウェアを利用する開発については日本よりも高い技術力を持つ国が多く、効率的で品質のよい開発を行うことができる可能性が高い。

 また、英語を日常的に使う国も多いことから、英語圏への製品やサービスを提供する開発には都合がよい。グローバル展開に注力する日本企業の中には、初めから国内外での利用を想定したソーシャル・アプリケーションや世界統一アプリケーションの開発を試みるところも多い。こうした企業にとって、日本では調達できないリソースを海外に求めることは自然な流れといえる。

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