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» 2017年05月31日 10時00分 公開

困ったときのビジネス用語:用語解説:ディープラーニング(Deep Learning、深層学習) (1/3)

AIを活用したビジネス開発が活発だ。なかでもディープラーニングは注目を集めているが、その理由は? 私たちの業務はどう変わる? どこで使える? 基礎知識から技術応用のアイデアまでを解説する。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

用語解説:ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)

 ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)とは、赤ん坊が周囲の環境から得た情報からモノや事象の特徴や関連性を学び、やがてそれらを識別して名前で呼ぶような「学習」を、コンピュータが自律的に行う新しい仕組みのことを指す。

 具体的には、人間の脳神経回路の仕組みを機械で模倣した「多層ニューラルネット」(後述)によって、モノや事象の特徴を抽出し、そこに内在する知識やルールを獲得、さらにその結果を人間が利用しやすい表現で出力するこができる。

そもそもディープラーニングはいつごろ生まれた技術か

 この技術が最初に脚光を浴びたのは2012年。物体認識の国際コンテスト「Large Scale Visual Recognition Challenge(LSVRC)」で、多くのチームが既存の機械学習技術を利用して精度を競うのを横目に、ディープラーニングを利用したトロント大学のチーム「SuperVision」が圧倒的な精度差で優勝したことがきっかけだ(図1)。

 画像の認識精度向上に行き詰まりを感じていた研究者らにとって、SuperVisionの認識精度の高さは大きな驚きを持って受け止められ、以降の研究は一気にディープラーニングへと傾いた。現在の「第3次AIブーム」はここから始まったといえる(これまでのAIブームについてはコラムを参照)。

物体認識の国際コンテストLSVRC 2012の結果の一例 図1 物体認識の国際コンテストLSVRC 2012の結果の一例

 SuperVisionの発表をきっかけに巻き起こった第3次AIブームでは、その後、画像、音声、テキスト、数値などの多様な形態のデータを対象にした研究が個別に進んでおり、いずれの分野でも、従来を大幅に上回る優秀な認識精度が実証できている。

 例えば「大量の画像から人の関与なしに猫を認識して視覚化」する研究成果や、「囲碁対戦プログラムがプロ棋士に勝つ」などは、広く一般にも報道された通りだ。

 もちろん、認識にまつわる業務の自動化が期待できることから、産業界からも「省力化」や「新たなビジネスイノベーションの鍵」として捉えられ、現在多くの分野・領域でAI利用が広がりつつある。

 ここからは、ディープラーニングの仕組みと利用ケース、さらに私たちの業務環境にどんな変化が起こるのかを整理する。

コラム:「第3次AIブーム」と過去のAIブームについて

 ディープラーニングが注目を集める現在は「第3次AIブーム」と呼ばれる。第1次AIブームは1960年代に最初期のニューラルネットワーク技術が注目された時代。計算機資源が現在よりもはるかに少ない時代のシンプルなニューラルネットワークでは学習の効果が限定的で、1970年代にはほぼ廃れた。

 第2次AIブームは、その後1980年代にかけて登場した記号処理言語「Lisp」や「Prolog」が火を付けた。これらが論理の記述に優れていたことから、論理プログラミングによる推論の研究が進展し、推論エンジンを搭載したエキスパートシステムが開発され、特定領域では効果を発揮した。しかし、専門家によるルール入力が必要なため、応用領域が限られ、AI研究は再び冬の時代に入った。

 2012年のディープラーニングによる技術的ブレークスルーは、ニューラルネットワーク技術の拡張と、はるかに高速・大規模な計算機資源によって実現したものだ。これが過去二度のブームとは違い、基礎研究も産業応用研究も急速に展開し始めたところから、第3次AIブームと呼ばれている。

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