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» 2018年07月03日 10時00分 公開

イベントレポートアーカイブ:ポーラの「中の人たち」が3年間やってみて分かった「シナプス型」業務改善のコツ (1/2)

毎日の小さな非効率も積み重なれば年間数万ステップ以上の工数に。カイゼンのサイクルが回り出したポーラが、3年かけて実現したのは「シナプス型」の組織風土。プロジェクト担当者が成功のコツを語る。

[野本幹彦,キーマンズネット]

 「今日お話ししたいのは、アプリの機能やアプリによる成果ではなく、どのように人のつながりを作り、イノベーションを起こせる環境や働き方を提供するかということ。皆さんの参考になれば」――壇上のポーラ TBエリア統括部の伊藤祐輔氏は、こう講演を始めた。

154万2400ステップもの作業を94%削減する業務改善

伊藤祐輔氏 伊藤祐輔氏

 ポーラ・オルビスグループのビューティケア事業の中核に位置するポーラは、グループ売り上げのうち約6割を担う主力組織だ。全国に4000超のショップを持ち、全国の百貨店内に55店舗、海外にも6拠点を置く。

 伊藤氏は、まず年間の情報処理の複雑度として「154万2400」という数字を示す。

 伊藤氏によると、ポーラでは、収集すべき情報の格納場所が16カ所に分断しており、1日に400程の情報更新(「情報が与えられる」と表現)があるという。これを1年間の稼働日数241日で掛け合わせると、154万2400という処理ステップ数になる。

 伊藤氏はこの複雑さをシンプルにすべく、業務改善に着手した。まず、着手したのは情報の入手先を削減することだ。

 情報の入手先を16カ所から1カ所に変更。ばらばらの場所にあった情報を集約する仕組みを作り、日々の運用は1カ所を見るだけで済むようにした。これにより、情報処理の複雑度を年間「9万6400」と94%も削減した。情報の集約には、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」を使っている。

伊藤祐輔氏

 kintoneを使う理由はシンプルだ。「誰でも」「正しく分かりやすく」「いつでもどこでも」「手軽に簡単に」、を前提にした「シンプルワーク」を実現する業務改善に、kintoneが有効だと判断したからだ。

本稿は2018年6月14日に開催されたイベント「kintone hive tokyo」(主催:サイボウズ)における講演「シナプス型展開でイノベーションを創造する」の講演内容を元に構成した。

継続的進化を目指すなら、ツールよりも体制〜シナプス型とは

 kintoneは、プログラミングやアプリ開発の経験がなくても業務支援ツールなどをWebブラウザ操作だけで作っていける。「業務改善プラットフォーム」を標ぼうする通り、業務部門の中にあるちょっとした業務を自力でアプリ化したり自動化したりする際に「使える」ツールだからだ。こうした用途では、Excelなどのツールがよく使われるが、kintoneの場合は、Webアプリであるため、同時アクセスや社外からの操作にも対応する。

 従来、システムの展開は、基本的にトップダウン型(伊藤氏の言葉では「ウォーターフォール型」)で行われてきた。しかし、トップダウン型では、階層や部署が増え、業務や情報量が増え始めると、伝達情報の質や量が低下しやすいという課題がある。

 その結果、情報や仕様が古いまま固定化しやすく、小さな改修にも大きなコストがかかってしまうことが多い。当初、よいシステムだったものが、使われずに塩漬けになってしまうこともある。例えば、社内の情報ポータルなどでは情報更新者が多忙になったり引き継ぎに失敗したりすると、途端に陳腐化した情報しかなくなり、誰も閲覧しなくなる、といったことは珍しい話ではない。

 そこで、伊藤氏らのkintoneを使った業務改善では「進化し続けられるシステム」を目指した。いわく、「時代に合わせて『必要なもの』があり、『不必要なもの』がなく、『コストが最小』で済む(状態を維持できる)システム」が目標だ。そのために重要なのは、「企画、運営、メンテナンスの体制」だという。

 これらを従来の情報システム部が全てやるのではなく、課題を持って何かを変えたいと気付いた人たちが改善・改革できる体制を作る必要があったのだという。

 それを実現するのが、「シナプス型(=ボトムアップ型)」の展開だ。個々の細胞が自律協調してそれぞれの役割を果たすことで、単独の細胞を超えた働きを実現する脳神経細胞に自社の業務改善のアプローチをなぞらえる。

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