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0円で脱Excel、400台の“PC管理地獄”から抜け出した情シスの物語

たった3人で400台のPCを管理していた映像センター。Excelでの管理は煩雑で精度も高くない。この状況を0円で脱したという。果たしてどうやって?

» 2018年11月22日 08時00分 公開
[白谷輝英]

 自社のPCの数を把握できていない、どのPCにアプリケーションがインストールされているか分からない。こうした声が多くの企業で聞かれる。PCをはじめとするIT資産の管理は重要な業務だが、人員不足で対応できず、煩雑な管理をもて余している情シスも少なくない。

 東京に本社を置く映像センターもそうした課題を抱えていた。全社の400台のPCを3人で管理しなければならず、作業は難航していた。部門ごとに情報が分断され、集中管理のために活用していたExcel台帳とITツールは、それぞれ異なる情報を示していた。

たった3人で400台のPCをExcel管理

 しかし、同社はある方法によってこの問題を解消した。その“方法”は費用がかからず、同社がIT資産管理ツールに投じていた200万円を0円に抑えられたというから驚きだ。一体どのような方法なのか。

 「ソフトウェアベンダーからのライセンス調査依頼への対処が、簡単にできるようになった」「ウイルス感染の恐れがあるソフトウェアがどのPCにインストールされているか、即座に分かるようになった」など副次的な効果も得ている。

 映像センターは、映像や音響を使った空間プロデュースなどを主な事業とする企業だ。展示会などのイベントやアーティストのライブ、美術館、店舗など活動領域は幅広く、映像音響機材の提案や設置、オペレーションも担当する。映像システムや音響機器などのレンタルおよび販売の他、セミナールームや各種ホールの企画、設計、施工なども手掛ける。

 同社は、約350台のWindows PCとMacを運用している。だが、情報システム部門の担当者は3人だ。管理本部 情報システム部 情報システム課 課長の内田健次氏は「PCの管理は想像以上に大変だった」と振り返る。

映像センター 内田健次氏 映像センター 内田健次氏

 「以前は、各部門がそれぞれの判断でPCを導入あるいはレンタルしていました。その後、私たちに報告が寄せられる仕組みでしたが、時には連絡漏れが起き正確な情報を把握できていませんでした」(内田氏)

 当時は、「Microsoft Excel」の台帳とIT資産管理ツールを併用して、PCの台数やインベントリ情報を管理していた。しかし、両者で情報が食い違うケースも珍しくなかった。Excelの台帳には登録されているPCが、IT資産管理ツールには存在していないことも日常茶飯事だったのだ。

 事態をさらに深刻なものにしたのが、同社の特殊性だ。現場で働くメンバーは担当プロジェクトの状況に応じ、必要なアプリケーションをPCにインストールする。中には映像、画像制作ソフトやCADソフトといった高価なものもあるため、アプリケーションのライセンス管理には人一倍気を遣わなければならないが、「50台のPCがあれば、50通りのパターンがある」というバラバラなPC環境を完璧に把握できているとは言い難かった。

 「こうした状況もあり、『どのPCがどこにあり、きちんと利用されているのか』『各PCに、どんなアプリケーションが導入されているのか』を把握することが長年の課題でした。ツールを有効活用したいとは思っていましたが、当時使用していたIT資産管理ツールはリアルタイムに状況を把握できないなど、使い勝手の面で不満が大きかった。また、1台当たりの月額利用料は数百円でも、トータルの費用は年間200万円ほどに達します。コストに見合った効果が得られているのか、強い疑問を感じていました」(内田氏)

図1 ExcelのPC管理台帳 図1 ExcelのPC管理台帳。購入の時期・メーカー・仕様・インストールされているアプリケーションは千差万別で、管理の手間は非常に大きかった。

費用ゼロ、脱Excelを促した方法

 映像センターでは、3〜4年のサイクルでPCの入れ替えを行う。2018年3月には約140台が入れ替え予定だった。

 幾つかの提案の中から「レンタルPCとクラウド型PC管理・運用サービスの組み合わせ」に注目した。横河レンタ・リースの「Simplit Manager」は、映像センターが求めていたIT資産管理機能を持つだけでなく、管理者が標準機を「カタログ」に登録し、ユーザーが使いたいPCを選んで簡単に導入できる。利用申請や承認、返却などの手配もシームレスに実現し、PC内のデータを簡単に移行するリプレース支援機能も備える。さらに、棚卸機能を使えば管理者はいつでも導入中のPCやユーザーの情報を確認可能だ。

 「他社のIT資産管理ツールはどれも有償でしたが、Simplit Managerは無料でした。年間200万円程度の費用がゼロになるのはありがたい提案でした。管理画面のシンプルなUIをはじめ、使い勝手も十分に満足できるものでした。他の事業者から購入、レンタルしているPCを、Simplit Managerで管理できる点も魅力的です」(内田氏)

