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» 2018年07月17日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:いよいよERPもクラウド移行が本格化か? 今どきの「クラウドERP」の最新事情と導入ポイント (1/3)

ERPは企業の基幹システムであり、企業経営と密接に関係するものだが、そのERPもサービスを利用する流れにシフトしつつある。企業がクラウドERPに注目する理由と、基礎解説、導入のポイントについて探っていきたい。

[吉村哲樹,オフィスティーワイ]

 ERPといえばオンプレミスのパッケージ製品が主流だったが、ここに来てクラウド型ERPの導入例が増えている。しかし「クラウドERP」と言っても、実際にはさまざまな特長を持つ製品や、提供形態がある。まずはクラウドERPがたどってきた進化の過程を紹介するとともに、製品やサービスの種類、提供形態と導入時のポイントについて簡単に整理したい。

クラウドERPの進化の流れと提供形態

パッケージ製品をIaaS環境上で稼働させる

 クラウド型のERPが普及し始めたのは、AWS(Amazon Web Service)をはじめとする大手クラウドベンダーのIaaSサービスが国内に本格上陸した2011〜2012年までさかのぼる。当時は、オンプレミスの環境で運用していたERPを、IaaS環境上に移行することで、ハードウェアの調達費や運用費を大幅に削減できるとされた。

 しかし、企業の基幹業務を担うERPの運用には、安定性や堅牢(けんろう)性が求められる。それをIaaS環境で確保するには、運用ノウハウが必要であり、それなりの運用負荷が掛かることが分かってきた。そこで登場したのが、IaaS環境でのERP運用をワンストップで請け負うマネージドサービスだ。これを活用することで、企業はERPの運用にかかわる作業の大部分をアウトソースできるようになった。

 ERPのマネージドサービスをベンダー自らが提供するケースも少なくない。例えば、国産ERPベンダーの代表格であるワークスアプリケーションズでは、2011年から早くも同社のERPパッケージ製品「COMPANY」のAWSでの運用をサポートするとともに、同社自らマネージドサービスを提供している。(図1)

「COMPANY Cloud Managed Service」 をAWSで実現した際の構成図 図1 「COMPANY Cloud Managed Service」 をAWSで実現した際の構成図(資料提供:ワークスアプリケーションズ)

SaaS型のクラウドERP製品の登場

 続いて登場するのが、ERPパッケージを単にIaaS環境に載せるのではなく、クラウドサービスでの提供を前提として設計、開発されたSaaS型のERP製品だ。その当時は、コンシューマー向けサービス業界でSaaSが定着したが、ビジネスアプリケーションの分野でも「Salesforce」や「Microsoft Office365」といった月額課金型のクラウドサービスが普及し始め、ERPの世界でも同様の製品やサービスが登場した。

 ERP市場において大手企業の需要が一巡し、新規案件が伸び悩む中、ERPベンダー各社は新たな市場を開拓すべく、中堅・中小企業向け製品に注力し始めた。ただ、中堅・中小企業はコスト意識が高く、ERPはハードルが高かった。そこで、考えられたのがSaaS型での提供だ。オンプレミス型のパッケージ製品とは異なり、SaaS型サービスなら自社でシステムを構築することなく初期投資も抑えられ少ない投資で始められるため、中堅・中小企業でも手軽に導入できるのが売りだった。

 このような背景の中で生まれた製品の一つとして、オロが開発および提供するSaaS型ERP「ZAC Enterprise」がある。(図2)一般的なERPの機能だけでなく、売上、仕入れ、外注費、労務費などプロジェクトの収支管理機能も備えているのが特長だ。システム開発やクリエイティブ制作業界の中堅・中小企業をターゲットに、低コスト、高機能という利点をあわせ持つクラウド型ERPとして、新たな市場を開拓することに成功している。

「ZAC Enterprise」の機能一覧 図2 「ZAC Enterprise」の機能一覧(資料提供:オロ)

一方、大手企業向け製品では、これまで大規模ERPパッケージに内包されていた機能を個別に切り出して提供する動きが出てきた。海外の新興ベンダーから、人事や経理、会計といった特定の業務に特化したSaaS型サービスがリリースされ、着実にユーザー数を増やしていった。

クラウドならではの価値の追求

 2015年ごろからは、オンプレミスでは実現できない「クラウドならではの価値」を追求したERP製品も登場してきた。現在、急速に進化するAI(人工知能)や機械学習、ディープラーニング(深層学習)をERPに組み込み、クラウド環境上に集まった膨大なデータを分析するなど、今までにない新たな価値を備えたサービスが出始めた。

 このようなサービスはGoogleやAmazon、マイクロソフトといったメガクラウドベンダーが提供するコンシューマー向けサービスの分野で先行してきたが、ここに来てエンタープライズITの世界にも波及してきた。例えば、ワークスアプリケーションズが2014年に提供を始めたクラウドERP「HUE」は、クラウド環境上で収集、蓄積したユーザーの操作データをAIにより分析することで、ユーザーが次に行うべきオペレーションを自動的に提示してくれる機能を実現している。(図3)

AIを搭載したERP「HUE」の概念図 図3 AIを搭載したERP「HUE」の概念図(資料提供:ワークスアプリケーションズ)
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