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富士通株式会社

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放射線治療に欠かせない膨大なシミュレーション、時間短縮を実現した技術とは

がんの放射線治療で懸念される隣接臓器の被ばくを防ぐため、放射線ビームをがんに集中させる医療法が開発されている。ただ、この治療計画には数日ものコンピュータシミュレーションを要する。この計算時間の短縮を実現した技術とは?

要約

 がんの治療方法の1つである放射線治療では、がん細胞に対し、複数の方向から放射線ビームを照射し、効果的な治療を実現している。ただ、これには隣接する臓器も被ばくするという課題があった。そこで近年、隣接する重要臓器の位置関係に合わせてビームの強度を細かく調整する「強度変調型放射線治療」が開発され、がん細胞にのみ強い放射線を照射できるようになった。

 ただしこの治療計画には膨大なコンピュータシミュレーションが欠かせない。照射パターンは1方向につき、実に10の150乗という組み合わせがあり、照射角度の考慮も必要になる。従来のCPUではこの組み合わせの最適化のために数時間から数日を費やしてきた。この状況改善に向けてカナダのトロント大学と富士通研究所は量子現象に着想を得たデジタル回路により、一般的なコンピュータでは解けない組合せ最適化問題を瞬時に解くことができるデジタルアニーラを用いた共同研究を行っている。

 この技術なら所要時間をわずか数分間にまで短縮でき、従来は不可能だった多数の患者に強度変調型放射線治療を提供することへの期待が高まる。本項では医療研究で活用が進む最先技術について動画で紹介する。

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