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SaaS版とパッケージ版の「Microsoft Office」 比較して分かる4つの違いとはクラウド時代のOfficeスイート選定術

Microsoft OfficeとSaaS版のMicrosoft Officeは何が違うのか? Microsoft Officeの改版の歴史を振り返りつつ、SaaS版であるOffice 365 ProPlusの特徴を紹介する。

» 2017年05月30日 10時00分 公開
[廣瀬 晃富士ソフト]

 長らくOfficeスイート市場は、Microsoftの「Microsoft Office」がデファクトスタンダードとなってきた。その勢力図がクラウドによって大きく変わろうとしている。本連載の第2回ではMicrosoft Officeの製品の違いという観点で、パッケージ版のMicrosoft OfficeとSaaS(Software as a Service)版のMicrosoft Officeの違いを中心に解説する。

Office 365は多様なデバイスでさまざまなソフトウェアが使える Office 365は多様なデバイスでさまざまなソフトウェアが使える

Microsoft Officeとは何なのか?

 本連載の第1回「世の中は『Microsoft Office』だけではない クラウドで変わるOfficeスイート勢力図」で解説した通り、現在でもOfficeスイート分野でMicrosoft Officeのシェアは大きい。 

 パッケージ版とSaaS版の違いを説明する前に、あらためてMicrosoft Officeの歴史を振り返っていく。

 Microsoft Officeは、会社の業務で必要となる文章作成ソフトウェアや表計算ソフトウェアなどのソフトウェアを1つにまとめたOfficeスイートだ。特に認知度が高いソフトウェアとして、ワープロ機能を持つ文章作成ソフトウェアの「Microsoft Word」や、表計算ソフトウェアの「Microsoft Excel」、提案書や発表資料を作成するプレゼンテーションソフトウェアの「Microsoft PowerPoint」、メールおよびスケジュール管理ソフトウェアの「Microsoft Outlook」などが挙げられる。

現在の主要なMicrosoft Office製品群

  • Microsoft Word
  • Microsoft Exce
  • Microsoft PowerPoint
  • Microsoft Outlook
  • Microsoft OneNote
  • Microsoft Access
  • Microsoft Publisher
  • Skype for Business

 Microsoft OfficeがOfficeスイートとして最初に登場したのは、1989年6月のこと。MicrosoftがAppleのOS「Macintosh」(Mac)向けパッケージ製品として提供した。日本語版のMicrosoft Officeを提供するようになったのは「Office for Windows 3.0」からだ。Microsoft Officeが日本で広く普及し始めたポイントとなるのは、同社のOS「Windows 95」のリリースである。当時のMicrosoft Officeである「Microsoft Office for Windows 95」をWindows 95のクライアントPCにバンドルして大量に供給したからだ。

 それ以降、Microsoft Officeは下記のように製品の改版(バージョンアップ)を重ねながら、各ソフトウェアの仕様や操作性などを統一し、機能の連係やデータの共有などを可能にしてきた。

Office for Windows 95以降のMicrosoft Office変遷 Office for Windows 95以降のMicrosoft Office変遷

 ここまでは“Microsoft Officeとは”という切り口で製品群の説明と製品の変遷について紹介した。続いて、Microsoft Officeを購入する際に問題の種になりがちな、ライセンスについて説明する。

パッケージ製品としてのMicrosoft Officeのライセンスを整理する

 Microsoft Officeの話をする場合、よく話題に上がるのがライセンス形態の複雑さだ。このライセンス形態の複雑さは、個人の利用や企業のOfficeスイート利用ニーズに応じてライセンスの提供形態をきめ細かく分けていった結果である。だが利用するユーザー企業には「複雑で分かりづらい」という印象を与えてしまっている。 

 Microsoft Officeのライセンス形態は、大きく下記の3つに分かれる。

OEMライセンス

 クライアントPC購入時にインストールされているライセンス。バンドル版(プリインストール版)とも呼ばれる

パッケージライセンス

 家電量販店やオンラインストアなどで購入するライセンス

ボリュームライセンス

 企業向けに提供されており正規代理店を通じて購入するライセンス。ボリュームライセンスの最上位版として、Microsoft Office製品群の全てのソフトウェアを使うことができる「Office Professional Plusシリーズ」がある

 基本的に企業は、Microsoft Officeをボリュームライセンスで購入している場合が多い。一方、従業員が自宅で利用しているMicrosoft OfficeはOEMライセンスかパッケージライセンスであることがほとんどだ。この3つのライセンス形態で提供されているMicrosoft Officeは、どれもデバイス単位でライセンス費用がかかる。つまり、クライアントPC1台当たり1ライセンスが必要なのである。

SaaS版Microsoft Office「Office 365 ProPlus」とは何なのか

 Microsoftは2011年からSaaS版Microsoft Officeの「Office 365 ProPlus」を提供している。Office 365 ProPlusは、同社の情報系を中心としたソフトウェア/サービス群「Office 365」に含まれている。機能限定版の「Office 365 Business」というライセンスもある。