 レンタルPCサービスでは、望み通りの機種を選べることも大きな利点だった。打ち合わせなどの際は最大で3台のノートPCを持ち出すこともあるため、バッテリーが長持ちし、軽くて頑丈であることが不可欠の条件だ。また、動画などの重いデータを取り扱うため、高い処理能力も必要だ。「できれば国産の軽量大容量バッテリー搭載PCシリーズの上位機種を使いたいと考えていた」と内田氏は話すが、高額であることから以前は経営層など限られた人にしか配布できなかった。一方、レンタルPCサービスに切り替えれば、費用も抑えられ、多くの人が希望の機種を使えると提案を受けたのだ。

 リプレース対象だった140台のPCの初期設定は、Simplit Managerのインストールも含めて横河レンタ・リースが担当した。残りの200台あまりのWindows PCは、手順書を配布して利用者がSimplit Managerを手動でインストールしたという。約50台のMacもSimplit Managerの対応(2018年8月)を待って導入した。2019年、2020年と続くWindows機のリプレースは、初期設定も含め横河レンタ・リースが対応する。

 「導入はスムーズに完了し、ユーザーからの不満も特に挙がりませんでした。以前のIT資産管理ツールはPCに常駐するタイプで、プレゼンテーション中にポップアップが出たこともあったそうです。Simplit Managerはそうした問題がありません。この種のサービスは『縁の下の力持ち』なので、従業員が意識せず快適にPCを使えていることは素晴らしいです」(内田氏)

管理画面をカスタマイズして効率を上げる

 映像センターでは、Simplit Managerの管理画面をカスタマイズして効率を上げている。自社の業務に不要な項目を非表示とする一方で、Windows標準のディスク暗号化機能「BitLocker」の回復キーを備考欄に書き込む欄を設けた(図2)。

 「Simplit Managerを使えば、細かな情報も確認できます。しかし当社にとって重要な情報もあればそうでないものもあります。必要な項目だけを選んで表示できるのはとても助かりますね」(内田氏)

図2 Simplit Managerの初期状態における管理画面 図2 Simplit Managerの初期状態における管理画面
図3 カスタマイズ後の管理画面 図3 カスタマイズ後の管理画面。レンタル契約の開始・終了日、BitLockerのID・回復キーなどが表示されている

ソフトウェア監査やウイルスの脅威も撃退

 情報システム部門側も大幅なコストの削減など狙い通りのメリットを享受できた。だが、内田氏はSimplit Managerに対し、コスト削減以上の手応えを感じているという。

 内田氏はまず、ネットワークがつながっている状態であれば、各PCの基本情報や構成情報、イベント情報などをリアルタイムに自動反映できる点を評価する。これによって、以前のExcelでのデータ管理と比べ、工数をはるかに削減できた。PCにまつわる情報の精度も上がり、アプリケーションのライセンス管理の問題も解消している。特にライセンス管理の精度向上については、ライセンス監査の際に効果を発揮するだろうと内田氏は予想する。

 「当社のような企業は、オートデスクやアドビといったソフトウェアメーカーからライセンス調査の依頼を受けることもあります。Simplit Managerを使えば、何台のPCに該当ソフトがインストールされているのかすぐに分かり、監査に必要な情報を抽出できます。今後は、調査依頼が増えると予測されますから、Simplit Managerのようなツールはますます不可欠になるでしょうね」(内田氏)

 PC資産管理の精度が高まったことで、思いもよらないメリットも生まれた。Simplit Managerを基点に、従業員のPCに侵入したウイルスの伝染を止めたという出来事があったのだ。

 「最近の映像機器はPCと接続して制御するのが当たり前です。従業員は映像機器メーカーのWebサイトなどからさまざまなプログラムを入手し、PCにインストールしています。そして時には、こうしたプログラムがトラブルの原因になることもあるのです。先日、ある従業員のPCからウイルスが見つかりました。調べたところ、機器メーカーが提供していたプログラムから侵入したことが分かったのです。Simplit Managerを使って同じプログラムをインストールしているPCを探し出し、すぐに削除を命じました」(内田氏)

 こうしたエピソードを振り返り、内田氏は煩雑で不透明だったPC管理の状況が変わったことで情報システム部門、そして企業全体に大きな安心感をもたらしているというコメントを語った。

 「Simplit Managerのように使いやすいPC資産管理ツールがあれば、情報システム部門が必要な情報をすぐに集め、社内全体のPCの状況を把握できます。従業員にインストールの制限をかけて利便性を下げるようなこともなく、企業が抱えるリスクを小さくできるのではないでしょうか」(内田氏)

 今後は、IT資産管理機能の他にも、さまざまな機能を活用し、PC管理がよりスムーズに進む仕組みを整える構えだ。

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