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» 2018年02月19日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:匿名加工情報とは? 基礎概念、利用用途を理解する (1/3)

個人情報保護法は個人情報を守りながらも広く社会に貢献する情報活用に向けた道も整備している。情報銀行構想などはその一例だ。その際、カギとなる匿名加工情報とは何か。匿名化ソリューションとその利用用途はどんなものか、基礎情報を整理する。

[吉村哲樹,オフィスティーワイ]

 データの中に含まれる個人情報を加工し、そのデータがどの個人に関するものか特定できないようにする「データ匿名化」。かつてはシステム開発現場において、本番データベースの複製を使ってテストを行う際に、データベースの特定項目のデータを加工して情報漏えいのリスクを回避するためによく用いられていたことから、なじみのある読者も少なくないだろう。

 ただし、これらの用途で使われるデータ匿名化ソリューションは、データを単に意味のない文字列や数値に置換するものが多く、処理も比較的単純なため、データベースソフトウェアや開発ツールのオプション機能として提供されることも多かった。

 しかし近年になり、統計処理を駆使してさらに高度かつ広範囲なデータ匿名化を行うソリューションが注目を集めるようになった。こうした動きの背景には、ビッグデータの利活用を巡る環境の変化がある。

なぜ今データ匿名化ソリューションが注目されるのか

 ビッグデータの利活用を巡っては、これまで2つの異なる力学が働いており、互いに長い間せめぎ合いを続けてきた。

 1つは、個人情報の保護に関する社会的な要請だ。大規模な情報漏えい事故が相次ぐとともに、企業による無秩序な顧客情報の利用も一部で問題となり、個人情報の保護をさらに強化する必要があるとの認識が広がった。

 一方で、行政機関や民間企業が自由に分析・活用できるようになれば行政サービスの品質向上や、あるいは新たな製品やサービス開発を促進したりと、官民双方でイノベーションを推進できる可能性がある。このため、いたずらに個人情報の利用を制限するだけでは、社会や経済の発展を阻害することになる点を懸念する声も多い。

 この相反する要件を両立させ、個人情報を含むビッグデータを安全かつ広く活用できるようにするための国の方針が、2017年5月に施行された「改正個人情報保護法」によって提示された。同法では幾つかの新たな概念が定義されているが、その1つに「匿名加工情報」がある。旧個人情報保護法においては、個人情報に当たるデータを当初の目的以外の用途に転用したり、本人の同意なしに第三者に提供したりすることは原則できなかった。

 しかし、改正個人情報保護法では、個人が特定されないように情報を加工(匿名化)し、さらに幾つかの条件を満たした場合に限り、当初の目的以外の用途で利用したり、本人の同意なしでも第三者に提供したりできるようになった。ごく大まかに言えば、適正な手続きを踏めば「個人情報ではない状態」にできるのである。この匿名加工情報の概念が示されたことで、にわかにデータ匿名化ソリューションが脚光を浴びることになったのだ。

行政機関において先行するデータ匿名化ソリューションの導入

 改正個人情報保護法によりビッグデータ活用の可能性が大きく広がったことを受けて、現在多くの企業が自社で所有する「個人情報を含むビッグデータ」の可能性を模索し始めており、その過程でデータ匿名化ソリューションに対する注目も高まっている。

 また2018年5月からは、EUにおける個人情報の扱いについて定めた「GDPR(General Data Protection Regulation)」が施行される。GDPRは「EU版個人情報保護法」とでも言うべき法律だが、これの対応についてもデータ匿名化ソリューションが鍵を握るのではないかと見られている。

 一方、民間企業に先駆けて行政機関においては、既にビッグデータ活用とそのために必要なデータ匿名化に関する検討がかなり先行している。その背景には、行政機関が管理する各種情報をオープンデータとして民間に開放し、ビッグデータ利活用を促進しようという国の戦略がある。これを明確に示したのが、2016年12月に施行された「官民データ活用推進基本法」で、これを受けて各自治体では、民間から依頼を受けてデータを公開する際のデータ匿名化の検討が進められ、既に具体的な仕組みも徐々に出来上がりつつある。

医療分野においてもデータ匿名化の検討が進む

 ヘルスケアも、データ匿名化の検討が進んでいる分野の1つだ。2017年4月に国会で可決された「次世代医療基盤法」は、ビッグデータとして収集・管理された医療情報を匿名化した上でさまざまな専門機関に提供し、高度な分析を施すことで先進医療や創薬、保険行政などに生かすことを狙った制度だ。

 また、厚生労働省が2020年からの運用を目指す「全国保険医療データ統合データベース」は、国民一人一人の検診結果や治療歴などを「PeOPLe(ピープル)」(仮称)と呼ばれるデータベースに集約し、ビッグデータとして分析することで、やはり創薬や医療や保険に生かすことを狙っている。

 このように、国が打ち出す戦略や新制度にけん引される形で、各分野で本格的なビッグデータ利活用が立ち上がりつつある。そして、こうした取り組みに欠かせない要素の1つとして、現在データ匿名化ソリューションにも大きな期待が集まっているのだ。

図1 次世代型保健医療システムのイメージ 図1 次世代型保健医療システムのイメージ (出典:厚生労働省「保健医療分野におけるICT 活用推進懇談会」提言「ICT を活用した『次世代型保健医療システム』の構築に向けて」)
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