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» 2014年03月20日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:マイナンバー制度が企業に与えるインパクト (1/5)

2013年5月に成立した通称マイナンバー法。企業にどんな影響があるのか、その基礎知識とともにその対応について徹底解説する。

[八木晃二,野村総合研究所]

アナリストプロフィール

八木晃二(Koji Yagi):野村総合研究所 DI ソリューション事業部長、ビジネスインテリジェンス事業部長

1986年野村総合研究所入社。企業システムインフラに関するコンサルティングおよびソリューション開発に従事、ITソリューションコンサルティング部部長を経て米国現地法人であるNRIパシフィックの社長に就任。2005年に現DIソリューション事業部部長に就任、2008年にはOpenIDファウンデーション・ジャパンの代表理事に就任。デジタルアイデンティティーに関するソリューション企画、開発とともに、共通番号、国民ID 制度への提言活動を行う。『完全解説 共通番号制度』『マイナンバー法のすべて』などの著書も出版。


 2013年5月に成立したマイナンバー法(通称)により、国民一人一人に番号が付与されることになる。税と社会保障の公平性の実現をはじめ、行政コストの削減、手続きの簡素化などさまざまな恩恵をもたらすマイナンバー制度がいよいよ動き出すことになるが、新たな制度によって企業はどのような影響を受け、どんな備えをしておくべきなのだろうか。

 今回は、マイナンバー制度についての基本を整理しながら企業における影響度合いを考えていくことで、来るべきマイナンバー時代における情報システム部門の対応について詳しく見ていきたい。

マイナンバー制度導入の背景

  2013年5月、マイナンバー制度の根幹となる法律である「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(通称:番号法、またはマイナンバー法)が成立した。マイナンバー制度とは、国民一人一人に番号を付番し、その番号を納税、社会保障給付の手続に利用することで、国民の負担と給付を公平に、かつ効率的に行おうというものだ。

 今回成立したマインナンバー法以前から、国民一人一人に番号を付番する制度が何度も検討されてきたが、プライバシーに関する懸念などの反対により、実現するには至っていなかった。しかしながら、昨今の巨額の財政赤字問題、社会保障の不正受給問題、消えた年金問題などを受け、番号の必要性に対する国民理解の高まりが今回の法案成立につながることになった。

マイナンバー制度の骨子

 マイナンバー制度の第一の目的は、先にも書いた通り「国民の負担(税)と給付(社会保障)の公平化、効率化」だ。

 例えば、給与所得の扶養控除申告の際、東京と大阪に住む兄弟いずれもが、郷里の福岡に住む自分たちの母親を被扶養者として記載し、二人ともが扶養控除のメリットを受けようとしたとする。マイナンバーがない現状では、同一の人物を被扶養者として記載していないかを調べるためには、各市町村が管理している氏名、住所を基にデータを突き合わせる必要があり、多大な労力がかかってしまう。マイナンバーをキーに名寄せができるようになれば、労力を大幅に削減でき不正を効率的に発見・防止できることになるはずだ。

 また、マイナンバーが所得に関する情報(給与所得情報、金融所得情報等)にひも付いていれば、上記の例と同様に生活保護などの受給資格調査の精度、効率も向上し、不正受給の防止にもつながってくることになる。

 では、マイナンバー制度は実際にはどのように運用されるのだろうか。マイナンバー制度の根幹となるのは、「(1)付番」「(2)情報連携」「(3)本人確認」の3つの仕組みだ。

マイナンバー制度の3つの仕組み 図1 マイナンバー制度の3つの仕組み

(1)付番

 マイナンバー制度では、住民票を持つ国民(中長期在留者含む)一人一人に、基本的に生涯不変の12桁の番号を割り当てる。マイナンバーは、地方公共団体が共同して設置する地方公共団体情報システム機構が住民票コード(11桁)をもとに付番し、自治体はマイナンバーが記載された「通知カード」を国民に送付する。

 なお希望者は自治体への申請により、「通知カード」を「個人番号カード」に交換することができるようになる。個人番号カードは住民基本台帳カードの実質的な後継となるICカードで、顔写真付き身分証明書としての機能も備えている(通知カードの送付は2015年秋ごろ、個人番号カードへの交換は2016年1月以降となっている)。

(2)情報連携

 各担当省庁や自治体は、マイナンバーによりデータの名寄せをする必要がある。しかし、もしマイナンバーとそれにも付く情報(「特定個人情報」と呼ばれている)が定められた範囲を越えた不正な名寄せをされたり、漏えいにより第三者に名寄せされたりしてしまうと、重大なプライバシー侵害につながりかねない。

 そこで、それを防ぐ情報連携の仕組みとして「情報提供ネットワークシステム」という専用のシステム(マイナンバーを直接利用しない情報連携システム)を構築することが計画されている。また同システムによる情報連携の状況を、国民がインターネットを介して確認できる仕組みとして「マイ・ポータル」を構築する予定だ。

(3)本人確認

 付番の項で述べた通り、国民は税申告や社会保障申請の際にマイナンバーを申請先に知らせ(「告知」という)なければならない。その際、告知を受ける側は申請者が告知したマイナンバーが正しいことを確認するために「本人確認」を実施する必要がある。本人確認の方法として、通知カードと身分証明書(運転免許証等)など、あるいは個人番号カードを確認することになる予定だ。

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