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無料LINE WORKSはサイボウズLive代替グループウェアになる?

無料グループウェアとして人気の「サイボウズLive」のサービス終了が迫る。乗り換え先に名乗りを上げたLINE WORKSはグループウェア的機能のほとんどを無料で開放する。

» 2018年12月05日 11時00分 公開
[原田美穂キーマンズネット]

 2019年4月、無料グループウェアとして広く利用されてきた「サイボウズLive」のサービスが終了する。現在これを利用する企業は、期日までに何らかの乗り換え先を探さなければならない。

サービス終了を伝えるサイボウズのWebページ

無料グループウェア「LINE WORKS」はどこまで使える?

 そこでサイボウズLiveの乗り換え先に名乗りを上げたのがLINEだ。正確にはビジネス用LINE「LINE WORKS」を提供するワークスモバイルジャパンだ。

 無償通話アプリ、あるいはチャットツールと呼ばれるLINEがグループウェアの代用になるとは、すぐには理解しにくいが、実はLINE WORKSには、掲示板もノートもカレンダーも共有フォルダもある。またログ管理機能もあり、仕事で使うグループウェアとしての機能も兼ね備える。

 LINEでのコミュニケーションに慣れていれば、ITリテラシを問わずに利用できることから、店舗スタッフやフィールドワーカーを抱える企業のコミュニケーションツールに適する、というのがこのツールのポジショニングだ。

 11月26日に開催されたイベント「LINE SMB Conference」は、LINEおよびモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を展開するLINE Pay、仕事用のLINE「LINE WORKS」を提供するワークスモバイルジャパンの3社が、中小規模事業者向けのサービス強化を打ち出した。この中でも、本稿では無料グループウェアとしての強みを打ち出したLINE WORKSについて見ていく。

LINE WORKSとは?

ワークスモバイルジャパン社長の石黒 豊氏

 LINE WORKSは個人事業主やSOHOなどの小規模事業主の利用が多い一方で、大企業の働き方改革や業務効率化の一環として社内メールの代用やスケジュール共有、データ共有などの基盤として利用されることも少なくない。

 大企業でのニーズを裏付けるように、このイベントに先立つ2018年11月22日にはSAPのERP「SAP S/4HANA」との連携に正式に対応することも発表している。在庫引き当てや納期回答のような操作を、LINE WORKSのチャット機能を使って社外のスマートフォンからでも問い合わせられるようになる。

 イベント当日は、こうした同社の実績を踏まえつつ、中小企業の働き方改革支援も強化することが明らかになった。

 今回注目を集めたのは、LINE WORKSが無料で利用できるようになった点だ。もともと同社では期間限定で「永久無料キャンペーン」を実施していたが、これを定常メニューとして広く利用者の裾野を拡大するかたちだ。

無料版とビジネス版の違いは?

 LINE WORKSは従来日本を中心に利用者の裾野が広い無料通話アプリ「LINE」の「ビジネス版」として、チャットや音声通話機能などが注目されてきた経緯がある。ITリテラシにばらつきがある職場でも導入しやすく、メールよりも運用しやすいなどのチャットツールらしい利点が目立っていた。こうしたITプロフェッショナルではない潜在的顧客にとって「従来の30日間評価ライセンスは不十分であり、ハードルが高い」というのが期限を設けないフリープラン提供の意図だという。

 だが、今回注目されたのは、チャットツールとしての特徴というよりも総合的なグループウェアとしてどこまで使えるか、を示した点にある。下記はLINE WORKSが示す無償版と有償版の機能比較だ。ほとんどの機能が使えることが分かる。

無料版と有償版の違い

 「無料でも通話やスタンプの利用に制限はありません。動画や写真ももちろんやり取りできます。カレンダーや掲示板、アンケート機能や共有フォルダも利用できます。LINE WORKS契約者間、LINEユーザとのコミュニケーションにも制限はない」(ワークスモバイルジャパン社長の石黒 豊氏)

 無償でかなりの機能を利用できるが、有料プランと比較すると制限はある。例えば利用者数は100人まで、ストレージは5GBまでだ。だがグループチャットのチャネル数などに制限はない。また、企業での利用では注意したいユーザ管理やログ管理機能については無料版でも利用できる。

 なお、イベント当日は、9月から先行実施した無料キャンペーンの成果もあってか、2018年2月からの約9カ月間で導入企業が2万7千社と、2倍以上に急増したことも明らかになった。石黒氏は「中小企業の半数以上がグループウェアを使わずに事業運営を行っている」という資料を引き合いに出し、「こうした企業がLINE WORKSを知り、利用することで多くの成果を出している」と導入実績拡大の理由を説明する。

 具体的な事例として、3つの業種の成果が示された。石黒氏によると、ある印刷会社では月間30〜40時間の残業時間を削減、リフォーム会社では25%の受注増につながったという。また、介護関連の企業では待ち時間や確認時間が90%も削減できたとしている。いずれも、組織のコミュニケーション円滑化が働き方改革や生産性向上につながった好例だ。

実績を語る石黒氏

 2019年に施行される「働き方改革関連法」にからみ、従業員の残業時間に関する上限規制が厳格化する。小さな組織であってもより効率の良い働き方が求められる状況だ。コミュニケーションを円滑にしていかに仕事のロスを最小化するかを考える必要があるため、同社をはじめとするグループウェアやチャットツールベンダーにとっては市場拡大への期待が高く、市場に参入するライバルも多い。利用者からすると、なるべくコストをかけずに対策したいところもあり、こうした市場の活性化は歓迎すべきことだろう。

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