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» 2017年10月30日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:人材獲得に寄与にも貢献する「健康経営」とは何か (1/4)

「健康経営銘柄」などが新設され、株価や人材獲得の面でも注目されるようになった健康経営。従業員の医療費を負担すればよい――そんな思い違いは改めるべきだ。

[小池晃臣,タマク]

 現在、「健康経営」に取り組む企業が増えつつあり、社員の健康増進を業績向上につなげようという動きが加速している。確かに、「社員の健康状態が企業業績に大きな影響を及ぼす」と聞けば、ほとんどの人が納得するだろう。だが、果たしてその関連性は実証されたものなのだろうか。そこで、健康経営の考え方と効果について、東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットの特任教授で九州大学名誉教授の尾形裕也氏に話を聞いた。

「健康経営」って何?

 最近よく耳にする「健康経営」――端的にいうと、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取り組みである。

 健康経営の実践により、従業員の活力向上や生産性の向上などといった組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や人材獲得、株価向上にまでつながることが期待できるのだ。

 健康経営に取り組む企業を社会的に評価しようとする動きも活発になっている。その皮切りとなったのが、2015年度にスタートした「健康経営銘柄」だ。これは、東京証券取引所の上場企業の中から、従業員への健康保持、増進活動を推進する企業を業種区分ごとに1社選定して、経済産業省と東京証券取引所が共同で認定するというものだ。

 こうした企業は、従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらすことで中長期的な業績や企業価値の向上を実現し、投資家からの理解と評価を得ることで株価の向上にもつながることが期待される。最新の「健康経営銘柄2017年」には、東証1部上場企業のうち24社(24業種24銘柄)が認定された(図1)。

図1 「健康経営銘柄2017」選定企業 図1 「健康経営銘柄2017」選定企業(出典:「健康経営銘柄2017 選定企業紹介レポート」)

 さらに2017年は、健康経営銘柄に続いて「健康経営優良法人認定制度」もスタートした。この制度は、経済産業省と運営者である日本健康会議(経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が連携し、国民一人一人の健康寿命延伸と適正な医療にかかわる具体的な対応策を、職場、地域で実現していくことを目的として設立された活動体)が、地域の健康課題に即した取り組みや、同会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などの法人を顕彰するというものだ。2017年度の認定法人としては、大規模法人部門(ホワイト500)で235法人、中小規模法人部門では95法人が認定されている。

 他にも、従業員の健康配慮への取り組みに優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定するという世界初の融資制度「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」も、日本政策投資銀行が打ち出している。

図2 健康経営に関する顕彰制度 図2 健康経営に関する顕彰制度
尾形裕也特認教授 東京大学 政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニット 尾形裕也特認教授

 尾形教授は次のようにコメントする。「既に世間での関心が高く、雑誌でランキングも取り上げられたりする『環境経営』と比べると、健康経営はまだまだ新しい言葉で浸透度は低いかもしれません。しかし、アベノミクスの成長戦略(『日本再興戦略」2014年6月改訂版)の中で取り上げられ、その後に健康経営銘柄や健康経営優良法人認定制度が始まったことなどで、大企業を中心に注目度がかなり高まってきています。やはり健康経営の取り組みがしっかりと評価される仕組みができたことで、企業にとっても目標となるというのは大きいでしょう。実際、健康経営銘柄に指定されたことで、『ホワイト企業』というイメージが定着し、学生の採用にも効果が出ているという話をよく聞きます。

 一方で、日本企業の99%は中小企業であり、非上場企業が圧倒的に多く、また非営利法人も数多く存在します。健康経営優良法人認定制度のスタートにより、それらの法人も巻き込んで日本全体で盛り上げる向きになっていくことでしょう」

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