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データセンターの場所、SLAの補填……表には出てこない、Office 365とG Suiteの違いクラウド時代のオフィススイート選定術(2/2 ページ)

» 2017年10月03日 10時00分 公開
[大川典久, 脇本 孝太郎富士ソフト]
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SLAを下回るとどうなるのか

 Office 365、G Suiteとも、ビジネス利用を前提としているため、99.9%という高い稼働率が保証されている。そのため日々安心して使えるが、万が一サービスが停止した際の保証方法も実は異なる。

 Office 365の場合、稼働率が99.9%を下回ると、サービス停止時間に準じた額が返金される。対してG Suiteの場合は、原則、サービス停止時間に準じて契約期間が延長される。どちらの保証方法も、サービス停止による間接的な被害額を補填(ほてん)してくれるものではないことは認識していてもらいたい。

バージョンアップ時の手間は

 両製品ともクラウドサービスであるため、次々と新機能が追加されているが、実はバックグラウンドの違いにより、バージョンアップにも違いがある。

 Office 365は一般的なWindows Serverをベースにクラウドサービス化されているため、数年に一度、バージョンアップが発生する。ただし、ユーザー企業の管理者による作業は一切不要だ。当然、バージョンアップが発生する際は、事前に管理者に通知が届く。また、一般の利用者に対しては、最新のOfficeを提供している半面、サポート範囲がメインストリームサポートとなるため、現在はOffice 365のライセンスでOffice 2013をインストールはできない。

 一方でG Suiteは、年間200回以上の機能追加や変更が加えられている。そもそも、バージョンアップの考え方が無く、管理者による環境のバージョンアップ作業は不要だ。

 筆者はよくお客さまから「G Suiteの機能は知らぬ間に増えていたり、画面が大幅に変わっていたりして困る」という話をされることがある。しかし、実際にはGoogleから事前にアップデートブログやリリースカレンダー(英語)などで情報発信が行われている。リリースカレンダーは下記画面右下の「+Google Calendar」のボタンをクリックすれば、自分が利用中のGoogleカレンダーに自動的に登録される。わざわざアップデートブログにアクセスする手間も必要なくなるだろう。

アップデートブログとリリースカレンダー アップデートブログとリリースカレンダー

 さらに、画面デザインや機能が大幅に変わる場合は、Googleは数カ月前から告知し、移行に対する準備期間も設けている。過去の例をとってみると、2012年にGoogle ドキュメントのサービスがGoogle ドライブに移行した際は、完全に移行するまでに1年以上の並行運用期間が設けられた。

 機能追加についてもGoogleのブログなどで公開される。しかし、ブログの情報をチェックし続けるのはなかなか大変なことでもある。ちなみに、当社から購入しているユーザーに対しては、機能追加の情報や、利用促進のためのTIPSなどの紹介をメール配信サービスにて提供している。

マクロとGoogle Apps Script

 Office 365であれば今まで使っていた「Visual Basic for Applications(VBA)」や「Excel」のマクロをそのまま有効活用できる。このことは利用者にとって朗報だろう。しかし、Web版の「Office Online」を利用する場合はマクロが利用できないため、注意が必要だ。

 一方G Suiteの場合、「Google Apps Script(GAS)」というJava Scriptベースの環境が用意されている。G Suite内に開発環境が備わっているため、Java Scriptの知識があれば、APIを利用してG Suiteと連動したアプリケーションをすぐに開発可能だ。また、GASはG SuiteのサービスやSlack、Twitterのような外部サービスとも連携できるのが便利である。

 G SuiteはGoogleのクラウド環境で提供されているため、CPUやメモリ、ストレージといったコンピュータリソースやネットワークインフラを考慮することなくアプリケーションを作成、運用することができることは特筆すべき点だろう。しかも、アプリケーションサーバを用意したり電源を入れたりする必要がなく、設定されたタイミングでクラウドサービスの利便性を活用するプログラムを実行できる。

 これまでの連載でみてきたように、メールやカレンダーといったコミュニケーションやコラボレーションを図るツールとしてのOffice 365とG Suiteとでは、機能的な差異もあるが、機能を実現するバックグラウンドにもいろいろな差異があることもお分かりいただけただろうか。

 次回は両サービスの契約プランについてその違いをみてみよう。

筆者プロバイダー

大川典久

大川典久

富士ソフトに入社以来、Microsoft製品を扱う部署に所属し、「SharePoint Server」の技術者として多くのプロジェクトに参画。現在はOffice 365をはじめとしたMicrosoftのクラウドサービスを中心にセミナーの企画を手掛け、プレゼンターとして活動している。


脇本孝太郎

脇本 孝太郎

2009年からGoogle Appsビジネスに従事し、営業およびプリセールスとして活躍している。多種多様な業種のGoogle Apps導入プロジェクトに参画してきた。現在は担当領域を広げ、Google Appsだけでなく「Salesforce」など他のサービスを含めた業務改善やワークスタイル変革について、提案やセミナーのプレゼンターとして活躍している。


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