Office 365 ProPlus

最上位のSaaS版OfficeスイートのライセンスでMicrosoft Officeの製品群の全てのソフトウェアをクラウドで使うことができる

Office 365 Business

Office 365 ProPlusの廉価版のライセンス。Office 365 ProPlusと比べて、クラウド版のMicrosoft AccessやSkype for Businessなどのソフトウェアが使えないという違いがある

Office 365 ProPlusにはどのような特徴があるのだろうか。4つのポイントで見ていく。

1.ユーザーにひも付くライセンス提供

 パッケージ版のMicrosoft Officeは、基本的にデバイス単位でライセンス提供していた。2000年代初頭であれば、企業は高価なクライアントPCを1人1台支給し、Microsoft Officeライセンスをデバイスの数だけ管理すればよかったかもしれない。具体的には、会社の従業員数とクライアントPCの台数、Microsoft Officeのライセンス数がほとんど同数ということを想像するとよい。 

 しかし、時代は変わっている。現在は比較的安価なクライアントPCを1人で複数台使いこなし、社内だろうと外出先だろうとビジネスのスピードを意識した業務をしている企業が増えている。また業務や社内処理の多くがシステム化し、クライアントPCが処理すべき業務も加速度的に増加している。それに伴い、クライアントPCに求められるスペックや負荷が高くなり、クライアントPCのライフサイクルが短くなってきていることを感じているユーザー企業も少なくない。 

 そのため現在は、従業員数とクライアントPCの台数で比較した場合に、従業員数よりクライアントPCの台数が多くなる企業が増えている。従来のパッケージ版だとクライアントPCの数だけMicrosoft Officeのライセンスを用意する必要があり、高いコストがかかってしまう。 

 そこで、Office 365 ProPlusはライセンスの課金対象をデバイスではなくユーザーにした。今まではデバイスに縛られていたMicrosoft Officeのライセンスが、ユーザーへひも付くことにより、利用コストを軽減し、Microsoft Officeをさまざまな種類のデバイスで効率的に利用できるようになる。

2.マルチデバイス対応

 クラウドサービスの利用が企業の業務システムにまで浸透し始めたことで、企業の働き方は大きな変革を求められている。従来は社内のクライアントPCから、社内のLANでしか利用できない社内システムを操作することが一般的だった。それはパッケージ版のMicrosoft Officeも例外ではない。 

 だがそのような時代は終わりを告げ、いつでもどこでも、必要な時に必要な機能を利用する時代に移り変わっている。それに拍車を掛けているのがAppleのスマートフォン「iPhone」やGoogleの「Android」搭載端末を筆頭とするスマートデバイスである。Office 365 ProPlusはクライアントPCからスマートデバイスまで、さまざまなデバイスで利用でき、WordやExcel、PowerPointのソフトウェアをスマートデバイスから利用することも可能だ。同一ユーザーであれば、タブレット端末で最大5台、スマートフォン端末で最大5台、合計10台のスマートデバイスでMicrosoft Officeのソフトウェアを利用することができる。

3.常に最新の機能を自動的に提供

 Office 365 ProPlusは、常に最新機能が自動的に提供される。企業は利用するMicrosoft Officeのソフトウェアバージョンが統一され、クライアントPCの管理が容易になる。また、常に最新のセキュリティ対策がアプリケーションに適用されるため、セキュリティリスクが軽減される。最新デバイスへの対応状況の確認や製品のサポート終了に伴う移行うなど、煩雑な作業も不要だ。

 だが、このことをメリットだと捉える企業とデメリットだと捉える企業がある。どちらに捉えるかはその企業の運用方法と社内システムの兼ね合いによるところが大きい。

4.買い切りではなく利用費用という考え方

 Officeスイートのデファクトスタンダードであったパッケージ版Microsoft Officeも、クラウドの時流に対応するべくOffice 365 ProPlusを提供し、継続して機能強化している。 

 SaaSの多くは買い切りではなく、利用した期間に応じて料金を支払う「サブスクリプション方式」を採用している。契約期間を1カ月程度と短くしていることも多く、ユーザーはよりよいSaaSへと乗り換える可能性がある。ソフトウェアベンダーは次々に良いソフトウェアを開発し、便利なソフトウェアへと成長させ、ユーザー企業に継続してソフトウェアを使ってもらう必要がある。そのため、Office 365 ProPlusも常に機能強化を続けている。 

 今回は、パッケージ版とSaaS版のMicrosoft Officeの特徴を解説してきた。第3回では、Googleが提供する「G Suite(旧:Google Apps for Work)」について、文章作成ソフトウェア「Googleドキュメント」を中心に解説する。Googleドキュメントは企業向けOfficeスイートの主力となるのか。判断の参考にして欲しい。

著者プロフィール

廣瀬晃

廣瀬晃

富士ソフトに入社以来Microsoft製品を扱う部署に所属し活動する。もともとはSharePoint Serverの技術者であったが、Office 365の前身である企業向けオンラインサービス「Microsoft Business Productivity Online Services(BPOS)」時代からMicrosoftのクラウドサービスの提案・構築を手掛ける。現在はOffice 365を始めとしたMicrosoft製品をお客さまへ訴求するプリセールスとして活動する傍ら、Microsoft製品のセミナーのプレゼンターとしても活動している。


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